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天露の神  作者: ライトさん
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「夫婦の会話、神との会話」

ちょこっと遅くなりました、申し訳ないです(^^ゞ


そうそう

連休中は更新お休みの予定です

明けたらまた宜しくお願い致しますね


 昨日は祭りの成功を祝い、皆で楽しく飲み食いをして大いに盛り上がったのだが、そのことで例えどんなに遅い時間まで起きていようとも、温泉が在るとなると行動が変化したりするものである。


 日頃の習慣のせいも有るのか、朝一に起きた節子がそそくさと身体を洗い、外湯に浸かってのんびり朝風呂を楽しんでいると、少しずつ間を開けて人がやって来る。


 まず一番最初にやって来たのは夫の拓也だった。


「「おはよう」」


 互いにそう言い合うと隣り合って湯に浸かり、合わせた訳でも無いのに同時にはふうと息を吐く。何でと顔を見合わせては、また同じように吹き出している、


 なんだか知らないのだけれども、夫婦なんだなと、それぞれに思って居る一時なのだった。


「それで?」


 突然そんなことを言ってくる拓也。

節子はそんな拓也の唐突ぶりに吹き出しながら言う。


「それで、って一体何なのよ?」


「いやあ、昨日の夜、聡美さんと二人で小和香さんの相手をして、何かしていたじゃ無い?」


 それを聞いた節子は、ああと納得する。

言って良いものかと僅かばかりに逡巡するのだが、基本、夫拓也との間で内緒にするようなことは少ない。


 昨夜のことも拓也がこの先黙っていれば済むことなので、思い切って話してしまうことにする。


「あのね…」


 そう言いかけて声を潜め、辺りを見回す。改めて誰も居ないことを確認した後、先程の続きを話し始めるのだった。


「小和香さんって、神様じゃ無い?」


 そう言われた拓也は、少しばかりきょとんとした顔をする。

彼にしてみれば何を今更という思いなのだが、そう言う話し方をするからには、何かそれなりに意味があるのだろうと考えた。


 なので喉まででかけていた質問の言葉を抑え、黙って目顔でその先を話すことを促すのだった。


「神様って本来、私達のような一般的人間がするような、色恋についてほとんど無縁に近いらしいの。勿論無い訳では無いのだけれども…良く言うじゃ無い?恋に燃え上がるとか。そう言うような恋は、普通神様達の間では無いらしいのよね」


「なるほどね」


 その時拓也の頭の中では、ギリシャ神話や日本神話など、古今東西の神話の中の色恋の話を思い出していた。果たしてその中のどれだけのものが、真実を内包しているのだろうなどと考えながら。


「でね、昨今神様達は、人間の食べ物の美味しさを知って、その味をきちんと味わい尽くすためにも、人と同じような肉の身を纏われているんですって」


 その話を聞いた拓也はなるほどと思ってしまう。確かに人は、自分達が美味しいと感じるためにこそ、様々な料理を編み出しているのだ、ならば人の身で味わうことが最も良く味を知ることに繋がるのだろう。


「分かる気がするよ、そう言う意味では節っちゃん、君の力に預かるところ大だなあ」


 突然の夫の言いように、今度は節子の側がきょとんとする番だった。


「何で私のせいなの?」


 そう言う節子に拓也は笑いかけながら言う。


「だって節っちゃん、君の作っている唐揚げが、神様達の間では大評判だったじゃ無いか?小耳に挟んだんだけれども、あれが食べたいが為に和香様のところに来る神様が、居るとか居ないとか」


 そんな拓也の言葉に苦笑しつつ節子は言う。


「そう言えばそんな話聞いたことが有るように思うわ」


「さておき小和香さんの話だよ?」


 すっかりと話が脱線してしまっていることを拓也に指摘される節子、気持ちを切り替えて話し始める。


「それでね、そういう風に人間に近づけた身体にしていると、それが結構神様達の心に影響するみたいなのよ」


 それを聞いた拓也はなるほどと感心する。まるで人間の脳と身体の関係のようでもあるなと独り言ちする。


「それで?」


 とても興味深そうにしながら、拓也がその続きを催促する。


「それでね、小和香さん、どうやら祐二のことを横恋慕しちゃったみたいなんだけれども、そう言った経験がなかったものだから、ずっと恋していること自体に気がついていなかったみたいなのよ」


「なるほどなあ、そう言った事柄に縁遠かったことが災いした訳なんだなあ」


 なんとも夫らしい言いように、節子は軽く笑いながら話を続ける。


「そうね、ある意味小和香さんにとっての初恋みたいなもの、うううん、事実、初恋だったのでしょうね」


「初恋か…それでどうしたの?」


「うん、小和香さんがそのことに気がついたところで、和香様がお越しになったので、多分和香様ならって思って、お任せしたの…」


 そう話しながら何か、物思うようにしている節子の様子に、静かに催促もせずに話の再開されるのを待つ拓也。


「…そしたらな、なんと驚いたことに、和香様まで祐二に恋してたことがあるそうなのよ?」


 驚きの余りにポカリと口を開ける拓也。そして思わず今一度と話を聞き返すのだった。


「ちょっと待って、和香様がなんだって?」


 拓也のその驚きようが妙に納得出来てしまう節子、笑いながらその先を話し始める。


「でしょう?吃驚しちゃうでしょう?」


「まあ確かに吃驚は吃驚なんだけれども、祐二の奴なんだか妙に持てるんだなあ?」


 すると節子は少しばかり胸を張りながら言う。


「あら、私達の息子なんですもの当然じゃ無い?」


 節子のその言いように、少し戸惑いながら言う拓也。

 

