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天露の神  作者: ライトさん
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「天露神社(あまつゆじんじゃ)」

 遅くなりました。


急に足首の甲側が瘤の様に膨れ上がり、え?何?

と思って慌てて医者に行くと、関節液が漏れ出したとのこと…

やれやれ…思いもしない出来事でしたが、危険な病で無かったのが幸いです(^^ゞ


「ところでさ、雨子さん」


 祐二がそう言いながら、つと箒を動かす手を止める。

それは週末恒例、天露神社の掃除の最中のことだった。


「なんじゃ祐二?」


 少し離れたところで、自身も箒を使ってせっせと、境内を掃き清めていた雨子様が、すたすたと祐二の所に歩み寄りながら言う。


「一時、日本各地の社の火災が問題になっていたよね?」


「うむ」


「最近その話が聞かれないのだけれども、その後どうなっているの?」


 すると雨子様は小さな社の濡れ縁に箒を立てかけると、その場にふわりと腰を降ろしながら言う。


「それがじゃな、和香の鶴の一声で全国に津々浦々、小者による社の監視態勢を敷いたところ、急激にその数を減らし、昨今は全く発生して居らないそうじゃ」


 祐二もまた雨子様の隣にひょいと腰を下ろし、高く晴れ上がる蒼天を眩しげに見つめながら言う。


「火災が発生しなくなったのは良かったなって思うけれども、誰が何故と言うところが分からないのは、何とも気持ち悪いよなあ」

 

「全くじゃの、火災の発生原因を探るための唯一の証拠品が、元居神社近くで燃えた社の近辺で見つけた、例の蛇らしき物の鱗、あれっきりじゃからな」


「あれは確か、和香様達が持ち帰ったのだよね?」


「うむ、そうじゃ、持ち帰って色々調べはしたのじゃが、蛇らしき物の怪の鱗ということ以外何も分からん。既知の物の中にそれに当たる物が見受けられなかったようじゃ」


「和香様達に分からないんじゃあ、どうしようも無いのだろうなあ…」


 祐二がその様なことを呟いていた時のことである。小さな童が現れたかと思うと、傍らから雨子様の服の裾を、つんつんと引っ張るのである。


 一瞬近所の子供かと思った祐二なのだが、良く良く見るにどうも雰囲気と良い、全体の縮尺と言い、着ているものすら違う様に思う。


「雨子さん、この子…」


 祐二がそう言っている間にも、雨子様自身、目を細めてその子を見つめている。


「なんじゃ其方、桜の童子かや?」


 唐突に思いだしたかの様にそう言う雨子様。その言葉を聞いたその童は、満面笑みになったかと思うと、そこいら中をぴょんぴょん跳びはねている。


「雨子さん、もしかして?」


 祐二も思い当たることがあってそう尋ねると、雨子様はうんうんと嬉しそうにしながら頷くのだった。


「して、其方一体何用なのじゃ?」


 未だ跳ね回っている童に、雨子様がそう問いかけると、パタパタと走り寄ってくる。


「あれからこの地にて、雨子様の神気を受けながら日の光を浴び、一心不乱に大きくなろうと頑張って参りました。お陰様で私もそれなりの力を蓄えることが出来、いよいよ来年から花を咲かせようかと思います。つきましてはその前ぶれのご挨拶なのであります」


 それを聞いた雨子様は、満面の笑顔を浮かべながら、その童に向かっておいでおいでと手招きをする


 そして直近までやって来たところで、おつむにそっと手を置き、優しく優しく撫で上げるのだった。


 そうやって撫でられた童は余程気持ちが良かったのか、目を細めてうっとりとしている。


「よう頑張ったのじゃの?まさかこれほど早く此所で再び桜の咲くのを見ることが出来る様になろうとは、望外の喜びじゃ」


 そう言うと雨子様は、濡れ縁から地面にとすんと降り立ち、童に向かって言う。


「うむ、とにもかくにも其方の本身に案内あないするのじゃ」


 すると童は、そんな雨子様の手をぎゅうぎゅうと握って引っ張り始める。


「これこれ、その様に強う引っ張るのでは無いぞ」


 そんなことを言いながら雨子様もまんざらでは無く、嬉しそうにその子に引っ張られていく。


 行き着いたのは当然の如く、以前の桜の古木が生えていたところだった。

そしてそこには二メートルを超える桜の若木が生えている。


「ちょっと待って、爺様の木が倒れたのから未だそんなに時間が経っていないよね?あの時確か、小さな可愛い新芽を見た様に思うのだけれど…」


 嘗てのことを思い出していた祐二が、驚いた様にそう言っていると、なんだか雨子様が妙に鼻高々をやっている。


 その様を見ながら苦笑しつつ祐二が言う。


「なんだよ雨子さん、その仕草は?」


 祐二がそう言うと、雨子様は鼻息も荒く「むふう」と何やら自慢げである。


「我はな、其方とここに掃除に来る度に、密かにこの木に神力を注いで居ったのじゃ。今その甲斐があったことが分かって嬉しいのじゃ」


 道理で木の大きくなるのが異常に早く、こんな時期に花が咲く話が出てくる訳なのだった。


 祐二はしゃがみ込んで、雨子様に纏わり付いている童と視線を合わせると、彼もまたその頭を良々と撫でてやる。


「君は本当に頑張ったんだなあ」


 祐二と雨子様の二人から褒められた童は、それはもう有頂天と言った様子だった。


「ねえ雨子さん」


 祐二はにこにこ顔の雨子様に静かに言う。


「なんじゃ祐二?」


 そう言いながら、そっと祐二の傍らに寄り添う雨子様。


「この子が満開になる時、また咲花様と和香様もお呼びしなくては成りませんね?」


「成るほどの、先代を見送る時には世話になったしの、これはまたお披露目せねばならんの?」


 今は未だ若木の葉も青々として茂っている。これがまもなく訪れる秋も深まりし頃、黄色や赤となって美しく散っていくのだろう。


 そして厳しい冬の寒さを耐え忍び、穏やかな春の光を迎える頃、芽吹き和らぎ、そして一気に花開く。


 今からその時を思い、寄り添う様に若木に視線を注ぐ、一人と一柱なのだった。



いいね大歓迎!


この下にある☆による評価も一杯下さいませ

ブックマークもどうかよろしくお願いします

そしてそれらをきっかけに少しでも多くの方に物語りの存在を知って頂き

楽しんでもらえたらなと思っております


そう願っています^^

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