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天露の神  作者: ライトさん
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「お昼の珍事」

お待たせしました


 次に控えていた学年別クラス対抗男女混合リレーも、前競技同様沸きに沸くこととなった。


 クラスで足の速さ筆頭格の者、男女それぞれ五名が選ばれたのだが、今回は残念ながら祐二は選ばれることは無かった。しかし女子として、別格の足の速さを誇る雨子様は当然選ばれた訳で、その効果はクラスの者達が想像した以上のものとなるのだった。


 最初に一年の競技が行われ、その後が自分達の属する二年の競技とあって、自然応援している者達の間でも緊張が高まっていく。


 そしてついに始まる二年の競技、皆声の限りに応援するのだが、盛大に応援したからと言って、必ずしもそれが結果に結びつか無いのは仕方の無いこと。


 女子最終走者として最後のアンカーにバトンを渡す役割を得た雨子様。


 ここまで力走虚しく祐二達のクラスは、六組の走者中四位の位置取りだったのだが、バトンを得た途端に猛然と走り始めた雨子様の俊足は、追い抜かれた者達が総じて目を丸くするほどのものなのだった。


「天宮さん頑張れ~~!」

「いっけぇ雨子ちゃぁ~~ん」

「そこや頑張れ雨子ちゃぁ~ん!」

「頑張って雨子様!」


 沢山の応援の声に励まされ?た雨子様は、無事前方を走っていた全ての走者をごぼう抜きにしてトップに躍り出た。


 曲がったことが嫌いな雨子様のこと故、よもや特別な力など一切使って無いとは思うものの、人間の競技に果たして神様を混ぜても良いのだろうか?、少しばかり祐二が悩んだと言うのはここだけの話。


 結果、雨子様の稼いだリードを元に、余裕でアンカーは一位を獲得し、クラスの者達は皆跳び上がって喜んでいる。


 そんな大騒ぎの中、七瀨は祐二の腕を掴んで興奮しながら言う。


「雨子さんの走り方、滅茶苦茶綺麗だったよね、もうほんと惚れてしまう」


 実に敏捷で強力な脚力を持つ雨子様、それを生かした優美とも言えるストライド走法は、丸でカモシカを彷彿とさせる美しさがあった。寸分の狂いも無く振り抜かれるその腕は、見事なまでに推進力とバランスを身体に与え、流れる様に動く足の動きと共に、見る者を魅了する美しさがあるのだった。


 だから七瀨がそうやって惚れるのどうのと口に出すのも無理からぬことだった。

実際目がハートマークになりかけている者多数。彼女と祐二が公認の仲であると知れ渡っていなかったら、この後大変なことになるところなのだった。


 祐二としては七瀨の言葉に内心同意しながらも、ただ、ただ苦笑するしか無いのだった。


 興奮冷めやらぬ状態で次の三年のリレーが始まる。

これが高校最後のリレー競技と言うことも有るのか、走者達の鬼気迫る走りっぷりは、胸に来るものがあった。


 来年の自分達はどうなんだろう?そんな思いを胸に祐二は、有終の美を飾る三年の走る姿に、エールを送り続けるのだった。


 そして競技を終えて皆の所に戻ってきた選抜メンバーを、クラスの者達全員が喝采を以て迎える。勿論中でも雨子様に対する歓迎は熱烈を極めた。


「きゃ~~雨子ちゃん素敵ぃ~~!」

「抱いてぇ~~」

「すげぇーな天宮!」

「あんなに走るの速いなんて知らなかったぁ!」


 少しばかり不穏な言葉も混じっているものの、口にしたのが女子だったのでそのまま流されている。雨子様を中心にして女の子達が寄り集まって、揉みくちゃ状態なのだった。


 皆の熱い歓迎を一心に受け止めた後、ようやっとのことで解放された雨子様は、へろへろに成りながらも、嬉しそうな表情で祐二の所に来るのだった。


「お疲れ様!」


 祐二がそうやって労うと、雨子様は嬉しそうに笑みを浮かべながら、


「うむ」


 と頷くのだった。その雨子様、祐二の耳に口元を寄せると小さな声で言う。


「ところでの、走っている最中に気がついたのじゃが…、もしかすると…」


 そう言いながら雨子様はクラスメイト達に隠れる様にしながら、そっと保護者席の方を指差すのだった。


 その指先をそっと追いかけた祐二が、思わずえっと言う声を出してしまう。

母親の節子や令子と共に並んで観戦しているのは、和香様と小和香様なのだった。


「まさかあやつらが来て居るとは…」


 真っ赤になりながら絶句している雨子様。こともあろうに同じ神様仲間に、生足丸出しで全力疾走しているところを、まさか見られることになるとは想像もしていなかったのだ。


「ううっ…」


 うめき声を上げながらべそをかきそうになっている雨子様。

そんな雨子様の異変にいち早く気がついた七瀨が聞いてくる。


「何々、どうして雨子さんが泣いているの?」


 大いに苦笑しながら祐二がちらりと保護者席の方を見てみせる。


 その目の動きにしたがって目を凝らす七瀨。


「あ~~~、成る程。こりゃまたとんでもないお客様が来たものねえ」


 神様が参加した体育祭なんて前代未聞なら、神様が見学に来ている体育祭もこれまた初めてなんじゃ無いだろうか?そんなことを思いながら祐二は、雨子様のことを慰めるのだった。


