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天露の神  作者: ライトさん
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その日に向けて

 ワチャワチャした回から一点、何だか七面倒くさい回です

読んでいても目が滑りそうな内容ですが、ご容赦下さい。

 数日後、和香様から、神の杖が最初に予定されていた位置まで、無事転移させられたことが伝えられた。


 この最初の転移が初っぱな一番大きな距離を稼ぐ、大変な仕事と言うことは聞いていたのだけれども、いきなり火星軌道相当まで移行させたとのこと。これはあくまで人類の様々な探知システムをかいくぐる為で、致し方の無いことらしい。

 ただ一気にこの距離を稼ぐ為には相当量の力が要りようと言うことで、さすがの八重垣様も、もう勘弁と言って嘆いていたそうだ。


 この後は短距離の移行を多重に繰り返していくとのことで、予定地点に到達するまでは、まだ暫く時間が掛かるとのことだが、まずはほっとした。


 だが実際のところはこれからが本番なのだ。


 それからこれはニーから教えられたことなのだけれども、現状のニーの絶対防御を抜けることが出来ないと知った連中は、一転してネット環境においての侵入ではなく、物理的に国境を越えてくると言う手段をとりつつあるらしい。


 具体的にどうするかというと、特殊な変換装置を内蔵した携帯を所持しながら、旅行客を装って海外に出て行くと言うものなんだそうだ。


 ネットにおいてニーの防御を突破出来なくとも、人の手で実地に様々な調査を行い、暗号化した情報として送るのなら何とかなるだろうと考えて居るらしい。ここに来て人力に頼ろうとするところは、あの国らしいと言えばらしいのだろうか。


 何でも国からの景気浮揚策の一環として、旅行補助金と称してかなりの額をばらまいたとのこと。もっとも外国にそのお金が流れるのだと考えると、一体それのどこが景気浮揚策なんだと、何を考えて居るのか良く分からないところが有る。。

 が、それでもかつて無いレベルの人数が海外旅行に出かけ、その内の少なからない連中が、例の携帯を持ってそこいら中をうろうろしている。特に国の重要地点周りにうようよしているのだから、目立たない訳がない。


 これが全世界的に行われたのだから、各国政府が驚き呆れ、慌てたのは想像に難くない。直ちに彼の国の政府に対して厳重な勧告が行われた。しかし一端溢れた者達を送り返そうにも事はそう上手くは運ばなかった。お陰でかなりの期間どこに行っても彼の国の者の姿を見ることになり、石を投げれば当たると陰口を叩かれるほどだった。


 実際、この数の人数でなんだかんだと情報を抜かれた日には全く大変なことになっていただろう。

 だが結果としてその試みも通信の段階で、全てニーによって防がれている。また、メモリーに蓄積された情報も、出国の際の検査で全て消去する処理を行ったらしい。

 既存の機器を使いながら難なくその作業を熟すニーの能力には全くもって恐れ入ってしまう。


 しかしこうやって相手側が次から次へと打ってくる手立てを、全て防ぎきっているとは言うものの、どうにもこのネチっこさは落ち着かない。

もしかするとこれ自体は何かの陽動なのではと言うことを和香様は言っている。


 実際に衛星を使って監視しているニーの言うには、軍部辺りに常には見られないような動きが有るそうで、何とも物騒なことだ。


 数日後、和香様は鏡を使った通信で雨子様と長々と話されていた。こちらが守ることに徹しているからこそあちら側に余裕も生まれるのではないかと言うのだ。ついてはこちらからも打って出ようではないかと言うことになったらしい。


 攻勢に出ること自体は、今のニーの能力からすると極々容易いことらしい。

かと言って余り向こうに危機感を与えすぎても、無用に警戒させてしまうことになるので、現状あちらの交通機関を混乱させる程度で済ませるつもりだとのこと。


 この作戦が決定されると、ニーは直ちに沢山の簡易AIのような物を作成した。

ニー曰く、これらのAIは神様方の分霊の方式を参考に作り上げたのだとか。


何でもその数、数千にも上ると言うことなのだけれども、これらのAI達がニーの力によって極秘裏に彼の国内部に送り込まれる。

 AI達は中に入り込むや否や、各所のコンピューター等に侵入して内部のデータを片っ端から取得し、即座にニーに送る。

 ニーは直ちにその内容を分析して返信、AI達はその返信内容に従って色々なサボタージュを行うらしい。


 勿論そう言ったデータの改変を行った後、外部からの工作の痕跡を残す訳には行かない。その為これらのAI達は自らを消去するように出来て居る。元々このAI達は極々小さなシステムで作り上げられているから、その消去も非常に容易かった。

 厄介な分析をニーに任せることが出来るからこそ、かくもコンパクトな作りに出来るのだろう。


 そうやって役目を果たした後消えてしまう彼らのことが少し不憫に思ってしまったのだけれども、雨子様に言わせるとそれらの者達には、僕の心配するほどの知性は無いそうだ。


 お陰でニー達が手を尽くして行った事の結果は比較的直ぐに現れた。

先方に与える影響はかなり大きいらしく、特に都市部での交通機関や物流の麻痺はかなりの市民生活の混乱を招いていたようだ。

 その影響か、政府に対する市民達からの突き上げも相当激しくなり、既に生じている混乱を更に助長するようになっている。

 そのため彼の国の政府機構は、複数箇所で発生している混乱を収拾すべく、かなり大きく力をそがれているらしい。


 当然のことながらそう言った混乱が及ぼす効果は、実に速やかに現れつつあった。

事実この作戦を始めてから、あちら側からの多様な妨害工作の密度が一気に低下してきているらしい。


 もっとも、こう言ったことが行われていたことは、世間一般の人は何も知らない。

ただ何となく旅行者が多いとか、彼の国のネットを使用した機構に混乱が生じているとか、その程度のことだった。


 が、中には例外のような所も有るもので、アメリカの防諜機関では世界で何かが起こっているようだとか、彼の国で常成らざることが起こっているとか、その程度のことは理解し始めていたようだった。

