「一番偉いのだぁ~れ?」
遅くなりました
纏まらない時は本当に纏まらないなあ
「本日は、お日柄も良く…」
食事を始める前、皆が乾杯の為のグラスやコップを持っているところで、和香様が主賓の一人として挨拶を始めたのだが…。
「和香、其方一体何を言っておるのじゃ?」
見かねた雨子様が突っ込みを入れる。
「そうは言うけど、やっぱりお目出度い席やんか?お目出度い席やったらこの出だしとちゃうのん?」
そこに今度は令子から突っ込みが入る。
「和香様和香様、もしかしてそれ披露宴の時の挨拶じゃないですか?」
和香様が席に着いた皆のことを見回していると、ほぼ全員が首を縦に振っている。
「あかんかったかな?」
そう言いながら切なさそうに節子のことを見ている和香様。
何故に此処で私に聞くのと、節子は頭を抱えるのだが、突如として聞こえてきた声によって救われる。
「何でも良いから早う乾杯せんか?」
突然聞こえてきた年配の男性の声音に、皆がぎょっとして振り返ると、そこには文殊の爺様が居るのだった。そして手にはちゃっかりと開封された缶ビールを持っていた。
「じっ、爺様?」
目を丸くした雨子様が裏返った声で聞く。
「どうして爺様が此処に?」
対して爺様は頓着無く答える
「元より儂はこれ成る節子に、いつでも飯を食べに来ても良いという許可を貰って居る。言うても普段は、アーマニかティーマニに先触れをさせて都合を聞くのじゃが、今宵はそれ成る小和香の、従三位が決まったと知って、儂も祝わねばとはせ参じたのじゃ」
爺様のその話を聞いていた祐二、傍らの雨子様に質問する。
「ねえ雨子さん、小和香さんが正式に神に成ると言うことは理解していたのだけれども、従三位ってどう言うことなの?」
祐二のその言葉を聞いていた、神成らざる者達の視線が全て雨子様の元に集まる。いや、神様方も見つめていた。
「むう、成るほどの、祐二達は知らぬのじゃな?もっともこの位階については元々は我らが付けた物に非ず。其方ら人間達が付けおったものを、便宜的に我らも使い出したと言うのが発端じゃの」
「なるほどそうなんだ、それで従三位って言うのは?」
「人間達は神をまず、文武の二系統に分け居った。その文の最下位に位置するのが従三位よの。この位階より下に居るものは未だ神としては認められて居らん。亜神の類いじゃな?尤も小和香のような分け御霊は、枝の元となる和香の権威に基づいて居るから、亜神共なぞ歯牙にも掛からぬが…。それでも名目上は亜神の範疇に入って居った」
「そうなんだ」とは令子。
「でも小和香さんは小和香さんだものね」
令子のその言葉に、小和香様は実に嬉しそうに笑みを浮かべながら、そっと頭を下げて見せる。
「こほん」と軽く咳払いをする雨子様。
「先に進めても良いかや?」
令子の小和香様を思う優しい気持ちに、にっこりと笑みを浮かべた雨子様が柔らかな声で問う。
「あ、ごめんね雨子さん」
そう言う令子に、すっと手を伸ばすと、くりくりと頭を撫でながら言う雨子様。
「良い。さて、その本来は亜神の位に居った小和香に対して、従三位の位を与えることで、晴れて正式に神としての地位を得た訳なのじゃが、小和香、其方から皆に何か言いたきことはあるのかや?」
雨子様にそう言われた小和香様、皆の上にすっと視線を滑らせると静かに言葉を述べた。
「こうやって正式に神として認められるようになったこと、それは全て此処に居られる皆様方のお陰でございます。本当に、本当にありがとう御座いました」
そう言うとはらりと一筋涙を零す小和香様なのだったが、そう言った感傷は爺様の言葉によって即座に破られる。
「よし、それでは乾杯じゃ、かんぱぁ~~い!」
そう言い終えるとそのまま小和香様の横に行き、目出度いという言葉を連発しながら、ばんばんとその背中を叩き続ける爺様なのだった。
それがまた手加減の無いものなだけに、小和香様はそれまでとまた違った意味で涙目に。
「「「「爺様!」」」」
その乱行を見かねた全ての女性達が目を釣り上げて爺様に迫る。
その迫力にさすがの爺様も腰が引けてしまう。