「と、当然なのか?」


 そう言う拓也のことを、少しばかりじとっとした目で見る節子。


「はい…当然です」


 珍しく妙なところで親馬鹿な節子に、拓也は逆らう術を持たないのであった。


「それで和香様はなんて?」


 早めに話しを逸らすことも兼ねて、拓也は自らその先を聞く。


「ああそれでね、和香様の仰るには、今纏っている肉の身からの刺激があるが故に、心が惑う部分が有るから、一度その身を解いて元の神様に戻りなさいって…」


 節子の言葉にうんうんと頷きながら拓也は言う。


「きっとそうすることで、一端気持ちをリセットするような効果があるのだろうけど、それで小和香さんはどうって?」


 答える節子は切なさそうに言う。


「うん、祐二にはもう既に雨子様が居るじゃ無い?だから自分の恋心は諦めることにされたようよ」


「そうかあ…しかしなんだって祐二はそんなに…」


「だぁかぁらぁ…」


「分かった分かった、僕らの息子だからだろ?」


 表情には出さないようにしていたのだが、拓也は自分の妻に、こんなところで妙に人間臭い部分が有ることを知って密かに笑ってしまうのだった。


「しかしそうやって自分の恋心を、小和香さんの場合は初恋?をリセットしちゃうのかあ。良いような悪いような、僕達にしてみれば何と言うか切ない話だなあ」


 そうやって小和香様に対してごく自然に、優しい思いを発露する拓也。節子はそんな拓也の傍らによると、その腕を抱きながら言うのだった。


「本当よねえ…」


 と、噂をすれば影とは良く言ったものだ。


 そんな二人の元に小和香様が姿を現した。最も今日は、神社の関係者で有ることを体現している様な巫女姿。お風呂に入ることは無さそうだ。


 彼女は湯の外から、夫妻にそっと頭を下げると言う。


「おはようございます、よくお眠りに成られましたか?」


 対して節子は努めて笑顔になりながら言う。


「おはよう小和香さん。そうね、時間は少し短かったかも知れないけど、とってもよく眠れたと思うわ」


 それを聞いていた拓也、少しだけぼやくように言う。


「そりゃあ君達女性陣は、昨夜はそれはもう盛り上がってきゃーきゃー大騒ぎしていたものなあ…いててて」


 うっかり多かった一言のせいで、腕の内側をきゅうっと節子に抓られてしまう拓也。


 昨夜は小和香様の気持ちを、少しでも軽くしたいという思いで始まったのだが、女性だけの内輪話が思いの外盛り上がり、なかなかに際どい話が出て来たのだった。


 お陰で男性達は皆別室へと押しやられ、割と早い時間の内に床に入ることに。

だがそれが良かった。(いや良くは無かった?)


 主に語られたのは節子や聡美、そして葉子と言った年上の恋の話やその他諸々。


 まさか自分の親世代の恋愛事情など、耳にすることになろうとは、思いもしなかった七瀬はともかく、万斛ばんこくの情報を知りつつも、色恋については全く以て何も知らないも同然の三柱の神々は、それはもう赤くなったり青くなったり。


 途中小和香様が、耳を押さえて廊下に飛び出して行ったり、顔を真っ赤にした雨子様が、う~~んと言うなりひっくり返って、慌てた令子が冷えたおしぼりをその額に押し当てたり、それはもう上を下への大騒ぎに成るのだった。


 だがそんな思いも掛けない騒ぎではあったのだが、憑き物が落ちたかのようにさっぱりとした顔になって、嗚呼と笑う小和香様の表情に、和香様は心の底からほっとして笑みを浮かべるのだった。


 さてそんな夜のことを少し思い起こした小和香様は、顔を赤くしながら節子に言う。


「昨夜は本当にありがとう御座いました」


 どことなく吹っ切れたような顔つきをしている小和香様に、内心ほっと胸を撫で下ろしながら節子が言う。


「ううん、とんでもない、でも楽しかったわね?」


 そう言う節子に、心からの笑みを浮かべながら小和香様が言う。


「はい!」


 そんな小和香様のところに近づくと、声を小さくして節子は聞いた。


「それでその、小和香さん…?」


 節子にはどうしてもその言葉の続きを言うことが出来なかった。

けれども小和香様には、十二分に節子のその気遣いが伝わっているのだった。


「はい…昨夜こちらを辞去して暫く後、神化致しました」


 節子はその言葉を聞くときゅっと息を吸い込み、そして僅かな後、そっと吐き出すのだった。


「そう…。お変わりは無い?」


 自身のことでも無いにも関わらず、泣きそうな顔になってそう尋ねる節子に、少し困ったような顔をしながら、優しく返答する小和香様。


「はい…、全く変わりがない訳ではないのですが、身を焦がすような思いは…無くなりました。ええ、だからもう大丈夫です、大丈夫なんです」


 言葉の後ろ半分、未だ言い聞かせるようにそう言う小和香様。


「もう思いは何も無くなったの?」


 そう聞かずには居られない節子。そんな節子のことを暫し見つめ、にこりと笑ってみせると、寂しそうな目をしながら言う小和香様。


「もう惑うようなことは無いと思います。けれども…」


「けれども?」


「やっぱり祐二さんのことは、好きかな?好きなんだと思います」


「そう…ありがとうね小和香さん」


 そう礼を述べられたことを、不思議に思う小和香様が僅かに首を傾げる。


「どうしてありがとう?」


「だってね、あなたは私達の宝物を好いてくれているのよ?お礼を言わなくっちゃ」


 そう言われて、初めてお礼の意味を悟った小和香様は、一粒だけ涙を零しながら満面の笑みになる。


「うふふふ、人って本当に不思議。でも本当に素敵。もう大丈夫です」


 そう言うと、来た時に比べて軽い足取りでその場を去って行くのだった。






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