「その後」
ユウの呼び名がユーになっていたのでいくつか前の方のものを修正しました(^^ゞ
さてその後は何事も無く、(全く何も無かった訳では無いのだが)無事個々に別れを告げ合った後、吉村家を去る者達は車に乗り込んだ。
宇気田神社の車は、既に直ぐ近くに居たようで、どうやら皆が挨拶し終えるまで待っていたようなのだ。
窓から和香様がひょいと顔を出して、最後の言葉を残していく。
「今日はおおきに皆さん、あゆみちゃんのことは責任持って送っていくから、安心してや祐二君」
そんなことを大きな声で言って居る和香様の服を、車内で七瀬が必死になって引っ張っている。相変わらずの騒々しさに、思わず祐二が苦笑していると、しずしずと車が出発し、吉村家から遠ざかっていった。
それを残された四人で見送り、さあ家に戻ろうかと思ったら、出て行ったばかりの車が戻ってきた。
「何事?」
と雨子様が呆れていると、停車した車から七瀬が飛び降りてきた。
「ユウ~~!」
見るといつ頃から居たのか、ユウが祐二の肩口に留まっている。
「も~~、勝手にうろちょろするんじゃ無いの!それじゃあ失礼します!」
そう言いながら改めて乗車した七瀬を載せて、車は再度帰路につくのだった。
「成るほど、あゆみが車内で騒いでいたのはそう言うことじゃったのか…」
事の真相に気がついた雨子様は、思わず失笑するのだった。
短い笑いを収めた雨子様は、その後ひょいっと節子に向かって頭を下げる。
「節子よ、此度は色々と迷惑を掛けたの」
だが節子はそんな雨子様の言葉に、軽く頭を横に振りながら答える。
「何言っているの、こんなのはお互い様よ。あなた達は言ってくれないみたいだけれども、どうやら見えないところで、色々と気を遣って下さって居るみたいだしね?」
そこで改めて雨子様は、節子自身には加護の有無など見え無いことを思い出す。
で有りながらのこの言葉、つくづく勘の良い節子に、感心することしきりの雨子様なのだった。
「ふぁ~~~」
と、傍らで声がするので見ると、令子が大きな欠伸をしていた。
その身はほぼ分霊で、ある意味神にも近い身体を持ちながらも、設定的にはほとんど子供でもあるので、どうやら夜には弱いらしい。
そんな令子に節子が言う。
「私もさすがに今日は少し疲れちゃったかしら。令子ちゃん、一緒にお風呂に入りましょう。拓也さんは出張で帰ってこないから、ガールズトークしながら寝るの付き合いなさいな」
その様なことを言いながら、ちらりと祐二と雨子様を見た後、令子の手を引いて屋内へと戻っていく。
「やれやれ、節子は一体どのようなことを話すつもりなのやら」
見送る雨子様は、半分ぼやくように言いながら笑う。
そんな雨子様に祐二が尋ねる。
「ねえ雨子さん。今まであんまり考えてこなかったのだけれども、もしかしてユウなんかも神力が使えたりするの?」
すると雨子様は、ぽりぽりと頭を掻きながら言う。
「まあそう思うのも無理からぬところじゃよな?元よりユウは、最初はあゆみの愛玩物としての始まりじゃからな」
そう言うと雨子様は、うんと伸びをしながら夜空を見上げた。
生憎と此所の空は、旅先のものほど星が良く見えない。
「と言うことで当初はその様な能力を付けること、全く考えておらなんだ。じゃが疑似宝珠としての役割を得たところ辺りから、万が一を考えていくつかの力を使えるようにあちこち変更を加えて居る」
祐二はなるほどと頷く。
「ああ、そう言うところ辺りからスタートしていたのかぁ」
「うむ、ただまあそれでも初めの頃は、もっぱらユウ自身を守るべき力に傾注して居ったのじゃがな。じゃが令子と節子のあの事件以降、大幅に能力アップして居る。それだけの力の余裕は持って居ったからの」
そう言う雨子様に祐二は興味津々に聞いた。
「それでユウは一体どんな力が使えるの?」
祐二の顔に好奇心の片鱗を捉えると、雨子様はにっと笑った。
「聞きたいか?」
「当然!」
「くふふ、こう言ったことに対する好奇心はまこと旺盛じゃの?」
そんな事を言って来る雨子様に、祐二は少しいたずら心を湧かせた。
「何せ雨子様のすることだからね?」
「むぐぅ」
祐二の思惑などお見通しなのだが、それでも思わず言葉に詰まってしまう雨子様。
「全くもって祐二のくせに」
そんなことを小声で小さく呟くのだが、これは祐二には届いていない。
「まあ良いわ、それでユウの扱える力の種類についてなのじゃが、ほぼ人間並みの力を発揮出来るくらいの気と、神力については主に防御に関するものじゃな」
そこで祐二は昔からの格言を思い起こしながら聞く。
「と言うことはユウには攻撃の手段は与えて居ないのですか?」
「それなのじゃ…」
