「秘密」
いつも思うのですが、書くのは楽しいですが、大変だなあ(^^ゞ
そうそう、昨今雨子様達をAIで描いて楽しんだりしています
「さて、直ぐに帰ったところで、風呂は節子達に占有されて居るじゃろうし、少し散歩でもせぬか?」
そう言うと雨子様は、祐二の手を取ってゆるりと夜の街を歩き始める。
「こんな夜遅くにうろうろして大丈夫かなあ?」
何せ見た目全くのただの女の子にしか見えない雨子様。そう考えるとやっぱり少し心配になってしまって、祐二はそう言葉を口にするのだった。
その雨子様、思いの外祐二の言葉が嬉しかったと見える。
くるりと回り込んで祐二の前に立つと、その顔を覗き込みながら満面の笑みを浮かべつつ言う。
「くふふ、先達ての夜の海のデートも楽しかったの?」
苦笑しながら頷いて見せる祐二。
「あの時は、とんでもないおまけが居たのだけれどもね…」
その言葉を聞いた雨子様は、ぶるりと身体を震わせる。
「お願いなのじゃ、思い出させんでたもう。なんかもう、こう、恥ずかしゅうて、顔から火が出そうなのじゃ」
そう言いながらぷんすかと怒っている雨子さんは、普段の女神然とした様子からは、想像も出来ないくらいに可愛いのだった。
お陰で祐二は、どうしても顔がにやついてしまうのを止められなかった。やむなく祐二はそっと雨子様から顔を背ける。
だがそれに気がついた雨子様は、トトトと、その方向へと回り込んでいく。そうなると祐二も更に見られまいと顔を背けてしまう。
ことここに至って祐二は、顔をむんずと雨子様に押さえ込まれ、覗き込まれてしまうことになってしまった。
「何じゃ祐二、何故顔を背けるのじゃ?…って、もう…何をその様ににやついて居るのじゃ?」
祐二は降参というように手を上げると、正直に思いを口にする。
「それはだって、雨子さんがなんか可愛すぎて…」
それを聞いた途端にぐぎっと固まり、あんぐりと口を開いたままになってしまう雨子様。かと思うと、急ぎ顔を手で覆いながら祐二に背を向ける。
「ばか…」
そう言う小さな声が背中越しに聞こえてくる。
どう返答すれば良いのか分からなくなった祐二が、頭を掻きながらその場に立ち尽くしていると、少し怒ったような雨子様の言葉が聞こえてくる。
「祐二はいつもそうじゃ、何と言うかその、素直に物を言いすぎるのじゃ…」
そう言う雨子様に祐二が言う。
「素直じゃない方が良いのかな?」
すると雨子様は急に振り返ったかと思うと、祐二の胸元に顔を押しつけるようにしながら言う。
「だめなのじゃ、素直で居るのじゃ。我の祐二はそうで無くてはならんのじゃ」
そうくぐもった声で言う雨子様の頭から、甘い香りがふわりと立ち上ってくる。
思わずぎゅっと抱きしめてしまう祐二なのだった。
だが二人の居るのは多くの家々が立ち並んだ街中の道。
夜遅いとは言え人通りが全くない訳では無く、やがてに二人はふと人の気配を感じてしまう。
二人して後ろ髪を引かれながら身体を離し、手を繋ぎながらそっと歩みを進めることにするのだった。
きゅうっと握る雨子様の手が、とても柔らかい。そのことに気がついた祐二は、ふととある疑問を思いつくのだった。
「そう言えば雨子さん」
「何じゃ?」
今以て少し甘さのある声でそう言い返す雨子様。
「伺いたいことがあるのですが…」
そう言う祐二に、話題の変化を感じた雨子様は、つんと口元を尖らしつつ聞こえないような小さな声で言う。
「ばか祐二…」
「え?何か言いました?」
そう聞く祐二に、雨子様は少し語気を強めて言う。
「なんにもじゃ、なんにも…」
何だか急激な機嫌の悪化を感じる祐二なのだが、それが一体何故なのか理解することは出来ないで居た。だがその時はそれ以上追求することはせずに、当初聞きたいと思ったことを口にするのだった。
「さっきね、環乃葉様をお見送りした時に、偶々手を握られたのですけど、固いんですよね…」
「固いって、祐二は何を?ああなるほど…」
一瞬狐につままれたような表情をした雨子様なのだが、直ぐに納得したのか笑みを浮かべた。
「此度は卯華姫の為に、大急ぎで分霊を誂えることになったであろ?」
大凡の事情は知っている祐二なので何も言わずに頷いた。
「しかも大神の第一分霊と言うことも有り、急ぎでは有るとは言うものの、極めて能力を重視しての誂えじゃった。故に分霊としての能力を最優先に考えて事を運んだ故、身体の方が未だ追いついておらんのじゃ。基本的な仕様は既に整えてあるので少しずつでは有るが、時が経つ内に小和香と同様の身体になって行くであろうよ」
「ああ、そう言えば小和香さんが基になるとか言っておられましたね?」
「うむ、何もかも全て新作にするのでは、暇が掛かって仕方が無いのでな」
成るほどと思いながら、小和香様と環乃葉様の姿を思い浮かべる祐二。
「でも基にしたとは言っても、瓜二つと言うほどでは無かったですね?」
その言葉に応える頃には、雨子様もすっかりと機嫌を直し、いつもの口調に戻っている。祐二はそれを感じて内心ほっとするのだった。
「うむ、じゃがあの程度の見かけの差違は、有って無きが如しなのじゃ。因みに環乃葉のことを言うので有れば令子や我も、時と共に少しずつ変化をして居るよの」
環乃葉様だけで無く令子や雨子様についても、現在進行形で変化中だと聞いた祐二は、結構驚いた風に成りながら聞く。
