「七福神」
久々定時出稿です
ちょっと嬉しいかも
女性の人数カウントにミスがあったので、一部修正しました
さて、多くの人が経験したことが有ると思うが、笑いというのはインフルエンザ以上に伝染しやすいところがある。
最初は環乃葉様と卯華姫様の二柱だけが笑い転げていたが、やがてにその笑いは徐々に神様方に伝染していく。そして時が経つ内にそれはもう何が何やら状態。
皆が揃って笑っていること、それ自体が可笑しくて笑い始めてしまっている始末。
ほぼそこに居合わせている、神も人も女性達の全てが涙を流しながら、お腹を抱えて笑っているのだった。
そしてその場でただ一人の男性で有る祐二のみが、この異様な光景を見ながら、呆れ返っている。
と、そこへ来客の到来を知らせるチャイムが鳴り響く。
至極当たり前のこととして祐二が玄関へと向かうのだが、そこには七瀨がその姿を現していた。
「こんにちは、ところでどうしたのこの騒ぎ?」
玄関の扉を開けた早々に聞こえてくる、喧噪とも言えるような笑い声に、七瀨も些か呆れ顔。そんな彼女に苦笑しながら祐二が言う。
「いらっしゃい、この騒ぎか?まあ見てくれよ」
そう言うと祐二は七瀨を誘い、リビングの方へと連れて行こうとする。
「あ、ちょっと待って、はいこれ」
そう言って七瀨は、何やら祐二に包みを渡してくる。
「何これ?」
割と持ち重りのするそれを抱えて祐二が聞くと、七瀨はにっこり笑みを浮かべながら言う。
「昨日まで二泊三日で出雲の方に行っていたの。それであっちのお蕎麦美味しいじゃない?この家の人も好きだなって思い出してお土産」
「わあ、それは嬉しいな。でもうちのお土産はちくわのセットだったのに、これじゃあ割に合わないんじゃ無い?」
その言葉に苦笑する七瀨。
「そんなこと無いわよ。あれ、とても美味しかったもの。特に母さん気に入っちゃって、ビールの当てに一気に食べ切っちゃったわよ」
「そうなんだ。旅行は楽しかった?」
「うん、とても。温泉は良かったし、お蕎麦やその他のお料理も美味しかったよ。後そうそう…」
そう言うと七瀨は、肩口に乗っていたユウをそっと捕まえたかと思うと、胸元に構えた。
「この子がさ、出雲大社に行ったら大はしゃぎしちゃって…」
「へ~~、それはまた何で?」
そう言いながら祐二は、ユウの頭を優しく撫でる。それが気持ちよかったのかユウは身をくねらせながらきゅうきゅう言っている。
「ほら、ユウ、自分で話しなさいよ?」
そう言って七瀨はユウに話すことを促した。
するとユウは、祐二に話すことが嬉しいのか、楽しそうにしながら話し始めるのだった。
「あのね、僕ね、神社に行ったら凄いんだよ」
「一体何が凄いんだい?」
たどたどしいユウのお喋りに、祐二は優しく問い返して上げる。
「大きな綱がぶら下がっている神社…」
「出雲大社のことね」
素早く七瀨が補足してくれる。
「あそこに行ったら、もの凄く沢山出会ったんだよ」
「何に出逢ったんだい?」
「いろんなのに一杯一杯」
ユウの言う言葉の意味が、何のことやら良く分からないので、目顔で七瀨に問うが、七瀨も頭を横に振るばかり。
「私にはユウの見ていた物が見えないんだもの、それが何だったのか分からないのよ。ここに来れば分かるかと思ったのだけれども…」
と、祐二の背後から声が掛かった。
「恐らくそれは小者達であろ。あの神社には殊の外小者が多いでな」
その言葉は雨子様の発した物だった。祐二が部屋に戻ってこないのを心配して、様子を見に来ていたのだった。
「久しぶりじゃのあゆみ」
「ん、元気だった雨子さん?」
「うむ、最近遊びに来ぬから少し心配して居ったのじゃ」
そう言う雨子様に、七瀨は一瞬祐二に視線を走らせながら言う。
「それは何と言うか、ま、そのね?」
そう言う七瀨のことをぎゅうっと抱きしめると雨子様が言う。
「それでもじゃ!」
きつくきつく抱きしめる雨子様のことを、自らも抱きしめながらその耳元でそっと囁く。
「分かった、分かったから、雨子さん…」
雨子様にとって、今の世で出来た初めての女友達なだけに、ある意味格別な思いがあるのだった。そしてそれがかつての恋のライバルであったとしても、些かもその格別さは陰ることは無いのだった。
