「変化」
今日は所用があって出かけてしまったので、その分大分短めです
さて、節子の心づくしの料理を堪能し、幸せそうな表情で今は静かに食後のお茶を頂いている神様方。
そんな中、和香様が七瀬に言う。
「あゆみちゃん、返りはうちらの車で家まで送るさかいに、乗っていきな?」
七瀬のことは自身で送っていこうと思って居ただけに、思わぬ和香様の申し出に、有りがたいなと思う祐二なのだが、七瀬はと言うと少し寂しそうな表情をしている。
それに気がついた雨子様が、和香様に何事か言おうと口を開き掛けるのだが、それは七瀬自身によって阻まれるのだった。
「あゆみ?」
そう言う雨子様の手を取りながら七瀬は言う。
「良いのよ雨子さん」
「しかし…」
未だ釈然としない感じの雨子様に七瀬が抱きついて言う。
「本当に優しいんだから雨子さんは。まあそんな雨子さんだからこそ…ね?」
周りの者にはこの七瀬の最後の言葉の「ね?」の意味がさっぱり分からない。
しかし雨子さんはと言うと、十二分にその意味を解しているのだった。
雨子様と七瀬がそんなことを繰り広げている間に、神様方は入れ替わり立ち替わり、節子に馳走になった旨のお礼を述べられている。
当たり前の人が見ていても何も感じられないのだが、雨子様の目から一目瞭然。神様方が心からの礼を言う度に、小さな加護が次から次へと、自然に節子に重ね掛けされ、蓄積されていくのだ。
「さすがにあれはやり過ぎじゃ」
そう言う雨子様に、令子が首を傾げながら聞く。
「何がやり過ぎなの?」
「なんじゃ令子、其方にも見えるはずなのじゃが…」
そう言いながら首を傾けつつ、令子のことをしげしげと見つめる雨子様。やがてにぽんと膝を打つと言う。
「成る程そう言うことかや」
そう言うと、和香様の傍らについている小和香様に向かって手招きをする。
「何で御座いますでしょう、雨子様?」
そう言う小和香に雨子様が言う。
「小和香、其方、悪意に曝された令子のことを心配して、何度か加護の呪を掛けて居るであろう?」
「は、はい…」
小和香様はそのことについて、雨子様に何か言われるのかと、少し心配そうな顔になる。
だがそのことを感じ取ったのか、雨子様は笑いながら言う。
「いや小和香、そのことは良いのじゃ。言うても小さくて繊細な呪を少しずつ丁寧に重ね掛けして居るだけのこと。敢えて目くじらを立てるようなことでも無いからの。むしろ令子のことを考えれば感謝の言葉を述べねば成らん」
そこまで言うと雨子様は令子の目を指差した。
「ただ一つ問題がと言うか、問題と言うほどでも無いのじゃが、こやつの目に掛かって居る呪についてじゃ。少し改善して欲しいことがあっての、我が勝手にやっても良いのじゃが、折角施術者が側に居ることでもあるし、任せた方が自然に変更出来るかと思うのじゃ」
一体何を言われるのだろうと、相も変わらず心配していた小和香様だったが、内心ほっとしながら問う。
「それで雨子様、私はどうしたらよろしいのでしょうか?」
そう言う分かりの良い小和香様の様子に、雨子様はにっこりと満面の笑みを浮かべる。
「おそらくは事件の後、妙な物が見えることによって、令子の心に傷が残ることを恐れて掛けたのじゃろうな。それでなのじゃが今も令子の目に有る呪、本人の意思で入り切り出来るようにしてやっては貰えぬか?」
「成る程そう言うことで御座いますか」
そう言う小和香様に令子が言う。
「もしかして小和香さん、私が怖いものを見ないで済むよう、気をつけてくれていたのね?」
「はい、例の事件から以降、暫く不安定のように見えていましたので」
「そっかあ、ありがとうね」
令子は礼を言いながら小和香様の手をぎゅうっと握り締める。
小和香様はそれが思いの外嬉しかったのか、照れ臭そうに顔を染めながら、うんうんと頷いている。
「確かにあの頃はそうだったかも知れない。でも今ならもう大丈夫よ?こうして神様の知り合いも一杯増えているし、以前よりは少しばかり不思議なことに、耐性が増えた?」
令子のその言葉に雨子様が失笑する。
「令子よ、そこで何故に最後が疑問形になって居るのじゃ?」
雨子様にそう言われた令子は、少し不満そうに口元を曲げながら言う。
「だってね雨子さん、色々な不可思議なことに巡り会ってきたと思うから、主にそう言う方面には平気になった、それは間違い無いの。でもね、お化けや、おどろおどろしい系は駄目。なんて言うか本質的に耐えられないと思う」
そう言う令子のことを呆れた目つきで見つめる雨子様。
「全く、嘗て幽霊と称される者の口から出た言葉とは思えんの?」
雨子様の言葉に思わず舌をペロリと出してしまう令子なのだった。
出かけて疲れたせいか頭が回らない。
こう言う時は、早く寝るに限ります(^^ゞ
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