「まあまあ、無様なところを見せた訳でも無し、最高に格好の良い見せ場を作ったんだから気にしない気にしない」


 その後一年生の競技ハリケーンや、三年生の大縄跳びなどと言う競技があったのだが、雨子様にとってはそれどころで無かった様だ。


 午前中全ての競技が終わって保護者達とのお昼となるのだが、早速雨子様はクラスの席から韋駄天の様に飛び出すと、和香様達の所に駆けていくのだった。


 その後を慌てて追いかける祐二と七瀨。

七瀨の母親の聡美は今日は仕事とのことで、祐二の家族の者達との昼食となる。


 これは二人が小さな頃から結構屡々あったことなので、何も違和感も無いことなのだった。


 必死に成って走って漸く雨子様に追いついたところ、彼女は既に和香様達に向かってぎゃんぎゃん苦情を申し述べているところだった。


「そうで無くとも忙しいと申して居った其方らが、一体全体何故こんなところに姿を現して居るのじゃ?」


 目を釣り上げて怒っている雨子様なのだが、和香様達と来たら、丸で平常運転。


「そんなん言うたかてなあ?なにげに節子さんとこ電話したら近々運動会や言うから、そら見にいかなあかんわって、万障お繰り合わせたんやんかなあ?」


「運動会?だからと言って何故に其方らが?」


 尚も噛みつく雨子様なのだが、徐々にテンションが下がってきている。


「そうは言うけど、雨子ちゃんが頑張っとる姿、見られるもんやったら見たいはなあ?」


 和香様の横では小和香様はぶんぶんと頭を振っている。


「雨子様、先程はとっても格好よう御座いました」


 小和香様が目をきらきらさせながらそう言うのを聞いた雨子様は、肩を落としながら一気に脱力するのだった。


「はぁ~~~」


 そこへ折良くと言って良いのかどうか分からないが、節子から声が掛かる。


「ほらほら、令子ちゃんが先行して藤棚の下に席を取ってくれているのよ。皆で行ってお昼を頂きましょう?」


 それを聞いていた和香様達、端から見ていて正に「わぁ~い!」と言った感じで席を立ち、とっとこと節子と共に藤棚へと向かう。


 行った先では令子が大きめのビニルシートを広げ、その上には既にお弁当と思しきお重などが置かれているのだった。そしてその量を見るに、当初より和香様達が来ることを考えての物と思われた。


「もしやこれは最初っから和香達が来ることを想定して居ったのかや?」


 下がり眉になった雨子様が節子にそう尋ねると、にこにこしながらその通りよと言われる。


「…」


 この時点で雨子様の反撃の意志は全て潰えた様だった。


「でも雨子姉さんのリレー、もの凄くかっこうよかったです!」


 他人の目があるところなので、敢えてお姉さん呼びしている令子なのだが、目をきらきらさせながらの台詞だった。


「ほんとほんと、私、雨子ちゃんがあんなに足が速いなんて知らなかったわ」


 節子もまたそう興奮気味に喋るのだった。


「ほんとですよねえ」


 とは七瀨。


「あゆみちゃん、お母さんから頑張ってってメッセージ貰っているわよ?棒引きの動画撮って送っといたからね?」


 まさかそんなところで手が回るとは思ってみなかった七瀨は、げげっと言いながら仰け反ってしまう。


「勿論雨子ちゃんのもね!」


 七瀨の横で雨子様もまた大いに仰け反るのだった。


「さあさあ座って座って、たっぷり作ってきたから、皆どんどん食べてね!」


 そう言うと次から次へと皆に料理を渡していく節子。

それを皆でわいわい言いながら食べていると、自然表情も緩んでくる。


 それを自らも楽しみつつ眺めていた雨子様、遠い昔、豊かに実った米の刈り入れの後、村総出で祭りを催していた時のことを思い出していた。


 今はもう影も形も無くなってしまった村の、豊かな思い出が蘇り、嬉しくも少し切ない雨子様なのだった。




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ブックマークもどうかよろしくお願いします

そしてそれらをきっかけに少しでも多くの方に物語りの存在を知って頂き

楽しんでもらえたらなと思っております


そう願っています^^

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