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天露の神  作者: ライトさん
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神の杖二

 今日は少し短めです

 雨子様の温かい言葉に励まされ、八重垣様の力強い言葉に背を押された僕は、無事くじけること無く前を向けるようになった、と思う。


 神の杖についてなのだが、雨子様と和香様に加えて、八重垣様も作成に参加したお陰か急速に形を成し始めていた。


 美しい銀の鏡面で形作られたオベリスクのような、もっとも断面は円形なのでオベリスクとは全く異なるのでは有るが。


「もう後少しやね」とは和香様。


 和香様の口からその言葉が発せられてから約五分くらい経った頃だろうか。ついに杖成るものが完成した。

直径が二十センチくらいなので、僕の手でも持てないサイズでは無い。がいかんせん重さがそんなレベルでは無かった。


 だがそれはあくまで僕という人間に限った話だった。

実際八重垣様の手に掛かると軽々と持ち上げられ、まるで重量など無いかのような感じでぶんぶんと振り回される。


 僕はその姿を見て昔読んだ西遊記で、悟空が如意棒を振り回していた場面を思い出した。


 八重垣様の振り回す棒が空を切り、その先が立てる風切り音は、もう音の領域を越えているような気がする。身体の中に直接響いてくるような気がするのだ。

長さにして約十メートル、重量は六百キロに少し足りないくらい。恐るべき棒を唯々として振り回す八重垣様だったけれども、その身体は一ミリたりともぶれることは無かった。


「す、凄いですね…」


 僕は震える声でそう表していた。その僕を守るかのように左右に二柱の神様方が立つ。


「剛勇無双じゃの、昔からあやつのああ言う所は皆の驚嘆の視線を一身に集めるの」


 雨子様自身も感嘆の声を上げながらそう説明してくれる。


「あんなに凄いくせに時々泣き虫なんやからもう…」


 そうぼやくのは和香様だった。もっとも僕はその言葉については聞こえなかったことにしようと思っている。


 かれこれ十分ばかり経っただろうか?その間八重垣様は今まで見せたことの無いような真剣な表情でずっと棒を振り回し続け、おそらくは何かの武術であろう型を次から次へと披露していた。


 だがその間も一切息が上がることとて無く、全ての動きを止めてとんと棒を地面に突き立てて初めて表情を和らげた。


「これは良いな、振り回していて楽しい重量だな」


 六百キロだよ?ちょっと信じられない。そしてこの太さに長さ。これなら牛魔王とだって軽く勝負出来てしまうのじゃ無いだろうか?


 八重垣様は最後にぐるりと頭上で棒を回すと、ずんとばかりに地面に突き刺した。


「あ~~~」


 とばかりに突き刺された棒を指して言葉を発する和香様。


「どうした和香、何か不都合でもあったかや?」


 怪訝な顔をして雨子様が問う。


「よう見て見ーな雨子ちゃん。こいつうちらが折角作ったもんを上下逆さまに突き立ておったんやで?だーからがさつや言うねん」


 よく見ると確かに和香様と雨子様のお二方の想定とは、天地が全く逆となっている。


「おう、それはすまんかったな」


 そういうと八重垣様はぐいっと引っこ抜いて天地を変え、再びずがんとばかりに大地におっ立てた。


 まあ言っても始まらないことなのだけれども、折角美しく作り上げられた杖がもう土まみれになっている。


 それを見た和香様は俯いて目の辺りを擦っている。泣いているのかな?いやこれはきっとわざとだ、振りをしているに違いない、そんな事を僕は思っていたのだけれども…。


 片やそれを見て慌てて和香様に近寄って頭を下げる八重垣様。


「すまぬ、手頃な棒じゃったものだから、ついつい振り回したくなってしまった。反省した、この通り!」


 まさか神ならぬ人の身で、神様が手を摺り合わせ、頭を下げるところを見ることになるとは。

そんな事を思っていたら雨子様に耳を引っ張られて少し離れたところに連れて行かれた。


「武士の情けという言葉もあろう?」


「えええっ?」


「あの姉弟のいつものことなのじゃが、見てやるな」


 雨子様にそう言われてしまったらその願いを聞かない訳には行かない。

僕達は揃って二柱の居られる方に背を向けることにした。


 背後からは


「すまぬ」と言う言葉が繰り返し聞こえてきたり


「いっつもあんたはそれや、何回謝ってもうてると思うてんのや?」とかとか。


 まさに姉弟喧嘩の最中のような言葉が色々と聞こえてくるのだが、もう知らない。


「本当にいつもこんな調子なんですか?」


 僕が声を潜めて聞くと雨子様は頷きながら言う。


「全くもってこやつらは、顔を合わせるといつもこの調子じゃ。そして大体において我にしわ寄せが来るのじゃから、堪ったものでは無いぞえ」

 

 雨子様は肩をいからせ完全にお怒りモードである。

雨子様から伺った今までの経緯などを聞いていると、雨子様が怒ってしまうのも頷けるものが有る。非は全てあの二柱の神様方にある訳で、雨子様に何ら関係のあるところでは無い。にも拘わらずせっせと仲裁しなくては成らないとしたら腹も立つよなあ。


 そうやって雨子様に同情するのだけれども、あんまり機嫌が悪いままって言うのも隣にいて居心地が悪い。なので何とかそのご機嫌を良くすべく、どうしたら良いかと考えるのだけれども、これはやっぱりあれかなあ?


「ねえ雨子様、神の杖ももう出来たことですし、そろそろ僕達は帰れるんですよね?」


未だぷっくり頬を膨らませている雨子様がむっつりとしながら言う。


「それはそうじゃの、やることは全て終えて居る。後はあの杖を宇宙そらに上げるだけなのじゃが、和香も居ればニーも居る、力業の方は八重垣に任せれば良いのじゃから、もうそろそろ帰っても良かろう」


「なら帰りにエアリアルに寄って、季節のケーキでも買って帰りませんか?」


 最近出来た新しいケーキ屋さんなのだけれども、昨今の雨子様はここで作られる菓子ケーキの類いに夢中なのだ。


「むぅ、それは良い案じゃな?今頃の季節と成ると何じゃろうの?楽しみじゃ」


 等と二人で色々打ち合わせていたら、いつの間に喧嘩を終わらせていたのか二柱の神様方が頭を寄せ合って小声で何やら言っている。


「あいつら妙に仲良くないか?」


「八重垣もそう思う?」


「おう、俺は雨子があんなに気を許しているのは初めて見るぜ」


「まあ、初めってって言う訳でもないんやけど、あんまりあらへんな」


 こそこそ小声で言っているつもりなのかも知れないけれども、元々大きい八重垣様や和香様の声。僕達の耳には丸聞こえだった。


「そなたら!」


 あーあ、折角宥めていたにもかかわらず、今や額に角が見えそうな雨子様が、真っ赤になってお二人のところに飛んでいく。うわ、雨子様、手から電撃飛ばしてる?


「こら、おま!」


「雨子ちゃん堪忍、許して!」


 やれやれ本当に一体僕は何を見ているんだろう?




 西遊記に聊斎志異、水滸伝に、三国志、封神演義

いずれを読むときもわくわくしていましたっけ。

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