「節子と雨子様一」
大変遅くなりました。
今日は滅茶苦茶忙しかったのと、話が長くなったので二つに分けました
お楽しみ下さいませ
「のう節子、いやお母さん…」
そう言うと雨子様はほんの少し顔を赤らめた。
だがそこで躊躇することなく更に言葉を繋げる。
「其方に聞いてみたいことがあるのじゃが、良いじゃろうか?」
いつもにも増して真剣な表情をする雨子様に、節子は優しい微笑みを浮かべながら応えるのだった。
「あらあら、それで雨子ちゃんは私に何を聞きに来たの?」
夕食の後片付けも終わり、リビングのソファーにのんびり腰掛けて本を読んでいた節子。その節子に、自ら入れたお茶の湯飲みをそっと渡す雨子様。そして対面にあるソファーに座り、何か言おうとしては黙りを繰り返す。
そんな、見ように寄っては挙動不審?な雨子様に、節子は静かに席を立った。
そしてその傍らに行くと、ほとんど肌が触れあう様にしてそっと腰を下ろすのだった。
何故節子がその様な行動を取るのか、一瞬理解出来なかった雨子様。だが身近に感じる節子の体温や存在感、そう言ったものがいつの間にか、自身に安心という目に見えずとも確かな感覚を、与えてくれているのに気がつくのだった。
「その…節子、お母さんはどうしてその様に、相手に対して的確に、しかも適時に安心感を与えることを知って居るのじゃ?」
不思議そうに節子のことを見つめながらそう言う雨子様。
「わざわざ雨子ちゃんが、私のことをお母さん呼びしながら、何か聞こうとしているって言うことは、多分、人として、家族という枠組みの中で、聞きたいことがあるのかしら…」
節子の言葉に、雨子様は微かに目を見開きながら小さく頷いて見せる。
「そうなんだ、でも果たして上手く説明出来るかしら?私自身そう言った「何か?」を言葉にして考えてみたことが無いもの」
だがそう言う節子に、雨子様はゆっくりと頭を横に振りながら言うのだった。
「そのものずばりの言葉とならずとも良いのじゃ、お母さんが大方感じ、考えていることを教えてくれれば良いのじゃ。元より論理のみに頼る方法であるなら、我としては聞くまでも無いことなのじゃから」
「ん…、分かったわ。それで何から答えれば良いのかしら?まずは安心感の話し?」
そう言う節子の言葉を、心の中で何度も反芻した後、ゆっくりと頷く雨子様。
「そうねえ、安心感かぁ。これはそうね、私自身が子供だった時に、私が母にされてそうだったって言うのが一番かしら?今の雨子ちゃんというか、祐二から見たら祖母、お婆ちゃんね!」
節子のその説明を聞いた雨子様は、小さくその言葉を口に出して言ってみる。
「お婆ちゃん…」
不思議そうな表情をしながらもう一度繰り返す。
「お婆ちゃん…何だか優しい響きの言葉なのじゃな?」
そう言いながら知らぬ間に笑みを浮かべている雨子様。そんな雨子様に、笑いながら言う節子。
「うふふふ、そうなのかしら?因みに雨子ちゃん、私もお婆ちゃんよ?」
節子のその言葉に、ぽっかりと大きく口を開けて愕然とする雨子様。
余りに反応が無いものだから、目の前で手を振ってみせるが、それでも変化が無い。
仕方無く節子は雨子様の肩を掴んで揺さぶるのだった。
「雨子ちゃん、雨子ちゃん、大丈夫?」
するとふっと目の焦点が合うのが分かったので、掴んでいた肩をそっと離す。
「あ~~びっくりしたのじゃ。しかし節子も人が悪い。いくら何でも其方がお婆ちゃんなどと、その若さで何を言うのじゃ?」
確かに節子はその年齢よりも遥かに若く見える。これについては、爺様から時折頂くネクタルのせいもあるのだが、だがそれが無かった頃でも、実年齢よりも常に若く見えていたのだった。
「ぷふふふ」
節子は下を向きながら大笑いである。
「雨子ちゃん雨子ちゃん、お婆ちゃんという呼びはね、年齢的なものだけじゃ無くって、その人の子供に更に子供が居れば、それでもお婆ちゃんなのよ?」
「あ!」とは雨子様。
「「美代」」
節子と雨子様、二人同時に一つの言葉を口にするのだった。
「なるほどそうであったな、実際、先程其方の母親の話をされたばかりだと言うのに、本人を目の前に話をしていると、ついつい年齢でのことばかりに頭が行ってしまって居ったの」
そう言う雨子様に、節子は衝撃の事実を語る。
「あのね、年齢って言う話しだけに絞って言うなら、雨子ちゃんこそ、大大大大大お婆ちゃまよ?」
おそらく和香様達、雨子様と仲の良い神様達であったとしても、これほどにびっくり眼の雨子様は見たことが無いだろう。ぐぎぎぎぎと、音がしそうな感じで天を仰ぎ見たかと思うと、どっと溜息を吐き出しながらその場で突っ伏してしまった。
そしてその場で小さな声でぼそぼそと何か言っているのだ。
「…………」
余りに小さくて、何を言っているのか分からなかった節子は、思わず声を大にして尋ねる。
「え?なぁに雨子ちゃん?」
すると顔を起こした雨子様は、きっと、節子のことを睨んだかと思うと、何が何でも聞こえるように言葉強く言うのだった。
「節子が我を虐めるのじゃ!」
「別に虐めている訳じゃ無いのだけれども…」
だがその言葉に雨子様は不満げな顔で言う。
「それにしてもあのように大大大大大等と「大」を五つも付けるなど酷いのじゃ」
そんな雨子様に呆れたように節子が言う。
「えっ?そっち?お婆ちゃん呼びはお咎め無し?」
すると雨子様、何とも言えず渋い顔をしながら言う。
「むぅ~~~、年を多く経たものをそう言うと言うので有れば、こればかりは致し方ないとは思うものの…やはり何と言うか、嫌なのじゃ…」
雨子様のその言葉を聞いていた節子、うんうんと納得したような表情で言うのだった。
「まあそれはそうでしょうねえ?こんなピッチピチのお嬢さんを捕まえて、いくら何でもお婆ちゃん呼びしたら、可愛そうよねえ…」
その雨子様、節子のその言いように吹き出しそうに成りながら言う。
「我はピッチピチかや?」
なんだかちょっと嬉しそうでもある。
「そうねピッチピチよね?」
「「ピッチピチ…」」
二人は顔を見合わせるなり、申し合わせたかのように声を揃えてそう言うと、こみ上げてくる笑いに抗することが出来なくなるのだった。
それはもうどこから見ても仲の良い姉妹のように、互いに相手の身体に手を回し、抱き合いながら身を揺すって、きゃっきゃうふふと笑い転げるのだった。
今日もまたまたいいねをありがとうございます。
お陰様でまた休むこと無く書き続けることが出来ました
ありがとう!
いいね大歓迎!
この下にある☆による評価も一杯下さいませ
ブックマークもどうかよろしくお願いします
そしてそれらをきっかけに少しでも多くの方に物語りの存在を知って頂き
楽しんでもらえたらなと思っております
そう願っています^^




