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天露の神  作者: ライトさん
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祐二の悩み

遅くなりました(T_T)


 テスト週間が終わって数日経った頃から、毎朝日課となっている修行の内容に変化があった。


 爺様曰く、日々の僕の修行をこうやって見てきているお陰もあって、この先どうして行くべきか少しずつ展望が開けて来つつあるというのだった。


 爺様の能力を持ってして何故この様に手間暇が掛かるのかと訊いたところ、自然発生のまま進化してきた人類の構造が余りに粗雑過ぎるが故とのことだった。


 何でも神様方の元となった種族は、長き年月を掛けて自ら自分達に改造を施してきていたらしい。俗に言うデザイナーズベビーの超進化版とでも言えば良いのかも知れない。


 だからどう言う変化を施すにしても、何をどういじれば良いと言うことが、既に自家薬籠中じかやくろうちゅうのこととなっていたらしいのだ。


 それが人間の場合、めったやたらと余分な物が引っ付きすぎているせいで、それぞれの持つ意味を明確化するのが異常に難しいのだそうな。


 それでも爺様の能力からしたらなんでとも思うのだが、人類の持つ遺伝コードはどうも少しばかり情報の取り扱いが異なるようなのだ。


 分かり易く例えると、約三十億有る塩基対を何進数で取り扱うかと言うことで、そのシステムが持ち得る情報の量が決まってくるのだが、人類の場合はその底となる部分が多重変調されていて、とんでもない量の情報量になりそうだとのこと。


 その為爺様としてもそれぞれの意味をしっかり掴んでいくべく、慎重にならざるを得ないのだそうだ。 

 

 一端、全て神様方のような純粋知性体に変化してしまえば、そこから先何をするにも簡単なのだそうだが、そこに至るまではどうしても慎重を期さなくては成らないと言うことのようだった。


 さて余談が長くなってしまったが、実際やっていることはそんなに複雑なことを行っている訳では無い。


 毎朝例のヘロヘロのぼうっ切れを振り回してやって来た鍛錬を、更に時間を掛けて行うというのが当面の目標なのだった。


 ただ僕自身にも毎日の生活が有ると言うことで、その訓練のためだけに日々の全ての時間を掛ける訳にも行かない。


 そこで行われたのが我が家の庭の拡張なのだった。


 拡張と言ってもただ土地を拡張した訳では無い。何をどうやって行われたのかは分からないが、我が家の庭先が例の爺様の花畑へ繋げられたというのが、大凡のところだろうか?


 と言う訳で僕は毎朝すたすたと歩いて爺様の住んでいる?花畑へ向かう。


 此所では僕達の居る世界とは時間の流れが異なっていて、極めてゆっくりと時が流れるようになっている。


 それによって僕はたっぷりと生み出される余分な時間を使い、存分に修練に勤しむことが出来るという訳だった。


 そんなことをすれば自分だけ、周りの人間に比べて年を取ってしまうことに成りかねないと心配していたら、そのことについては例の妙に美味しい飲み物を飲んでいる分には大丈夫とのこと。


 何でも丁度良い塩梅に細胞を活性化させつつも、様々なエラーを修正してくれるのだそうだ。


 自分的にはなんだか周りの人間に対して、ずるをしているような気持ちになってしまうのだけれども、そのことを雨子様に話したら、神に成るくせに何を言うと鼻で笑われてしまった。


 あと、この場所は我が家に来る人間全てに対しても開放してくれている。お陰で時折七瀬が宿題や勉強するのに使うようになっている。


 こう言った使い方はどうかとも思うのだけれど、自分自身がもっとも良く恩恵に与る立場にあるだけになんとも言いようが無い。


 そして今日もまたせっせと木刀もどきを振る訓練を続けている。


 その様を雨子様と母さんが並んで見守っているというか、他事をしながら見ていてくれている?


 大体において母さん、なんでこんなところで洗濯物を干しているの?