安心したのか、そっと身体を離す雨子様に、七瀨が聞く。
「それで一体あれは何なのよ?」
そう言いながら七瀨はリビングの方を指差す。相変わらずそこからは怒濤のような笑い声が聞こえてくる。
対して雨子様は苦笑しながら言う。
「まあ百聞は一見にしかずじゃ、来やれあゆみ」
そう言うと歩を従えてリビングへと向かう雨子様。
そしてあゆみの前で大きく扉を開け放つのだが、格段に大きな音となって押し寄せてくる笑い声。
最初その余りの圧?に、後ずさり仕掛けたあゆみだったが、直ぐに慣れて中を見渡す。
そしてその第一声とは。
「ふ、増えてる?」
それを聞いた雨子様、思わずあゆみの前に回り込むと、こてんと頭を倒しながら言う。
「あゆみ、其方一体何を言うて居るのじゃ?」
雨子様のその問いに、あゆみは部屋の中を指差しながら言う。
「だって、だってだよ雨子さん。此処また知らない女の人が増えているんだもの」
そう言いながらちらちらと祐二の方を見る。その後、雨子様の耳にそっと口元を寄せながら言う。
「だ、大丈夫なの?こんなに女の人ばかり増えて?」
そう言いつつまた祐二の方をちら見する。
どうやらこの時点で雨子様にも、あゆみが何を心配しているのか分かったらしい。
「くふふ、大丈夫じゃよあゆみ。増えて居るのは客として逗留して居る神と、その分霊じゃ。此度は彼の分霊を生み出す為にこの家に来て居る。間もなく帰らねばならぬ故、何も心配要らぬぞ?」
そう言うと雨子様はあゆみの手を引き、卯華姫様達のところに引っ張っていく。
「卯華姫よ、この女の子が我の女友達一号のあゆみじゃ。あゆみ、こやつは卯華姫と言う。そなたら人の神話上では和香の姪に当たるようじゃ…そしてその第一分霊で有るの環乃葉。今回はこやつを生み出す為に此処に集うたのじゃ」
そうやって雨子様に紹介されたあゆみは、早速に二柱に頭を下げて挨拶をする。
「初めまして、卯華姫様、環乃葉様。七瀨あゆみと申します」
するとそんなあゆみの背中に負ぶさるようにして和香様がやって来た。
「卯華姫ちゃん、環乃葉ちゃん、この子はほんまにええ子やねん。贔屓にしたってな?」
仲良くなっているとは言え大神和香、七瀨は困惑しつつも嬉しくて自然に笑みが浮かんでくる。
「和香様お久しぶりです。小和香さんも久しぶり!」
そこへ更に節子が声を掛けてくる。
「あゆみちゃん、お蕎麦ありがとうね」
「いえ、こちらこそ先達ては、お土産ありがとう御座いました」
更にそこへ令子も押し寄せてくる。
「あゆみちゃん、お久しぶり」
そうやって一通り互いに挨拶を交わし、好き勝手に言葉を交わすうちに、もしその場に波長という物があるのなら、恐らくそれがすっと合っていったのだろう。
先程までにもまして賑やかにわいわいと話をしながら、時折どっと笑いさざめくのだった。
「一、二、三、…七」
そう数えているのは祐二。
「正に七福神、実際には人も混じっているし、人数的には多いのだけれども。七瀨は神様になる?とは聞かれてないからまあ良いか?とにかく笑う門には福来たると言うことで良いだろ…」
そう言いながら何とも言えない表情の祐二の肩には、ユウがちょこなんと乗っている。
「これ全部女の人なんですよね?」
ユウがほんの少し呆れ返ったように言う。
「うん…そうなんだよな」
思わず苦笑しながら祐二も言う。
先程までの集団に更に一人の女性が加わったことで、それまでにも増して笑い声は大きく、賑やかに、どよめくように響く。
さすがにもう居たたまれなくなった祐二とユウは、逃げるようにして祐二の部屋へと引き上げていくのだった。
またもまたまた、いいねありがとうございます^^
さて、皆さんは普段ちゃんと笑っておられますか?
笑う門には福来たる、これは大切なことだなって
筆者は思っています・・・
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そしてそれらをきっかけに少しでも多くの方に物語りの存在を知って頂き
楽しんでもらえたらなと思っております
そう願っています^^