「環乃葉様のことについては分かるのですが、令子さんや、それに雨子さんについてとも成ると、それはまた一体どうしてそう言うことに?」
すると雨子様は、我が意を得たりという感じで嬉しそうに説明をし始める。
「まず令子なのじゃが、当初は子供のままが良いとか言って居ったのじゃが、やはり自分もまた成長して大人になりたいとか言うことを言って居ったであろう?」
「うん、色々考え直していたみたいだね?」
「もとよりその様な可能性も考えて居った。で有るが故に、あやつが何時か望んだ時に、その願いを叶えることが出来るような仕組みを仕掛けてあったのじゃ。そしてその仕掛けに付けて居った鍵、これは既に我と和香の承認により外れて居る。じゃから今、あ奴の身体は普通の人間と同じ速さで、少しずつ大人になっていって居る。更に…」
「えっ?未だ続きがあるの?」
おおざっぱなことしか知らなかった祐二は、その先が有ると聞いて少し驚く。
「節子と、其方の父拓也の許しを得、令子はそれぞれの遺伝子を分け与えられて、まっことその子供と成って居る。将来何時か結婚して子を成せば、其方の甥姪を産むことになろうよ」
「うわぁ?それ本当?なんかちょっと嬉しいかも?」
「今はその為に色々な部分でその仕組みを馴染ませ、成長させて居るところじゃな。加えて言うなら、恐らくこの休みが終えた後になると思うが、あやつは小学校に通うことになろうよ」
「うげ?それって大丈夫なの?」
「それよの。我もそれで良いのかと大分言うたのじゃ。じゃが本人がもう一度味わってみたいというのじゃ。本人が言う以上はもうどうしようも無いであろ?」
驚きの余り大きく目を見開いたままの祐二は、それはそうだがと言いつつも、令子のその挑戦に感心しているようでもあるのだった。
「それで令子さんのことは分かったのだけれども、雨子さんはどう変化しているの?見た目僕には、もうすっかり普通の女性としか見えないのだけれども」
実を言うと雨子様には、祐二のこの普通のと言う言葉が思いの外嬉しかった。
別に祐二に対して、自分が神であることを引け目に思うことは無いし、いずれ祐二も自分と同じ神に成ることを思えば今更のことだ。
だがそうであったとしても、現状ただの人間としての祐二に、同等の存在として扱われていると言うそのこと自体が、何とも嬉しくて堪らないのだった。
「我の変化と言うのはの…」
と、そこまで言いかけて雨子様は急に俯いてしまう。うっかり調子に乗って喋り始めていたのだが、何をと祐二に話そうと思うと、実に恥ずかしく言い難く有ることを知ってしまうのだった。
だがそんなこととは知らない祐二、例によって素直に聞き返してしまう。
「それで変化って?」
「むぐぅ」
そう言うと雨子様は唇を噛みしめてしまう。
「言わねばならぬかや?」
俯いたまま雨子様は、消え入りそうな声で祐二に問いかける。
さすがにこの様子を見た祐二は、これ以上聞いて良いのかどうか、迷いを生じてしまった。
「あのう。話し難かったら良いよ?」
その言葉に逡巡してしまう雨子様。
知られたくない思いと、分かち合いたい思いが心の中でせめぎ合って、どうしようも無いのだった。
そうやって悩むと、ふと今の自分の有り様が、例えようも無く孤独に思えてしまい、寒くも無いのに我が身を抱えて震えてしまう。
驚いたのは祐二の方だった。真夏のこんな時期、夜とは言っても暑いくらいで決して震えるような気温では無い。
にもかかわらず目の前に居る雨子様は、自分の身体を抱えて身を震わせて居る。
勿論その訳は祐二には分かりようのないことだった。
だが祐二は、それ以上あれこれ考えるよりも、まず雨子様のことを抱きしめて上げるのだった。
「雨子さん、今、雨子さんがどんな思いを抱えているのかは分からない。でも僕は何があっても雨子さんと一緒だからね?」
そう言う祐二の言葉が胸に浸むに従い、ゆっくりと顔を上げる雨子様。両眼には溢れんばかりに涙が盛り上がっている。
そして笑う。
「くふふ、我は祐二で良かった。祐二で無くてはならんのじゃ」
そう言うと大きく息を吸い、吐いて、深呼吸をする。
そしてもう落ち着いたと祐二に告げると、そっとその身を離し、彼の瞳を見据えながらゆっくりと口を開くのだった、
「我はの、何時かそなたとの子が欲しいと思うて居る。じゃが我は神じゃ、人の遺伝子など持って居らん。じゃからと言うて令子のように、其方の父母から遺伝子を貰う訳にも行かんし、安易に世間の誰かの遺伝子をと言う訳にも行かぬ。じゃから我は今この瞬間も、見かけでは無く中味を、其方に相応しいと思う人の身体に作り替えつつ、それを表現する遺伝子を構築しようとして居るのじゃ…」
「そんなことを…」
祐二は驚きの余りそれ以上、言葉を口にすることが出来なかった。
「うむ、我はそうなれた暁に、身も心も其方を迎え入れようと思うて居るのよ…」
その言葉を聞いた祐二は、ただもう何の言葉も言うことが出来ないままに、強く強く雨子様のことを抱きしめた。
そして雨子様もまたそれに応えるべく、思いを込めて祐二のことを抱きしめるのだった。
祐二はこの時、心底雨子様の深い思いに感動しつつ、何としてもこの神、いいや一人の女性、雨子様を心から大切にしていこうと誓うのだった。
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