閑話「ユウの独り言」
今日はとんでもなく忙しい日でした。なので通常の執筆が出来ず、ノートになぶり書き。
それを起こして入れ込みました。ユウの独り言みたいなものです
僕が目を覚ましたのは、何だか真っ暗な場所だった。
その時僕が覚えていたのは小さな女の子がいたと言うことと、その女の子に一杯愛されていたと言うこと、この二つだけ。
でも目を覚ました僕は独りぽっちで、誰の声も、愛も届かないような、そんな場所に居たんだよ。
ここは嫌だ!僕はそう思った。強く強く思った。
そうしたら目の前がさっと開けた。
その時になって初めて僕は知ったんだ、自分が小さな箱の中に居たのだと言うことを。
そして今も僕は箱の中にいる、でも僕は箱の外にもいる?
何なんだろうこの二つに分かれてしまうような感覚は?暫く考えてみたのだけれども、結局僕にはそれ以上のことは何も分からなかった。
でも分からなくても僕はここに居る。
そして香る、どこからともなく香る、とても懐かしい香り。僕にとっては無くてはならない不思議な香り。
僕の心の奥底深くに有る何かが目を覚まし、静かに淡い記憶が蘇っていく。
そうだ、これは僕の主の香り、あの女の子の香りなのだった。
そう言えば主、主はどこに行ってしまったのだろう。
こんなちっぽけな僕を一人残して、一体どこへ行ってしまったのだろう?
今の僕には何も分からない、けれども心を温かくしてくれるこの懐かしい香り。
僕は思ったんだ、この香りを追いかけようと。
心が思い、決心した瞬間、僕の体はふわりと浮かび上がった。
それはとても心地よく、まるで体に羽でも生えたかのよう。もっとも、ちっとも羽なんか生えていないのだけれどもね。
主の香りを追いかけて、ふわりふわふわ宙を飛ぶ僕。
ゆっくりゆっくりだけれども、少しずつ香りの強い方へと飛ぶ僕。
眩しい日差しの元、何度か主以外の人の姿も見掛けはしたのだけれど、だぁーれも僕のことを見ようとしないし、気がつきもしない。
もしかすると僕のことが見えないのだろうか?
緑の木々の梢を超え、賑やかな通りを行きすぎ、多くの家々の間をすり抜けて、僕は大きな建物の在る所にやって来たよ。
そこには沢山の人々がいて、何だか皆楽しそうにしている。
ここに主がいる!僕の心の中で、香りの強さが確信に変化していく。
僕は嬉しくなって大急ぎで主の元へ行こうとした。
でも…、主の直ぐ側に何かとても強い光を持つ者が居る。何だろう?とても怖い!
怖くて怖くて仕方ないのだけれども、でも目の前に大好きな主がいる?はず?
主の香りがするその人は、僕の知っている主よりもずっと大人で、僕の知らない人だった。いや、どこか似ている、香りは同じ、主なの?
近くに居るその怖い光りの人が主かも知れないその人に話しかける。
「七瀬よ、そなた一体どうしたというのじゃ?」
あれ?主の名前、七瀬…七瀬って言わなかったっけ?そうだ七瀬あゆみ、それが主の名前だった。
そしてこの香り、間違い無く主の香り。どうして大きくなってしまったのかは分からないけれども、この人は正しく主だと思う。
どうしよう、近寄りたい。でもこの光りが怖い、この光を放つ人が怖い。
しかたなく僕は主の影に隠れるようにしながら近づいていった。
けれども僕のその努力は実らなかった。
必死になって影に隠れる僕のことを、きっと見据える光りの人。怖くて逃げるようにして場を移しても、その視線は決して僕から離れることはなかった。
他の誰にも見られることはなかったのに、どうしてこんなに怖い人に見つかってしまったのだろう?僕は怖くて怖くて震え上がってしまった。
そしてこれが僕と雨子様の、初めての出会いだったんだ。
でも今は、ちっとも怖くない、むしろ雨子様は僕に構い過ぎるくらい。
「ユウよ、母御に菓子を貰うたのじゃが、そなたも食べるかえ?」
『はぁ~い、食べまぁ~す』
僕がもぐもぐとお菓子を食べていると、雨子様はその様を目を細めて見ている。
「美味いかや?」
『はい、とっても美味しいです!』
僕は主の次に、雨子様に会えて良かったなって思います。
おしまい
いつも拝読頂きありがとうございます。
もしよろしかったら気が向いたときで結構です、☆印を少しばかしいじって下さると
大いに喜びます^^




