「お風呂でのこと」
お待たせしました。
肩こりが酷くて頭痛が……でもまあ頑張りました。
「で、和香は何故ここに居るのじゃ?」
とは雨子様。場所は吉村家の脱衣所。丁度七瀬と二人でお風呂に入ろうとしているところだった。
「え~~~、そないなこと言うてうちだけ除けもんにするんか?」
眉をへの字にしながらそう言う和香様に、雨子様が噛みつく。
「じゃから我とあゆみが風呂に入ることについては、先に決まって居ったことであろ?どうしてそこに和香が混じろうとするのじゃ?」
雨子様の問いに、和香様はにへらと笑いを浮かべながら言う。
「何となく…」
そう言う和香様と雨子様の両方を見つめて七瀬が言う。
「なんだかんだ言って御二柱も本当に仲が良いのよねえ」
すると雨子様は苦笑しながら言う。
「まあなんと言うても、和香には宇宙で意識を失って漂うて居ったところを、助けて貰った恩義も有るしの」
「え?そんなことが有ったの?」
驚いた表情で雨子様に問い返す七瀬。
それに応える雨子様は少し切なさそうに言うのだった。
「うむ、それがどうしてそのようなことになったのか?と言うことについては我にも分からぬ。じゃが、爺様の言うのには、おそらく中性子星の荷電粒子に撃たれるか、何かしたので有ろうということじゃったの」
「中性子星の荷電粒子?」
そう聞き返す七瀬は、何が何やらと言った感じで、おそらく一体全体なんのことなのか、全く分かっていないのでは無いかと思われた。
だが今は良く分かっていないものの、好奇心旺盛にその内容を聞きたそうにしている七瀬。なので雨子様は少し分かり易く、噛んで含んで話してみようかなと思う。だが今は…。
「ともあれまずは風呂じゃ、あんまり長く掛かると節子を待たせてしまうことになるぞ?」
そう言うと雨子様は、ささっと衣類を脱ぎ捨てると、浴室への扉を潜る。
そうやって先行する雨子様のことを追いかけた七瀬も、急ぎ服を脱ぐとその後に続くのだった。
そして二人、髪を洗ったり、背中を流しっ子した挙げ句、湯船に浸かっていると、浴室の扉がそっと開き、和香様が入ってきたのだった。
「なんじゃ和香、暫く入ってこぬから、もうすっかり諦めたのかと思うて居ったぞ?」
すると和香様、頭を掻き掻きしながら言う。
「うん、そのはずやってん。そやけどな、節子さんに…」
そこまで聞いたところで、眉間を揉みし抱きながら雨子様が言う。
「節子が?」
「いやな、節子さんがやな、ご馳走食べるのにさっぱりしてきなさいって…」
そう話している和香様の後ろから、申し訳なさそうな顔をした小和香様も入ってくる…。
「すいません私までも…」
その二柱のいかにも申し訳なさそうな顔を見た七瀬、思わず吹き出しながら言う。
「なんて言うか、やっぱりおばさまよねえ」
「確かに…」
そう言う雨子様。そして二人は思わず顔を見合わせると、楽しそうにアハハと笑うのだった。
「まあ良いわ、我らはそろそろ上がる故、のんびり入ってくるのじゃな」
そう言いながらちらりと小和香様のことを見る雨子様。
「小和香、其方は既に和香とは対等の神じゃ、いっそ和香に背中でも洗って貰うが良いぞ」
すると雨子様のその言葉にぎょっとした顔をする小和香様。
その後、恐る恐ると言った感じで和香様の顔を見るのだが…。
「ああ、それはええ考えやな?そやけど雨子ちゃん、今までかてうち、小和香の背中洗ったったことなんぼも有るで?」
そんな和香様に少し諭すかのように言う雨子様。
「言うても和香、それは親が子をと言った感じでは無かったのかや?」
雨子様の言葉を聞いた和香様は、暫し物思いに耽った後に口を開く。
「成る程な、言われてみたら、もしかするとそんなとこ有ったかもしれへんな」
「であろ?仲良き友の背中を流すのは、また違ったものじゃと思うの」
そう言うと雨子様は不意に悪戯っぽそうな笑みを浮かべると、隣に居た七瀬の背中につっと指の爪を走らせる。
「きゃっ!何するのよ?」
「何となく?」
雨子様のその台詞を聞いた七瀬は、目をギラリとさせる。
そして矢庭に手をわきわきとさせたかと思うと、雨子様の両脇に差し入れる七瀬。
突然のその報復に驚く雨子様。
「あゆみ?あわわわ…、止せ、止すのじゃあゆみ!」
だが雨子様の願いも虚しく、わきわきと何かの生き物のように動く七瀬の両手の指は、容赦なく雨子様の脇腹を擽り始めるのだった。
「わははははは、駄目じゃあゆみ、止すのじゃあゆみ、わはははは、お願いじゃぁ~~~」
その後暫くたっぷり擽られた雨子様、息も絶え絶えになって浴槽の縁に掴まっている。
「むっふ~~」
そんなことを言っている七瀬は、なんとも嬉しそうだった。
それを見ていた和香様は、しんみりとした感じで言う。
「成る程なあ、そう言う友達関係もええもんやなあ」
そう言う和香様に、ほんの少し恨めしそうに七瀬のことを見た雨子様が言う。
「であろ?我もその…」
雨子様がそこまで言葉を口にしたところで、七瀬がきゅっと雨子様の肩を手で抱く。
「私は雨子さんの友達に成れてすっごく良かった!」
実にあっけらかんとそう言う七瀬に、優しい視線を向けながら雨子様は言う。
「我はそんなあゆみに、どれだけ助けられて居ることか…」
そう言いながら雨子様は首を傾げ、七瀬の頭に自分の頭をそっとぶつけるのだった。
「さてそろそろ上がるのじゃ、いくら何でも茹だってしまうからの?」
そう言う雨子様に七瀬も大いに同意する。
「ほんとほんと、いくら何でもこれ以上居たら鼻血が出ちゃう」
二人はそう言い合いながら楽しそうに笑うと、和香様と小和香様の二柱に、浴室を明け渡していくのだった。
そんな彼女らのことを見送りながら、和香様がぽつり静かに言う。
「成る程なあ、確かにああ言う友達関係もええもんやねえ。そう思わへんか小和香?って、小和香。その手は一体何やのん?」
見ると小和香様が何故か両手の指をわきわきとさせている。
「ですから私もあゆみさんのように…」
思わず慌てる和香様。
「いや小和香?そ、それはちと間違ってると思うで?いや、ちゃうって、ちゃうんやからぁ~~~、あははははは…」
浴室を出た七瀬と雨子様、タオルで丁寧に髪の水分を拭っていると、中から和香様の楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
「あははははは…」
「なんだか知らぬが、和香達も楽しそうじゃな?」
そう言う雨子様に、七瀬もうんうんと頷きながら同調している。
着替え終わった雨子様達が、先にダイニングに行っていると、暫く時間が経ってもう呼びに行こうかと思った頃合いに、へろへろに成った和香様がやって来た。
それを見た雨子様、思わず尋ねる。
「和香、如何したというのじゃその様にへばって?」
すると和香様、なんとも恨めしそうにしながら雨子様と七瀬のことを見る。
「如何って…、自分らのせいやんか…」
そう言う和香様の後ろから、にこにこ顔の小和香様がやって来て、正に成る程と思う雨子様と七瀬なのだった。
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