 そして様々な手段を講じてしきりと聞き耳を立てているようなのだが、こちらもニーによって重要度の低い情報しか行かないように調整されている。


 何でも防諜機関が使用しているAIの協力も得ているとのことで、これが万一ばれた日には、国を挙げての大騒ぎになってもおかしくない。そこはニーの手腕を信頼するしかないだろう。


 そうこうしている内に神の杖は無事当面の周回軌道に乗り、他の惑星の軌道面とは幾分角度がついているお陰で、比較的粗な空間を旅している。


 そうそう、宇宙に上げる直前に、表面の黒化処理もしてあるので、例え宇宙望遠鏡を使ったとしても、まずもって直接見つけるのは無理だろうとのこと。

 ただ他の星々の前を横切った時にのみ発見される可能性が有るらしい。だがそこから杖と言う存在を割り出すのは無理なのじゃないかなあ?


 もっとも、その一定軌道を周回するのもあと僅かで、間もなくニーと和香様の共同作業による一押しが為される。


 慎重に速度と方向が定められての一押しを受けた杖は、毎秒約三百キロという速度で、未来に於ける地球の決められた地点に向かって、茫漠たる空間をひた走ることになるそうだ。


 そのサイズと断面積故に、おそらくは地球側のあらゆるレーダーに捉えられることはないだろうとのこと。が、それでも万全を尽くして極力軌道修正は行わない。これは最初に決めた通りのことだ。だからこそ最初の一押しがこの上も無く重要になるのだった。


 そしてとある日、その一押しは為された。

後はこの杖が全てを計算され尽くしたコースを辿り、当該地点の地下にある龍体の付喪神を撃つことになる。


 はたしてその一撃によって、彼の国の人達が付喪神の呪縛から解き放たれることになれば良いのだけれども…。


 予定では直径一メートルにも満たない径で地下深くまで貫通し、それは龍体を破壊し尽くすには十分なだけの衝撃を与えるのだそうだ。

純タングステンという素材面の不自然さは有るものの、それがどこか特定の国家からの攻撃とはまず考えられないだろうし、素材の分析を終える頃には付喪神の影響から抜けきっているだろうというのが雨子様の予想だ。


 それから、何の為なのかは教えてくれなかったのだけれども、その着弾時には八重垣様が富士山頂に行かれるのだそうな。念には念を入れてと言うことなんだけれども、一体何を想定されてのことなんだろう?

 雨子様はその何かを知っているらしいのだが、こればっかりは僕がいくら聞いても教えてくれなかった。


 これは推測なんだけれども、多分僕の精神面のことを考えてのことなんだと思う。

ちょっと過保護なのではとも思うのだけれども、それだけ大切にしていてくれているのだと思うことで、それ以上は追求しないことにした。


「ここまで来たら、後は待つだけじゃの…」


 静かにそう言う雨子様。

雨子様と和香様がニーから受けた情報に基づいて調べたことによると、彼の付喪神の影響によって、既に信じられないほど多くの人が命を失ったり、それに準じた状況になっているとのこと。


 そして雨子様曰く、現状まだ一つの国家の中に留まっていたからこそ、この程度の害で収まっているのだそうな。

 だがそれでもこの付喪神は多くの人の精を吸収していて、既に八重垣様をも上回る力を手に入れているかも知れないそうだ。それは想像するだに恐ろしいことだった。


 これが外部に溢れ、何の抑制もなく力を振るうようなことがあったとしたなら、おそらく全てが終焉を迎えるだろう。と言うのが雨子様の予想だ。


 地球で暮らす数多くの人々、皆が無辜の者達ばかりとは言わないけれども、それでも皆精一杯頑張って自らの為、或いは自分が大切にしたい者達の為、幸せを勝ち取ろうとしている。

 が、人が多く集まれば自然に負の感情も有る物で、そう言った負の感情が沈殿し、澱となって固まった物が今回の付喪神だ。


 彼の存在の希望は全てを喰らうこと、その行く先にはもしかすると邪神への変貌すら有るのかもしれない。

 

 和香様や雨子様と言った存在にとって、この付喪神の存在だけは絶対に許すことが出来ない代物だった。


 八重垣様の仰るには、本来であれば神々の軍勢を持って対応にあたり、近隣全てを無に帰そうとも処置すべき事柄なんだそうだ。実際、八重垣様は、僕達のこの作戦がなければ単身乗り込んででも相手を破壊するつもりだったそうだ。


 いくら付喪神の支配下に置かれているとは言うものの、十億を超えようかという人間がいるのだ。そのような事態になることを避けたいと思ったとしても、何ら不思議では無いと思う。

 僕は今更ながら雨子様、和香様、八重垣様、そしてニーに巡り会うことが出来たことを、有り難い奇跡だと思うのだった。


こう言うのって書くのが難しいです

トホホホ

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