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天露の神  作者: ライトさん
461/676

「勉強会二」

 全くもって遅くなってしまいました。

説明回とは称したものの、あちこち齟齬が生じたり、巧くつじつまが合わなかったりと、

書き直しに次ぐ書き直し。

すっかりと遅くなってしまいました

申し訳ありません


「次に気のエネルギーについて話を進めるが、この気と言うものは、精から変換されたものと成る。少しばかりエネルギーの密度が高く、より高位に位置する。そして容易に物理エネルギーに変換し得ると言う特色を持って居る」


「物理エネルギーに?」


 祐二がはっとした顔をしながら声を上げる。


「うむ」


 そう返事をする雨子様は、心なしか嬉しそうだ。


「だからこそ気を巧く使うように出来ると、容易に力強く身体を動かすことが出来たり、細かい動きを行うことが可能になったりするのですか?」


 雨子様の手がまた伸びて祐二の頭を撫でる。今日はもう撫でまくりだ!


「其方の言う通りじゃ、即ち気を巧く使うことが適えば、その肉体の能力を幾層倍にも格上げすることが出来るようになるのじゃ。だがこの気というエネルギーは残念ながら蓄えることが出来ぬ。故に変換して後、少しでも早いうちに使ってしまうか、他の形態のエネルギーに変化させぬことには、あっと言う間に消滅してしまう。まあ有り体に言うなら熱にじゃな」


 すると祐二は、その先を思って考えついたことが有り、雨子様に聞いてみる。


「ねえ待って雨子さん、と言うことはこの気というエネルギーは、もしかして精や神力と言ったエネルギーに相互に自在に変換可能なの?」


「その通りじゃな、そしてこの気というものが有ってこそ精というエネルギーは、我々の直接の命に繋がる、神力というエネルギーに変換していけるのじゃ」


「精↔気↔神力と言うことなのかぁ」


「そしていよいよ最後の神力の説明ということになるの」


 とうとう此所まで来たのかと、わくわくしながら雨子様のことを見つめる祐二。

余りに熱い視線で見つめるものだから、なんだか妙に胸の奥が熱くなってしまい、思わずどぎまぎしてしまう雨子様。


 しかし必死になって心を落ちつけ、何とか顔に出さないことに成功する。しかしそれも卯華姫様の表情を見るに、余り成功しているとは言い難いのかも知れない。


「神力、つまりしんと言うエネルギーは、その名の通り、神で有る我らそのもので有るとも言える。但し何の加工も施されて居らないものに意思はない。そして何と言うかの、そなたらの知って居る電気に、有りようが似て居るかも知れんの?」


「電気?」


「そう、電気じゃ。電気というエネルギーはきちんと入れ物を作れば容易に溜めることが出来るし、熱にも光にも動力とも成り居るし、論理回路を組めば思考させることも可能となる。我らにとって神力こそが正にそれに当たる。ただエネルギーの在り様としては遙かに上じゃの、凡そこの世に在る全ての事象に作用しうる力じゃ」


 そこまで聞いた祐二は、思い当たることがあって雨子様に聞いてみる。


「ねえ雨子さん、普段雨子さんがやっている呪を組って言うのは、もしかしてその神力の通る回路を作っているということなの?」


 それを聞いた雨子様は、どうしようも無い喜びを感じながら卯華姫様の方を向く。

すると卯華姫様もまた、大きな驚きの表情をしながら雨子様のことを見、うんうんと何度も何度も頷くのだった。


「ように辿り着いたものじゃ、正しく祐二の言う通りなのじゃ。で有ればこそ其方にとって、気をきちんと扱える様になることの大切さが、心に染みて分かるであろう。そしてその先にはいよいよ、神力を扱うことへの挑戦があるのじゃ」


