「永生きの秘訣」
昨日分、女性人数のカウントにおかしいところがあったので修正しました
さて、わいわいと賑やかな中に時間が経ち、七瀨は節子に暇を告げる。
「あ~楽しかった。ところでおばさま、私そろそろ失礼しますね?」
そう言う七瀨に、節子はちゃっかりウインクを仕掛けながら言う。
「さっきね、聡美に連絡とったんだけど遅くなるんだって。だからこのまま家で食べてから帰りなさい」
「ええ?でもそんな…」
申し訳なさそうに渋る七瀨。周りを見渡し、この人数ではと思うのだが、節子は一笑に付す。
「これだけの人数が居たら、一人増えるも二人増えるも同じことよ!ね?ユウちゃん?」
そう言うと節子は、いつの間に戻ってきていたのか、七瀨の肩に乗って寛いでいるユウの顎をそっと擽る。
ユウはそれが心地好いのか、きゅうきゅう言いながら嬉しそうに言う。
「僕おばさんのご飯好き~~」
「ユウ!ったらもう~~」
そうやってユウのことを叱るのだが、節子の顔を見るに、既に決定事項になっていることを知る。
雨子様が居候を始めた最近でこそ、少し足が遠のいていたが、それまでは実に足繁くこの家に通っていた。だからこそ節子のことはもしかすると、祐二より良く知っているかも知れなかった。
「それじゃあおばさま、お世話になりますね?」
「はい!お世話しますぅ」
節子が明るくそう言うと、二人は声を揃えて笑った。
そして一頻り笑うと節子は、未だ賑やかに歓談している神様方に声を掛ける。
「和香様、その他神様方、帰られる前に御夕飯を食べていって下さいね?」
その言葉を聞いた和香様、思わず雨子様と顔を見合わせる。
「節子さんあないな事言ってはるけど、ええんやろか?」
問われた雨子様は、ちらりと節子の方に目をやる。目敏くその視線を見つけた節子は微かに頷いて見せる。
「うむ、これは節子の方でも、もうその心づもりのようじゃ、遠慮せずに食べていくが良い」
雨子様にそう言われた和香様は、小和香様に向かうとこくりと頷いて見せるのだった。
そんな和香様からの意を受けた小和香様は、小さなポーチから携帯をとりだした。そしてそれを片手に部屋から廊下へと出て行く。やがて少しばかりの時間が経ったところで、戻ってきて和香様に告げるのだった。
「迎えの者へ連絡したところ、既に神社を立っているとのことなのですが、どこかで適当に時間を潰しておくからごゆっくりだそうです」
その返事を聞いた和香様は笑みを浮かべる。
「何やそないなこと言うとるんや、なかなかに気が利いとるね。そしたらまた後で連絡しよか?」
「はい」
そんな二柱のことを見ていた雨子様は、節子に向けてにっこりと笑顔を送る。
すると節子もまた、笑みを浮かべながら席を立ち、キッチンへと向かうのだった。
何も言わずにその後を追う七瀨と雨子様。
令子も後を追おうとするのだが、七瀨からユウを預けられ、面倒を見てくれと言われたのでその場に残ることにする。
さて、節子の言葉により、神様方は有り難く夕飯をご馳走になることにしたのだが、やはりいきなりなことなので、少しでも手伝えることは無いかと奥を覗いてみた小和香様。
直ぐに首を振り振り戻ってくるのだった。
「どないしたん小和香、何をそんなに首を振っとるん?」
すると小和香様、キッチンの方を指差しながら言う。
「私も少しでも手伝えることが有ればと思って向かったのですが、中を覗いたら、あれはもう絶対に無理って思ってしまいました」
「無理って何がそないに無理やったん?」
不思議そうに問う和香様に小和香様は言う。
「百聞は一見にしかずだと思います、和香様」
そう言われて成るほどと思ってキッチンに向かう和香様、数分と経たない内に戻ってくる。
「あかん、あれはあかんは。あんな中に手伝いに入ろう思たら、事前に訓練積まんと絶対に無理や」
「で御座いますでしょう?和香様」
そう言う小和香様にうんうんと相槌を打つ和香様。
それを見ていた令子が吹き出しながら言う。
「料理の手伝いをするのに言う台詞とは思えないわね?」
令子のその台詞に小和香様が頬を膨らませる。
「だって令子さん、あれを見たらいくら何でも…」
そんな小和香様の頬を、そっと指で突いて凹ませながら令子が言う。
「知ってるわよ。私も何度か挑戦しようと思ったもの。何でも元々は、節子さんとあゆみちゃんの間でのコンビネーションだったらしいのよ?でもそこに雨子さんが入って、いよいよ隙が無くなってしまったって、祐二君が零していたわ」
それを聞きながら和香様が呆れたように言う。
「それにしてもなんとまあアクロバチックに…」
「この家のキッチン、決して狭い訳じゃあないと思うの。でも三人があの速度で動くとねぇ」
令子はそう言いながら苦笑するのだった。
「でも何だか見ていると妙に心地好いというか…」
そう言う小和香様にうんうんと頷きながら同意する令子。
「あ~~、それ分かる分かる。目が離せないのよね?」
「ほんまやなあ、そない言われたらなんぼでも見てられるなあ」
そうやって二柱と一人が、ダイニングの扉を通じ、奥のキッチンを面白そうに見つめていると、そこへ卯華姫様と環乃葉様もやって来た。
「何を見てはるのかと思うてましたら、成る程ねえ。あれは見とれてしまう思います」
とは卯華姫様、傍らでは環乃葉様が「おおっ」とか「うわっ」とか歓声を上げている。
一通りの料理が終わりつつあった頃、ふとその出入り口の方を見た雨子様は、鈴なりになって中のことを覗いている神々のことを見つけて呆れて言う。
「何をやって居るのじゃそなたらは?」
すると、丸で悪戯を見つかった子供のように、皆で揃ってきゃあきゃあ言いながら、蜘蛛の子を散らすようにその場を去って行くのだった。
そろそろご飯時かなと思って階下に降りて来た祐二が、たまたまその有様を見るのだが、ふと思うので有った。これこそが神様方が倦むこと無く、永い時を生きて行かれる秘訣なのかなと。
桜の季節、色々インスピレーションが刺激されてしまいますねえ
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