その名はハヤト
文中でもありますが、少し格好良すぎかな?ハヤトという名前…
楽しみにしていたイースタの通知が入って、子猫につけられた名前が分かったのはもうあと少しで寝るような時間だった。
「雨子様、イースタの通知が入っているから、きっと子猫のだと思いますよ?」
精を供給するという必要性から雨子様は僕の部屋に布団を敷いて寝ることになっている。雨子様は既に横になっていて、そろそろ明かりを消そうかなと言うところだった。
むくりと起き上がると僕のところにやってくる。
「少し向こうに寄るが良い」
「って雨子様?」
僕も既に就寝体制に入っていたので、ベッド上でタオルケットにくるまっている。
そのベッドの上にもそもそと雨子様が上がり込んでくる。
「いや雨子様、そりゃまずいって。神様って言ったって女の子なんですから!」
「確かにそうじゃの、我の今のこの体は女のものじゃ。それでどこがまずいというのじゃ?」
「あ~…」
もうそのまま寝ていられなかったので僕はベッドから転がり落ちた。
そして直に床に座りながら携帯をいじっていると、ベッドの上からひょいと頭を出して覗き込んでくる。
「はぁ…」
僕はため息をつきながらイースタのサイトを開いた。
「あ、これこれ。間違いないみたい」
携帯の画面にはごろりと転がっている子猫の姿と、伏せられた色紙のような紙が見えている。
そして効果音のような音が流れると、伏せられていた紙が起こされ、そこに書いてある名前が明らかになった。
『ハヤト』
そこにはそう書かれていた。
「ハヤトかあ、何だか勇ましいというか格好の良い名前だなあ」
「うぅ、確かにの。ふにゃふにゃして居ったきゃつには些か勇まし過ぎる名前じゃの」
とそこへ七瀨からレインが入ってきた。
『見た?名前?』
「祐二よ、それはメールなのかえ?」
「いえこれはレインと言って、文字で簡易におしゃべりする為のアプリなんですが…」
「成る程、そう言う使い方も出来るのじゃな?携帯というのは電話として使う以外に本当にいろいろな使い方が出来るのじゃな」
その関心の仕方に今更とも思ったのだが、そういえば雨子様は携帯を持っていないのだった。
今のところはいつも僕と行動を共にしているから、困らないと言えば困らないのだけれども、さてこのままで良いのだろうか?そんな事を考えたが、今はその先に考えを及ぼすことはなかった。
イースタには名前の披露以外に、餌を食べるところや走り回っているところ、すやすやと眠っている姿などがアップされていた。
「しかしこうやって目の前に有るがもののように見ることが出来るとは、何とも不思議なもので有るものよの」
そう言いながら雨子様は何度も何度も繰り返し動画を見ていた。
そしてハートマークに触れることでいいねという意思表示になるのだと教えて上げると、早速次々とハートを点灯させていた。
「テレビなどで見ている分にはなんと言うのかの、丸で人ごとを見ているような気がするのじゃが、このイースタとか言うものはもちっと身近で、なんと言うのかの、生々しさのようなものもあるの」
どうやら雨子様は冨に気に入られたようだった。
しかし神様がパソコンや携帯をいじって、イースタやレインを使ってやりとりとかしているって何とも言えないものがあるよな。まあ、今の雨子様の姿形であればそうも無いのだけれども…。
どんなものにでも流行廃りというものがありますが、次はどんなものが流行っていくのでしょうね