「なんじゃお前達?儂はただ小和香のことを祝っただけじゃぞ?」
「それでもです」
とは節子。節子は更に言葉を紡ぐ。
「あんまり無茶をなさると、いくらお爺様とは言え、今回の馳走は無しですよ?」
そう言いきる節子に、ぎょっとした顔の爺様が言う。
「和香、もしかしてこやつこそ、無位無冠の四柱目かもしれんぞ?」
それを聞いた和香様はぷっと吹き出しながら同意する。
「確かにそうかもしれへんね」
またも出て来た謎の言葉に、令子が雨子様の腕を突きながら問う。
「無位無冠の四柱目って一体どう言うことなの?」
すると雨子様は声を潜めながら言うのだった。
「神の位は正一位が一番上なのじゃが、和香のような大神が更にその上に三柱居るのじゃ。そこに節子を加えるという爺様の冗談じゃな」
「へぇ~~そうなんだ」
今までまったく知らなかった事柄が目の前で明かされていくことに、令子は興味津々で居るのだった。
「ところで雨子さんの位階はどの辺なの?」
そう聞く令子に、あっけらかんと言う雨子様。
「我は、此度小和香がなったのと同じ従三位じゃぞ」
「そうなんだ」
今一ぴんと来ていない令子はそう言うのだが、それを聞いていた小和香様が眉を顰める。
「和香様、いくら何でも私のような若輩者と、雨子様のような御方が同じ位と言うのは納得出来ません」
すると和香様は困ったような顔をしながら言う。
「そやねんなあ。そやけどもっと上の位階渡す言うても、雨子ちゃん、ちっとも頭縦に振らへんねん。うちはそれでいっつも困ってるねんで?」
それを聞いていた祐二が少し心配そうな顔をしながら雨子様に聞く。
「ねえ雨子さん、どうして和香様の言うことを聞いて上げないの?」
すると雨子様は、少し諭すように言うのだった。
「考えても見るが良い、氏子も居らぬような木っ端の神社の神が、位階ばかり高かったらどうなる?人の目から見てもどうして?ともなるであろうよ?」
そう言う雨子様に、和香様は不満そうな顔で言うのだった。
「まあ確かに天露神社のと言うことで有ればそうかも知れへんな?そやけどそれは雨子ちゃんの副業みたいなもんやんか?」
そう言って口を尖らせる和香様のことを苦笑しつつ窘める雨子様。
「和香、その話は此処ではすまいよ」
その言葉に駄々を捏ねるかのように言う和香様。
「そんなん言うたかてぇ~~~」
と、そこへいよいよ痺れを切らせたのか爺様が大声で叫ぶ。
「馬鹿者!節子が手間暇掛けて作ってくれたご馳走が、冷めてしまうでは無いか?さっさと祝杯を挙げるぞ?」
今一度仕切り直して乾杯をと言う爺様の言葉を、尤もと思ったのだろう。皆一斉に杯を掲げ、小和香様に言う。
「「「「「「おめでとう!小和香」」」さん」」」
そうやってやっとこ祝杯を挙げた後、皆小和香様の所に集まり、更に祝いの言葉をそれぞれに述べるのだった。
そんな様子を見守りながらほっとした面持ちでビールを呷る爺様。
「ところでお前は何をして居るのじゃ?」
そうやって爺様が声を掛けたのは、七瀨の連れてきたユウなのだった。
「え?僕ですか?もうお腹いっぱいで…」
そう言いながらぽんぽんに膨れあがったお腹をさすりながら、傍らにあったサイドテーブルの上でひっくり返っている。
「なんじゃお前は?儂ですらお預けを食らって待って居ったと言うのに…」
するとユウはさも得意げに言う。
「ちっちっち、僕は皆さんが美味しい物が食べられるようにと、味見役に徹していたんですよ」
それを聞いた爺様、節子の方に向いて言う。
「そうなのか節子?」
すると節子が困り顔をしながら言う。
「ええまぁ、味見役というか、つまみ食い役というか…」
それを聞いた爺様、はぁ~~っと長い溜息を吐いたかと思うと、呟くように言うのだった。
「案外こやつこそ、無位無冠の最たるものかも知れぬのう…」
すると、その場に居た神様方三柱全員が、ユウのことをそっと見つめ、同様に溜息をつきながら、うんうんと頷くのだった。
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