「なるほどなあ~~」


 そう言いながら祐二は、頭の中で今まで聞いた話の内容を何度も反芻し、きちんとした知識として焼き付けられることを確認していく。


「ねえ雨子様、もしかして、だからこそ疑似分霊を作るのに、CPUが役立てられたりする訳なのですか?」


「全くもってその通りじゃ。尤も、異なるところが無いでは無い。だが足がかりにして組み上げるためには十二分に有用なのじゃ。本来我らの作る分霊の場合は、自身を構成する特殊な呪を複製しながら、用途に従った形に組み直していくのじゃが、これが非常に煩雑でな。しかもこれをやる間、我らはエネルギーも計算力も時間も、全て取られてしまい、何も出来なくなってしまうのじゃ。じゃが疑似分霊の製作という形にすれば、その多くを省略することが出来る様になる」


 成るほどと祐二は感心しながら、尚も雨子様に食らいつく。


「でもそれだと全く欠点が無いようにも見えるのですが、問題は無いのですか?」


 すると雨子様は少しばかり悩んだ挙げ句、祐二ならまあ良いかと思い、思い切ってそのことについて言及するのだった。


「これは大いなる秘密に属すべきことでも有るのじゃが、いずれ我が夫となるべき身であるならば聞かせることも必要であろう…。まあ有り体にその差を言うとすれば、真性の分霊は自らの力でどんどん進化し、強大化、更には高位の存在へと進化していくことが可能なのじゃが、疑似分霊の場合はそれが出来ぬ。それはあくまでCPUと言う部品を基底とするための限界がある為じゃ」


 そう言われた祐二は、身近な例としてニーのことを思い浮かべながら聞いた。


「じゃあ、例えばニーなんですが、あいつはもうこれ以上能力を増やしたりとか出来ないのですか?」


 その問いに雨子様は失笑しながら言う。


「祐二よ、其方そうは言うが、あやつは今でも恐ろしいほどに有能ぞ。が、それはさておき、進化の点に絞って話をすると、あやつを更に強力にしようと思うたなら、本人の同意を得た上で、空転状態にまで能力を制限せなばならん。その後、必要とされるだけの新たなCPUを増やし、更に呪を組み込むという作業をせねばならないだろうな」


「成るほど、自身では進化出来ずに、他者のと言うか、他の神様の手を借りなくては成らないということなのですね?」


「正にその通りじゃの。してこの知性を持たせるための呪と言うのが些か特殊での。それ以外の当たり前の呪で有れば、あやつら疑似分霊でも楽に操れる。しかしこの特殊な呪についてだけは、真正の神々、或いは正規の手順を踏んで付喪神から小者、そして分霊に成り上がったものにしか、扱うことが出来ぬのじゃ」


 雨子様のその説明を聞いていた祐二は、なるほどと感心しながら、更に色々なことを考えていた。


「そうかあ、なるほどなあ。でも特殊な呪?何で特殊なんだろう?片方は物質に依存するけれども、もう片方は依存していないみたいだから、もしかすると載せられている情報量が段違いなのかな?そしてそれが鍵になっている?」


 するとその祐二の、独り言のような言葉を聞いていた雨子様が、急に恐ろしいものを見たような顔をしながら問う。


「ゆ、祐二。其方一体何者なのじゃ?何故に我が与えた、たったあれだけの情報でそこに辿り着くのじゃ?」


 祐二としては逆に、雨子様にそんな顔をされたことの方がショックだった。


「雨子さん、やだな、そんな目で見ないでよ?どうしてそんな顔をするの?」


 祐二に言われてはっとする雨子様。特異とも思える能力で以て物事を計り、考えを推し進めることが出来るとは言え、祐二は祐二なのだ。そんな彼のことをどうして恐れることがあるのだろう?


