朝の狂想曲
最近の神様達のはっちゃけた感じ、何だか好きだなあ。
もっとも振り回される祐二君は大変だけれどもなあ。
誰かが頭を叩いている。僕はそう言う感覚と共に目を覚ました。
叩いてくるその手を防ぎながら誰?と見上げるとそれは七瀨だった。
「痛い痛い、一体何でそんなに叩いてくるんだ?」
僕がそう言って文句を言うと七瀨が目をつり上げながら言ってくる。
「祐二は何でこんな所で寝て居るのよ」
「こんな所って何なんだよ?七瀨が先に居眠りし出すから仕方なしにあっちの部屋で寝かせたんじゃ無いか?あっちは一組しか布団が無いだろう?そしたら僕がこっちで寝るしか無いじゃ無いか?おまけに自分だってうん分かったとか何とか言いながら寝てたんだぞ?それなのに何で…」
「だからと言って何でこんなところで寝ているのよ?」
どうにも七瀨の言っていることが理解出来なかった僕は、体を起こすと自分の寝ている場所を確認した。
「?」
思わず僕は目を剥いた、右には雨子様、左には和香様が寄り添うようにして眠って居る。
「へ?何で?」
「何でってこっちが聞きたいわよ!」
そう言いながら七瀨がまたぽかりと叩いてくる。
「痛い、痛いから止せって」
僕と七瀨がそんなこんなで騒いでいると、雨子様がごしごしと目をこすりながら起きてくる。
「そなたらは朝から何を騒いで居るのじゃ?我らは昨晩目一杯働いて疲れて居るのじゃ、もそっと大人しゅうしてくれても、罰は当たらんと思うのじゃがな?」
「だってぇ…」
七瀨はそう言いながら口を尖らせる。
「祐二が雨子さんと和香様の間に入って川の字になって寝ているんですよ?信じられない!」
その言葉に雨子様は呆れるやら苦笑するやら。
「そうは言うてもの、祐二は昨夜崩れ折れるように寝てしもうたから、そのままその場に布団を敷いて寝かしつけただけのこと。そしてそれがたまたま部屋の真ん中じゃったから、我らの布団は両側に敷かなくてはならなかった、それだけの事じゃ。七瀨も子供のように騒ぐ出ない」
「ぶ~~~~」
僕はとっさに吹き出すのを押さえたが、現実に人がブーと言うのは初めて見た。
「うるさいなぁ~」
僕達がなんだかんだと騒ぐものだから、今度は和香様が目を覚ましつつあった。
「ふにゃ~~」
和香様が聞いたことの無いような言葉を発しながら。こちらへごろっと転がる。そしてあろう事か僕にしがみつこうとする。
「わわわ、和香様?」
約一名うろが来ている人間が居る。だがもう一人の人ならぬ神様がポカリと一撃。
「これ和香、起きて居るくせにいたずらをするでない!」
すると和香様が頭を掻きながら起きてきた、加えるにテヘペロ付きだ。
「え?ばれとったん?」
「バレバレじゃ、何を子供相手にからこうて居る?」
「そやかて皆でこうしているのって、なんやめっちゃ楽しいやん?そう思わへん七瀬ちゃん?」
そう言うと和香様は今度は七瀬に抱きついた。
「本当にしょうの無い奴じゃのう」
だがそんなことを言っている雨子様も実は怒っている訳では無く、にこにこしている。
「済まぬの七瀬に祐二よ。和香は実はもの凄いさみしがり屋なのじゃ」
雨子様のその暴露に慌てたのは和香様。もっとも和香様を知るもの達には何となくもうお見通しのことなのであるが。
「わわわわぁ、雨子ちゃん、何気軽ぅに人の秘密ばらしてるねん?ええ加減にせえへんかったら罰当てるで?」
和香様ったらば罰を当てるとか何とか言いながらも、なんと嬉しそうなこと。
「とにかくじゃれ合うのはここ迄じゃ、早う皆風呂なぞ行ってしっかり目を覚まして来るが良い」
そう言うと雨子様は皆をぐいぐいと風呂へ追い立てた。
入り口だけ別で中は男女一緒の風呂で、これまたお約束のように一悶着有ったことはさておき、今回は皆のぼせる前に出てきて、さっぱりとした顔で先ほどの部屋に戻った。
そこには既に朝食が配されていて、着席するや否や、祐二や七瀬は早速食べ始めることにした。
「「頂きます」」
「まっことよい子らじゃの」
そう言いながら目を細めて眺める雨子様。その横では和香様が既に半分ほどご飯を食べ進めている。
「まあ良いは」
雨子様はその様子を見ながら独りごちを言うと、自身もゆったりと箸を進めだした。
多分お腹が空いていたのだろう、瞬く間に平らげて締めに豊かな香りのお茶を飲んでいると、小者がやって来て片付けを始めた。
「和香よ、そろそろ良いのでは無いか?」
そう言われた和香様はことりと湯飲みを置くと、静かに部屋から出て行った。
「いよいよニーの出番ですか?」
僕がそう聞くと雨子様はうんうんと頷くのだった。
「もしかしてもう出来上がっているの?」
と七瀬が聞く。僕は首肯しながらそれに答えた。
「うん、昨日遅くに出来上がっていたよ。でも七瀬が寝ているから起きるまで待って、それから最後の仕上げに掛かろうっと言って、待ってくれていたんだよ」
「ほんと雨子さん?」
「うむ」
雨子様がそう言うと、余程嬉しかったのか七瀬は雨子様に飛びついた。
「嬉しい!雨子さん大好き!」
そう言いながら雨子様に頬ずりする七瀬。その喜びようが意外だったのか、思いも掛けなかったのか、雨子様は目を白黒させている。
そこへ運良くというか、運悪くというか和香様がニーを連れて帰ってきた。
「あ~~~、何そんなええことしてるん?うちも混ぜてや!」
七瀬と雨子様の集合体に飛びつく和香様。
そんな彼女らを見つめている僕とニー。僕達は目を見合わせるとどちらとも無く同時くらいにゆっくりと頭を横に振るのだった。
さて、ニーのバージョンアップまでもう少しです




