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天露の神  作者: ライトさん
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「すれ違い」


「それで自分、なんとかしたろう思て、態々ここまで来てくれたんや?」


 少しばかり堅い和香様の声が響く此処は、宇気田神社の奥の院の一室。


 机を挟んで向こう側には、なんだか居心地の悪そうな雨子様と、その背に隠れるようにして和香様の様子を伺っている小和香様が居る。


 そんな小和香様のことを見つめながら、僅かずつでは有るのだが苛立ちを募らせる和香様。しかし実を言うとその内容は大したものでは無い。


 要するに、何故に小和香は自分のことを頼らずに、雨子ちゃんのことを頼って居るのか?と言うことなのだった。


 ただ内容的にはそうであったとしても、実のところその苛立ちは怒りとして雨子様達に伝わっているようだった。


 お陰で色々気遣ってこの地に来ている雨子様なのだが、和香様が職務上のことにおいて機嫌を悪くしているのではと、誤解してしまっているのだ。


「和香の気持ちも分かるが、余りその様に怒るでない」


 何とかその場を収めようと、雨子様は和香様のことを宥めに掛かる

しかしそうやって雨子様が小和香様のことを庇おうとすればするほど、また少しずつ和香様の口元が歪んでいくのだった。


 勿論普段から尤も和香様の側に居る小和香様が、その変化に気がつかない訳が無い。

なのでもうこれ以上機嫌を損ねたくは無いと言う思いから、目前に居る雨子様の腕をそっと引きつつ言葉を発する。


「雨子様、雨子様。もう宜しいので御座います。今回は残念ながらご縁が無かったと言うことで納得して御座いますので…」


 健気にそう言う小和香様のことを、何とも気の毒そうに見つめる雨子様。


 と、ここに来てとうとう沸点に達してしまった和香様が声を上げてしまう。


「なんやのん小和香は、雨子様雨子様て。小和香にとってうちはそないに頼りにならへんのん?」


 口を尖らせ不機嫌そうに、そう言いながらぷりぷりと怒っている和香様。


 それを見ていた雨子様、何かがおかしいと思い始める。


「ん?少し待つのじゃ和香。其方小和香がきちんと職務を全うせぬと怒っておるのでは無いのかや?」


「そんなんちゃうわ!言うて小和香はいっつもめっちゃよう働いてくれとるんやし、休みの一つくらいなんぼでも呉れたるわ」


 それを聞いてえっと目を丸くするのは小和香様。はてと大きく首を傾げるのは雨子様なのだった。


「ならば和香は一体何を怒っておるのじゃ?」


 訳が分からなくなったと、単刀直入に聞いてしまう雨子様。


 だがそれに真っ正直に答えるのは、さすがに和香様も恥ずかしく思い、顔を赤らめつつも何か言おうとだけはする。


「それはやね、なんちゅうかその、何だ…」


 色々と言葉にしようとは思うのだが、どうにも上手く行かない。


 それから色々考え倦ねた結果、とうとう例え話をしようと思いついた和香様なのだった。


「仮にやね雨子ちゃん、祐二君が自分に頼らんと、うちにばかり頼ってきたらどう思うねん?」


「祐二がじゃと?あ?」


 そのシチュエーションを思い浮かべた直後に思い当たる雨子様。途端に顔を赤らめる。

その傍らで小和香様もまた理解に至り、同様に顔を赤くしつつも、物凄く嬉しそうな表情になる。


「和香様…」


 そう言いながらいそいそと和香様の側に歩み寄る小和香様。勿論和香様はそんな小和香様のことを嬉しそうに良々(よしよし)と受け入れて上げる。


 そんな二柱のことを見ながら、やれやれと溜息をつく雨子様。しかし大山鳴動鼠一匹と安心もするのだった。


 ともあれ一件落着、案ずるよりは産むが易と喜んだ雨子様。嬉々としている小和香様のことを見ながら先の日程を決めようとすると、和香様が途方に暮れていることに気がつくのだった。


