「七瀨と雨子様一」
お待たせしました
長くなりそうだったので二分割にしました
和香様達のとんでもない活躍?の後、スウェーデンリレーだ綱引きだと、四つばかりの競技を終え、無事体育祭は終了の時を迎えることが出来た。
幸いなことに大きな怪我をするものも居らず、教師達は内心そっと胸を撫で下ろしたことだろう。
こう言った大会は大いに盛り上がってこそでは有るが、事故や怪我がないのが何よりのことなのだった。そのお陰もあってか、体育祭の終了を告げる校長先生の話も、心なしか嬉しそうに聞こえるのだった。
さて祐二達のクラスの成績なのだが、学年トップ、且つ紅組としても優勝と言うことで、皆で手を叩きながら喜ぶのだった。
尤もそれで何かが貰える訳でもない、ただそう言う栄誉を手にすることが出来たと言うことだけなので有るが、それでもクラスの面々が一丸となって何かを成し遂げたというのは、心に残るものも多いのだった。
「お疲れ様~~」
「やったね~~」
「明日が休みで有り難いよ、これ絶対筋肉痛だもの」
「腹減ったぁ~~」
等と互いに言い合いながら、今は疲れを感じるよりも、遥かに多くの高揚感を感じているのだった。
この後は皆で後片付けをした後、教室にて簡単にホームルームを開いて解散となる。
その流れの中、祐二が七瀨に声を掛ける。
「七瀨、今日、自分ちのお袋さん遅くなるらしいから、家でご飯食べろって母さんが言ってたぞ」
小さい子供の頃からよく有ったことだけに、七瀨も心得た物で軽く返事を返す。
「ほ~~い、了解」
そんな二人のことを見ていたクラスメイトが、にやにやと笑みを浮かべながら言う。
「あなた達本当に昔っから仲良いわよねえ」
「そりゃなあ…」
そう言うと祐二は七瀨と顔を見合わせる。
「もう幼稚園ぐらいからの付き合いだもんねえ」
とは七瀨。
「私はさあ、てっきりあなた達二人がひっつくと思って居たんだけどなあ」
そう言う七竈も、二人との付き合いが結構長く、七瀨の家の事情なども、昔から良く知った仲なのだった。
「あははは、まあねえ」
七瀨としてはそれ以上どう答えたら良いものか分からず、言葉尻を濁すこととなっていた。傍らでは祐二が、がしがしと頭を掻いている。
「まあ、言うて…」
そう言いながら七竈は、横を通りかかった雨子様の腕をむんずと掴むと、前に引っ張り出した。
「まあこの子も確かに良い子だからなあ」
「???」
いきなり腕を掴まれたかと思うと、突然そんなことを言われた雨子様は、目を白黒させる。
「祐二よ、これは一体どう言うことなのじゃ?」
訳の分からない雨子様は、手近に居た祐二に尋ねるのだった。
しかしこう言った質問は、さすがに祐二にしても答えにくいことなのだ。
「いやま、そのう…」
それに割って入る様に七竈が雨子様に話しかける。
「いやね雨子ちゃん、あなたが来るまで私はてっきり、あゆみがこいつと付き合うもんだとばかり思っていたのよ」
他の者ならこう言う話題は、遠慮してなかなか上手く話せないものなのだが、七竈は竹を割った様なところが有るせいか、ずけずけと聞いてくるのだった。
その言葉に雨子様はほんの少し顔色を暗くする。
それを見て取った祐二が、カバーに入る前に七瀨が動いたのだった。
七瀨はさっと雨子様の腕を取ると、親しくその身体に撓垂れかかりながら言う。
「その辺の話は、私達の間でもう付いているのよね~~~」
そうやって言いながら七瀨は、明るく雨子様に微笑みかけるのだった。
「あゆみ、我は…」
そんな七瀨に、雨子様は何か言いかけるのだが、七瀨は雨子様だけに見える様に素早くウインクして見せるなりその言葉を遮る。
「第一私達大の仲良しだし、親友同士だものねえ~~」
七竈としては、その様な形で七瀨が雨子様を庇う形で動くとは思って居らず、これ以上深掘りするのは駄目だと思ったのだろう。あっさりと話題を打ち切るのだった。
「いまいち良く分からないのだけれど、当人同士ちゃんと話が付いているのならまあ良いか…」
そう言うと七竈は祐二の前に行くと、下から見上げる様にしながら言う。
「この様子からすると、どうやら吉村の方で動いた訳ではなさそうだし、良しとするかな?」
そう言うと七竈は最後に、三人にぺこりと頭を下げながら言う。
「ごめんね、誰かを悪く言うつもりは無かったのだけれど、前から少し気になっていたのよ。でもまあ成る様になった結果みたいだね~~」
そう言うと、手をひらひらとさせながらその場をのんびりと去って行くのだった。
後に残されたのは、何だか少し気まずい二人の女の子と一人の男の子。
「はぁ~~、なんだってゆきはこんなところでぇ~~」
と、脱力しているのは七瀨。
その傍らでしょんもり(敢えて、しょんぼりでは無くしょんもりです)しているのは雨子様。
それを見た七瀨が慌てて言う。
「こらこら何しょんもりしているの、雨子ちゃん?」
そう言う七瀨に、少しべそをかきそうになっている雨子様が言う。
「だってなのじゃ…」
そんな雨子様に七瀨は敢えて元気そうに言う。
「何言っているの雨子ちゃんは…」
そう言うと七瀨は、祐二の腕にむぎゅうっとしがみつきながら言う。
「これは既に私の中で、きちんとけじめを付けてる話しなの!だからこそ祐二とだって、ほら、こんな風に出来るくらいに仲良いじゃないの、ね?」
だが未だに気落ちしている雨子様に七瀨は言う。
「もう、馬鹿ねこの子は…」
そう言うと七瀨は祐二の腕から手を解き、尻を叩いてその場から追いやってしまう。
そうやって、祐二がその場から完全に立ち去ったのを確認すると、雨子様の腕を取って校舎裏の方へと誘っていく。
辺りに誰も居ないのを確認すると、七瀨はきゅうっと雨子様のことを抱きしめるのだった。
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