「すまぬ祐二」


 そう言うと雨子様はぺこりと頭を下げた。


「少しばかり其方の推論能力に畏怖したのじゃ。お前の推測した事柄はほとんど真実で有ると言えよう。で有りながらそこに至る迄の様々な要素は、我の目から見てまだまだ穴だらけなのじゃ。にも拘わらずちゃんと正しき答えに行き着いて居る。じゃからこそ心底驚いてしもうたのじゃ、その能力にの。誓って其方自身を恐れた訳では無いのじゃ、許せ」


 そう言うと雨子様は、祐二の所に行ってその身を抱きしめた。

そして確認する、この温もりは祐二のもので有って他の誰のものでも無いと。


 抱擁によって十分に満足したのか、ほっとした表情に成った雨子様が、元の位置に戻ったところを捉えて祐二は聞いた。


「ところでさ、雨子さん。これまでの話を聞いていて思ったんだけど、もしかしてユウなら、自分で進化可能なの?」


「それはあやつが元々付喪神であったからと言う意味かや?」


「うん、そう…」


 だが雨子様はゆっくりと頭を横に振るのだった。


「あやつがもうちっと自分で進化して、我の小者となるような状態になってからの処置であれば、或いは進化可能な分霊に成れたかも知れぬが、あの段階では駄目じゃの」


「そっかあ、小雨はそれこそ大本の段階から作られたから駄目だろうし、だめかあ」


 そう言いながら少し肩を落としている祐二に、雨子様は苦笑してしまう。


「祐二よ、其方何を肩入れして居るのじゃ?」


「いや、別に肩入れしている訳じゃ無いのだけれどもね…」


「本人達が進化を望めばいくらでも手助けしてやるつもりじゃ、あくまで当人達が望めばなのじゃがな」


 そこまで言うと雨子様は少し思案し、その後口を開く。


「同様の仕掛けを行った中では唯一令子だけが、もうちっとの後押しが必要に成るとは言うものの、少しばかりの山を越えさえすれば、後は自己進化していくことが可能であろうよ」


「それはどう言う違いによってそう成るの?」


 純粋な好奇心によって祐二は尋ねた。


「それはじゃな、あやつが元々残留思念という形で、…これはある意味、付喪神の如く巧く精を使った結果じゃな…小者と同等の状態にまで、己という存在を維持し続けて居ったところにあるじゃろうな」


「そうなんだ」


「うむ、なのであやつが望むのであれば、物理的部品では無く、神力で作り上げた呪を部品として追加装備することで、分霊化、更にその先にはいずれ神に成ることも、可能かと思うて居るよ」


「うおっ!そうなの?」

  

 驚いた祐二が思わず、声を大きくしてしまうと、ぶすっとした声で雨子様が言う。


「何じゃ、嬉しそうじゃの?」


 ちょっとむくれる雨子様。祐二にはその理由が分かっていないし、その前に剥れていることにすら気がついていない。


 さすがに見かねた卯華姫様が祐二に言う。


「なあ祐二君?なんぼなんでも好きな男の子に、他の女の子のことでそないに喜ばれたら、雨子ちゃんかて気の毒と違いませんか?」


 卯華姫様のその言葉を聞いた祐二は、漸く雨子様の台詞の意味を理解する。


「いや別に他意が有って喜んだんじゃ無いんだよ。僕だけじゃ無くって、同じ人間に神様に成れる人が居るって言う、仲間感?みたいなものが有って、ちょっと嬉しかった、それだけなんだよ」


 懸命に言い分ける祐二。

それを聞いた雨子様、ひょいっと片眉を上げるが、その後やれやれと頭を振ると言う。


「まあ、そう言うことにしておいてやるの…」


 だが雨子様は思うのだ、祐二の方からアプローチすることは無いとは言うものの、実のところ、祐二のことを好いている者がこれで結構多いのだと。そして指折り数えてみる。一柱、二柱、三人、四人?思わず大きな溜息をついてしまう雨子様なのだった。





遅い時間にお疲れ様であります。


いいね大歓迎!


この下にある☆による評価も一杯下さいませ

ブックマークもどうかよろしくお願いします

そしてそれらをきっかけに少しでも多くの方に物語りの存在を知って頂き

楽しんでもらえたらなと思っております


そう願っています^^

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