「お誘い」
本日のはちみっと短いです(^^ゞ
初めての本格的なデートを経験してから数日後のこと、雨子様は昼食後の片付けを手伝いながら節子に問うていた。
「済まぬが節子、小和香をこの家に招いてやっても良いかや?」
大方の片付けが終わった節子が手を拭きながら雨子様に聞き返す。
「小和香様を?」
「そうなのじゃ」
「別に構わないけど、何かあるの?」
そこで雨子様は特別な呪を施した装飾品を、小和香様に与える旨説明し始めるのだが、節子には今一つ良く分からない。
「あ~、良く分からないのだけど、何か特別なものを上げて、その効果も合わせて見てみたいから、我が家に来て頂くと言うことなのね?」
「うむ、それとな、小和香も我と同じで人の身と成って余り間がないのじゃ。なので良かったらあやつの衣類なども、節子に見立ててもらいたいのじゃ」
「あらそうなの?」
そう言う節子の目がキラリと光る。
「それならいっそあゆみちゃんも誘って上げようかしら?」
等と言い始める節子。だがいきなりそんなことに七瀬まで呼び出して良いものかどうか、雨子様には機微が分からなかった。
だが節子はそんな雨子様を尻目に、さっさと携帯をいじり始めている。
訳の分からない雨子様が節子に聞く。
「ところで節子は一体誰に連絡をして居るのじゃ?」
「ああこれ?」
そう言うと節子はレインの内容を雨子様に見せた。
「あゆみちゃんに直接言うよりも、聡美さんに言っておいた方が良いかなって思って、今連絡入れたところなのよ。あ、返事返ってきた」
そう言いながら節子は矢継ぎ早に返ってきた文章に目を通し始める。
「あら、聡美さんからは大歓迎だって。あゆみちゃんはそう言う買い物に関心が低いところがあるから、お尻を叩いてくれるのは助かるのですって?」
「そ、そうなのかえ?」
いきなりの展開に些かついて行けない雨子様。
「ならそうね、今日の明日って言うのだとさすがに大変だから、明後日辺りならどうかしら?」
トントン拍子に話が決まっていく。雨子様は時々節子のこの行動力に舌を巻いてしまうのだった。
そして節子の提案に基づいて和香様と連絡を取って打ち合わせようかと考えた雨子様。
だがこの後の節子の台詞に目を剥くことになる。
「あら、和香様もそれで問題ないですって」
「何?節子?そなた和香とも連絡を取って居るのかや?」
すると節子は何を今更というように笑いながら言う。
「だって祐二や雨子ちゃんのことがあったでしょう?やっぱり何かあった時に連絡出来るようにしておかないとって思って、連絡先を聞いておいたのよ。やっぱり正解だったわ」
正に節子恐るべしである。雨子様はまじまじと節子のことを見てしまうのだった。
「聡美さんのところもOK来たわよ。これで決定ね?」
「もうなのかや?」
雨子様は呆れながらも節子の説明にうんうんと頷く。
「小和香様に掛かる時間はどれくらいなの?」
実際小和香様に拵えたものを渡して、その微調整を行うことこそが今回の目玉なので、それを疎かにすることは出来ない。
雨子様は指折りその段取りを考えながら、掛かる時間を想定した。
「そうじゃの、やはり適うなら慎重を期したいところが有る故、三ないしは六時間くらいは掛かるかも知れぬの」
「あら、そんなに掛かるの?ならお昼頃から来て頂いて、その日は泊まっていって頂いたら良いわね?」
「むう?良いのかえ?」
「うちは全然構わないわよ、その旨もう私の方から和香様に連絡入れておくわね?」
そう言いながら既に節子は手を動かしている。
「済まぬの、助かる」
「ついでにあゆみちゃんにも連絡入れてっと、早めに来てもらっておいて、いっそその日は女子会にしちゃいましょう」
「女子会というと、女の子ばかりで集まってと言う奴じゃな?」
「そうそう、もっとも私の場合は子というには少し薹が立ち過ぎちゃってるけど…」
自虐気味にそう言う節子に、力強く頭を横に振りながら雨子様が言う。
「何を言うて居るのじゃ?そなたが薹?ならば我や小和香で有れば何が立つというのじゃ?」
確かに言われてみればそうだった、経てきた年月だけを数えるのであれば、雨子様や小和香様の年齢とも成ると数えるのも馬鹿馬鹿しくなる。
言ってみれば七瀬と節子の間の年齢差など誤差のようなものでも有った。
そんなことを考えて居た節子だったが、ふと考えつきふざけて言う。
「雨子さんなら、東京タワーくらい?」
その言葉を聞いて、何が何やらと言った表情で暫くきょとんとする雨子様。
だがやがてに理解が行ったのか、にやりと笑うと眉をつり上げて節子に向かう。
「節子め、言いおったな?こうしてくれる!」
そう言うと雨子様は節子に飛びかかり、その脇腹をくすぐり始めるのだった。
その後暫く二人できゃーきゃーわーわーと一頻り騒いだのだったが、後に何事と祐二が見に来た時には、両名とも疲れ切って床に伸びていた。
「何やってんだか二人とも?」
息も絶え絶えに成りながら、笑いすぎて溢れる涙を拭う彼女らに、呆れかえった祐二は密かにため息をつくのだった。
蝉が大合唱をし始めています