そう言うと雨子様は悩ましそうな表情をする。
「令子や祐二であれば、その場面場面について色々と良く考えるであろうから、ある意味いずれ全ての力を解放させても良いかと考えて居る。じゃがな、ユウや小雨、ことユウについてはあの感じであろ?良く良く考えて力を与えぬことにはの…」
雨子様の意見については、祐二もなるほどなと考えてしまう。
勿論彼らが悪意を持って力を解放するなどとは、これっぱかしも思って居ない。
だが彼らの現在の知力を考えると、誤ってその場に不相応の力を使ってしまうと言うことが、十分に懸念されるのだった。
「なるほどなあ、守る力はともかく、相手を攻撃するための力となると、さすがに色々と考えてしまいますね?」
渋い表情をしながらそう答える祐二に、雨子様は思わずくすりと笑いを漏らす。
「であろ?あやつらを信頼していない訳では無いのじゃが…」
そうやって悩む雨子様のことを見つめながら、祐二もまたあれやこれやと考えてみるのだった。そして独り言を言うように言葉を零す。
「これが人間相手ならスタングレネードやテーザーと言ったところかなあ?」
と、その二つの単語を小耳に挟んだ雨子様が、きょとんとしながら問う。
「なんじゃそれは?スタングレネード?テーザー?」
祐二はそうやって問うてくる雨子様に、笑いながら答える。
「成るほど、好奇心の虫の雨子さんでも、未だ未だこのカテゴリーにまでは届いていなかったという訳なんですね?」
雨子様はそう言う祐二に対して少し頬を膨らませながら言う。
「一体何を言うて居るのじゃ祐二は?いかな我でもこの世の全てを知る訳には行かぬし、第一にその様なことを望むには、インターネットとやらの情報帯域が狭すぎるのじゃ。それにの…」
そう言うと雨子様は、ぐいっと顔を祐二の方に近寄せる。
「何でもかんでも速度を上げて取り込めば良いというものでは無いのじゃ。そなたら人間の思考速度に合わせて取り込まねば、取りこぼしてしまうようなアナログな意味合いの情報も山のようにある。本当にこれは厄介での…」
そう言うと雨子様は大きな溜息を吐く。
「だが大変である一方、こやつら、大変で有れば有るほど面白いと来たものじゃからなあ…」
この台詞、ほとんど祐二に聞かせるでも無く、ぶつぶつとぼやくように言っている。
「それで?早う祐二の言うて居るものの意味を説明せぬか?」
いきなり矛先をこちらに向けてくるものだから、思わず泡を食う祐二。
「うへぇ、なんだよいきなり、まあ良いけど」
そう言って祐二もまたぼやきながら説明を始めるのだった。
「それでスタングレネードって言うのは、警察や軍隊なんかが使う非致死性の手榴弾なんだよ。強力な閃光や、大きな音を出すことで、相手の行動を制限するんだ。一応恒久的な傷害は与えにくいようには出来て居るらしいけれども、それでも直撃すると怪しいらしいね」
祐二の説明に感心しながら雨子様が言う。
「成るほどの、そうやって殺さずに相手を無力化するのじゃな…。しかも周りに対する影響も少ないと。それでテーザーとは?」
問うてくる雨子様に、祐二は続けて説明を行う。
「これもまた、警察や軍隊が使うみたいなんだけれど、導線の付いた針を相手の身体に飛ばし、繋がった状態で高い電圧の電気を流して、相手の身体の麻痺を狙うらしいね」
雨子様は説明する祐二のことをしげしげと見つめながら言う。
「そなたら人間は、本当になんとも珍妙なことを色々と思いつくものじゃな?しかし相手を殺さずに無力化するというのは良い案で有るように思うの」
「そうそう、そう言えば未だ他にもあるなあ」
「何?未だ他にもあるのかや?」
此所に来て雨子様の表情はもう呆れ果てている。
「僕が知っているのはあと二つくらいだよ」
祐二はそう言いながら苦笑する。
「言うて見るが良い」
雨子様はもうほとんど諦めたかのようにそう言って促す。
「一つは催涙弾。これはガスを発生させて、相手の目や鼻を刺激して目を開けたり、呼吸するのが難しくなる物なんだ」
「それはまたなんともえげつの無いものを」
「それから今一つのは、最近出来たらしいのだけれども音響兵器?」
「音響?」
「指向性のある強い音波をぶつけることで、相手に不快感を与え、行動不能にするらしいよ。でもこれもほどほどの強度にしないと後遺症が残るんだとか」
「ふぅむ、しかし全くそなたら人類の創意工夫には驚くばかりじゃの。じゃが良い参考に成った。また少しばかり考えてみることにする」
そう言うとちょっと嬉しそうに笑みを浮かべる雨子様なのだった。
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