子猫猫の子
今日は少し短めです
ユウが世話役に立候補してくれたお陰で、何とかかろうじて子猫を育てることが可能になった。
最初の頃は組み敷かれてばかりでまともな世話になっていなかったのだが、ユウがミルクをくれる存在だと言うことが分かってからは、甘えることはあっても組み敷くことは無くなった。
ユウはそれが自慢らしく時折またふんぞり返っている。
世話を始めて二週間も経つと随分あちこち動き回るようになって、ともすれば社から飛び出そうともしていた。
外は危ないと言うことでユウが体を張って止めているのだが、果たしていつまで通用することか。
七瀨と僕、交互に日に何度か温めたミルクを持って行くのだが、その時に猫との交流を行うようにしている。
最近とても活発になってきたので、その分楽しくて仕方が無い。
たまに七瀨の番の時に行ってみると、あまり猫のことを可愛がるものだから、ユウがむくれるむくれる。
僕が行くとき漏れなく一緒に行く雨子様が、ユウを拾い上げては慰めている。
「ユウよ、子供を育むというのはそう言うものであるらしいぞ?」
『え~?猫が僕の子供なんですか?』
「まあ、今の状態だとそのようなものじゃな」
『でも僕の設定はクマですよ?』
いくらドロイドのクマとは言え、設定言うなよ。
雨子様に寄ると、付喪神の本質は少しばかり次元こそ低いものの、雨子様達神様と似たようなエネルギーの塊だとのこと。
それが人の思いと、その触媒になったものの性質に引きずられて付喪神になるんだそうな。
だからユウの場合はクマなんだそうだ。
それで付喪神は一端その形に捕らわれるともう二度と変わらないらしい。(擬人化することは有るが本性はそのままだそうだ)
一方雨子様達神様は割と自由なんだそうな。でも今の僕には雨子様は雨子様としか想像出来ないのだけれどもなあ
ユウの体をくすぐって笑い転げる様を楽しんでいる雨子様。
僕の中に有る雨子様は、光りの玉の時と小さな人形のような時と今の雨子様。
今の雨子様が一番馴染むのはあの姿が一番長いせいも有るのかな?
「む?どうした?何を見つめて居るのじゃ?」
僕の視線に気がついた雨子様が涼しげに笑いながら問うてくる。
「いえ、雨子様は今の雨子様の姿が一番馴染むなあって」
「ぷっ、何じゃそれは?」
「神様の雨子様は色々な姿を取ることが出来るのでしょう?」
「うむ、そうじゃな、同じ神が付いても付喪神どもとは大きく異なる所じゃな」
「だからもしかすると雨子様には色々な姿が有るのかもしれないけれども、僕にとっては今の雨子様の姿が一番しっくりくるなって思っていたんです」
「むぅ?そうなのかや?」
「はい」
僕の返事を聞くと雨子様は目を少し瞬かせた。
「その、何じゃな。何故かは知らぬが顔が赤うなってくるの?」
雨子様はそう言うと照れ臭そうに頭を掻いた。
「祐二達人の間で人らしく生きるのが面白くて、なんだかんだとこの身に手を加えてきて居るのじゃが、我の想像の及ばぬところで妙な反応が出居るようじゃ」
もしかすると雨子様がそれだけ人間臭くなってきていると言うことなんだろうか?
「まあこれは不快では無い故、このまま捨て置くとするか」
雨子様は子猫と戯れる七瀬のことを見つめながら言った。
「我は人の形を取ることは有っても、肉の身を纏うことまではしたことがなかった。我の生涯の中で初めてのことを行って居る訳なのじゃが、これからまだまだ色々と楽しめそうじゃな」
そう言うと雨子様はポンと僕の胸を突いた。
「祐二よ、言ってみればお主は人として我の先輩格に当たる訳じゃ、これからも色々と教えて貰うことが有るかもしれんの」
はてさて、雨子様のこの願いは上手く聞き届けられるのだろうか?考えるに僕自身まだこの生を始めたばかり、色々教えられるほど物事を知っている訳ではないからなあ。
でも、神様と一緒なら、きっと色々面白いことが起こる人生になりそうだ。それだけは確信していた。
「これ七瀬よ、我も仲間に入れるのじゃ。ほれ子猫、我も遊んでやるぞえ」
そう言いながら雨子様が七瀬と子猫の間に入っていく。そこだけ温度が上がりそうなくらい楽しそうだ。
と、そこで有ることに気がついた。
「しまった!子猫子猫と呼ぶばかりで名前をまだつけていないじゃないか?」
別にだからと言ってどうなる訳でもないのだが、さてどうしたものだろう。遊び疲れて子猫が寝付くのを待って、皆で決めるか、うんそうしよう。
英気を養って明日は一杯書けますように