この間そう聞いたら、此所は雨も降らないし埃っぽくも無い、おまけに丁度良い加減で洗濯物に花の香りが移るのだそうだ。


 それで良いのかと心配しながら爺様に聞いたところ、時折お茶をご馳走になっているのでそのお礼だとか何とか言っている。


 雨子様も雨子様で、そんな母さんの手伝いをしながら楽しそうに会話に花を咲かせている。だがそうやって他事をしていてもしっかりと僕のすることは見ているようで、


「そこ!気を抜くでない。きちんと気を行き届かせて振らねばただ時間を消費するだけぞ」


 等と叱責してくる。

なら修行している横で、そんな気の抜けるような日常展開をしないでくれると言いたいところなのだが、まあ、言わぬが花だよねえ。


 だがそうやって訓練を続けているうちに、僕は少しずつではあるのだけれども、自分の体が妙に軽くなっていくのを感じていた。


 一体どう言うことなのかと爺様に聞くと、それこそが訓練を続けている成果の一つなのだとのこと。


 けれどもいくらこの世界のトリックを使って余分な時間訓練をしているにしても、少しチート過ぎないかな?そんなことをぼやいていたら雨子様がそれを聞き付けて何故そう成るのかを教えてくれた。


 雨子様曰く、本来であれば人間の身体という物は膨大な数のトライエンドエラーを経た上で、初めてなにがしかの成果を得ていくように出来て居るのだけれど、例の飲み物がそれを上手くカバーしてくれているとのこと。


 そう言う様々な能力を聞くと、正にネクタルという名前を冠するに相応しいなと思ってしまった。


 そして更に雨子様からの説明の続きなのだが、人間や一般的な生き物は体内の様々な化学物質の変化を利用して、物理的運動能力を発揮している。


 ところがそれ以外に人間は集中しながらしっかりと修練していく内に、精のエネルギーを変換して気のエネルギーとして使うことが出来るようになるんだそうだ。


 この気のエネルギーを使うことで、物理的運動能力を向上させることが出来るらしく、僕が身体が軽くなった様に感じるというのは、正にその気のエネルギーを使うことが出来るようになりつつある証なんだそうだ。


 この進展に僕は大いに喜んだのだけれども、実際ネクタルと呼ばれている飲み物のサポート無しには、気を生じるに足る集中力を作り出せず、身体の方は重いままとなる。


 そのことを雨子様に聞くと、今はまだ脳の方が活性化した働きをする状態になれていないとのこと。けれどもその状態に強制的に何度も持って行くことにより、徐々にでは有るがネクタルが無くとも自然に再現出来るようになっていくと言うことで、その為の訓練であるとも教えられた。


 こうやって少しずつ修行によって何かを得ていく訳なんだけれども、正直僕には神に成ると言うことについて、まだ何も分かっていないように思う。


 時々思うんだよね、雨子様が好きだから、彼女のことを悲しませたくないから、出来れば同じような存在になれたら嬉しいなと。


 でも果たしてそれだけで良いのだろうか?どうしてもそう考えてしまう。

そしてそのことを考えていると、少しずつ夜に上手く眠れなくなってきている自分自身がいた。


 もっともそんなことには成っても、幸いなことに例の飲み物を飲んでいるお陰もあって、表面にはその影響は何も出ていないように見える。


 そう言えば昨夜もなんだか随分魘うなされて夜中に目を覚ましていた。汗をびっしょりとかいていて、そのままでは気持ちが悪いので着替えてからまた眠ったのだけれども、なかなか上手く寝付けなかったっけ。


 朝、修行に行くまでは身体がもの凄く重くてどうしようかと思ったのだけれども、駆けつけ一杯じゃ無いけど、まずあの飲み物を先に頂いてからは直ぐに解消されてしまったから、その後の修行に支障が出ることは無かった。


 でもいつまでもこんなことを続けていく訳には行かない。


 しかしこのことは雨子様には相談したくは無いなあ。絶対に心配させてしまうからなあ。かと言って母さんや父さんでは解決のしようが無いし、爺様も雨子様に近いからなあ。


 さてどうしよう?暫しそう悩んでしまう僕なのだった。



悩む祐二、悩む作者(^^ゞ

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