「和香?」


 そう聞くと和香様は眉をへの字に曲げながら聞いてくる。


「大見得切って、休みくらいなんぼでも上げるとは言うたものの、日にちを気いたら余裕有らへんやん?どないしよう?」


「何じゃ和香は、予定も立たぬのに大口を叩いて居ったのかや?」


 と呆れ顔で言う雨子様。


「そんなん言うたかて、そんな直ぐのことやと思うてへんかったし、小和香が望むんやったら、休みの一つも上げたい言うのは、ほんまの気持ち何やで?」


 すっかり落ち込みながらそう言う和香様に、急な日程を作り上げたのはこちらと、申し訳ない気持ちになる雨子様。


「済まぬの和香…」


「ほんまやったらこないなことには成らへんねん、けど隗の事件以降、偉いようけ信心する人が増えてしもうてな。お陰でいっつもてんてこ舞いやねん」


 そこまで言うとしょんぼりと沈み込んでしまう和香様。


 だが、小和香様のスケジュール帳を見ていて、大凡こうなることを見越していた雨子様は言う。


「そこで和香に提案があるのじゃ?」


 そんな雨子様のことを藁にも縋る思いで見つめる和香様。


「神事とは言うても、お祓い等のものはさほど数が増えておる訳では無いのであろ?」


 そう問う雨子様にうんうんと頷く和香様。


「成るほどの、だとすると残るは神札の作製と同じように、呪物の生産が問題になって居るのでは無いのかえ?」


「そうそう、その通りなんよ。少し前までやったらそないに言われへんかったのに、昨今凄い頼まれるねん。相応の祈りの力を貰うてることもあって、断る訳にも行かへんからほんまに大変やねん」


「で有れば我が手伝うことも可能になる訳じゃな?」


 やれやれと言った感じでそう言う雨子様に、和香様は胸の前で手を合わせると大喜びしながら言う。


「何やて?ほんまにそうしてくれるん?嘘や無いやろな?」


「元より小和香の休みを捻出する為にも、そう提案するつもりじゃったのじゃ。尤も今回限りじゃぞ?我も熟さねば成らない今の生活があるでな」


「うんうん、それは当たり前やんか、やった~~!小和香、今の聞いたか?」


「はい、もの凄く嬉しいです!」


 二柱をして大喜びしているのを見ながら雨子様が言う。


「しかしのう和香よ、その様に力が不足して居るのであれば、そろそろ休眠して居る連中も起こしてやった方が良いのでは無いか?」


 するとまじめな顔に戻った和香様が言う。


「それは雨子ちゃんの言う通りなんやけどな、彼らは彼らで自分から望んでああなって、それで精の流入が途絶えたら消えることすら望んでるねんで?態々そないな連中のこと起こされへんやん?」


「ううっ!耳が痛いの?我もどちらかというとそちらの立場じゃったからの」


 和香様はそんな雨子様のことを苦笑しながら見つめ、更に言葉を継ぐ。


「寧ろ今望みを掛けとるのは、令子ちゃんや祐二君みたいな子らが神に成ってくれることや、加えて言うなら、小者達の中でなんぼかでも進化して、分霊になってくれへんかって言うようなことやなあ?」


「成るほどの。まだまだこれから考えねばならぬことが多そうじゃ」


 そう言う雨子様に和香様は早速に相談事を持ちかける。


「そうそう、それでやねんけど、雨子ちゃんは一体何時から手伝いに来てくれるん?良かったら今日からでも来て欲しいんやけど?」


 いきなり今日から来いとか言っている和香様の無理押しに、目を白黒させる雨子様。

だがそれだけ切迫していると言うことでも有るのだろう。雨子様も仕方無しと思うたのか、早速にその提案を了承するのだった。





 遅くなりました


 適うことであれば毎日定時アップをと思ってはいるのですが、

何分にも生ものwな物ですからなかなかに難しい

これからも何とか頑張るつもりではありますが、どうか生暖かい目で見てやって下さいませ

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