「途次(みちすがら)一」
遅くなりました
本日体調不良の為超短めです
また頑張りますのでご容赦の程
待ち合わせ時間よりかなり早く行ってしまったせいで、色々と恥ずかしい思いをしてしまった小和香様。しかしそれ以外に、何かと得るものも有ったように思えてしまう。
命に直結するような危機も無ければ、はたまた寿命という時間的制約も無い神様にとって、普段人間達の感じるレベルで、細々(こまごま)と色々なことを知るのは、なかなかに難しいことなのかも知れない。
確かに人間からの祈りや願いを汲み取る時に、その一端を知ることは出来るのだが、それが如何に不十分なものなのか、ここに来て身に染みて感じてしまうのだった。
こう言った人間との直接的な付き合いの中で、色々と学ぶ事が出来るものだなと、改めて知る小和香様なのだった。
「行ってきます!」
令子の明るい声が吉村家の玄関に響く。
「はい、いってらっしゃい」
にこにこ顔の節子が、その背中を見送りながら声を掛ける。
家の外に出た令子は振り返ると、そんな節子に向かって眩しそうな顔をしながら手を振ってみせるのだった。
別にそんなに遠方に行く訳でも無く、ただ街中の映画館に映画を見に行くだけなのだが、それでもこう言う小さなことの繰り返しが、おそらく家族の絆を強くしていくのだろうな。そんなことをふと思う小和香様なのだった。
「うふふ、こうして小和香さんと二人だけで出かけるの、何だか嬉しいな」
顔を笑顔で一杯にしながらそう言う令子。
「私もです」
小和香様もとびきりの笑顔であることは言うまでも無い。
小和香様はバッグから日傘を取り出すと、二人を守るように日陰を作る。
「何だかおしゃれな日傘ね?」
そう言う令子に、嬉しそうに相好を崩す小和香様。
「今日という日の為に買っておいたんですよ?」
ちょっと自慢げにそう言う小和香様。ただその一方小和香様は、こうやって二人で入る為に傘を掲げると、令子と手を繋げないことに気づいてしまう。
「あっ…」
「どうしたの?」
急に小和香様が上げた声に、令子が不思議と尋ねる。
「だって…傘を持っていると令子さんと手を繋げない…」
それを聞いた令子は思わず苦笑する。
「ねえ?小和香さん、確かに私は、見かけちっちゃな子供かも知れないけど、中味はちゃんと成人した大人よ?」
そう言う令子に、ちょこっと切なそうな顔をしながら答える小和香様。
「でもでも、周りから見たらやっぱり小さな子供なんですよ?だからその、私は…」
恐らく小和香様は、令子の心が大人と分かっては居ても、それでも自らの中に湧き上がる庇護欲を消しきれないのだろう。
ふにっと唇の隅っこを噛みしめる様を見て、これは仕方無しと、小和香様の腕にそっと手を掛ける令子。
忽ちに、にへらと顔が緩んでしまう小和香様。恐らくこんな表情は、和香様も見たことが無いのでは無かろうか?
そうやって互いの思いを少しずつ混ぜ合わせながら、閑静な住宅街の街路を、最寄り駅へと向かう小和香様と令子。
こうやって並んで歩くと、小和香様の目から令子の顔を見ることが出来ない。何故なら令子がちょこなんと被っている、可愛らしいストローハットが邪魔になってしまうから。
だがその帽子に付いているお洒落なリボンが、歩く度にひらひらと蝶々の様に揺れているのを見て、これも良いかなと思ってしまう小和香様なのだった。
それから時折令子の手が、ぷにぷにと彼女の腕を掴んでくる。それがわざとなのか無意識なのかは分からないのだけれども、顔の緩むのを抑えられない小和香様なのだった。
強い日差しの元、なるべく日陰を寄るように歩いていたお陰か、駅に着くのに時間が掛かってしまった。
にもかかわらず二人にとってその時間は、あっと言う間の様に感じられているのだった。
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