更けゆく夜の作業
今日はちと短いです、申し訳ありません
一騒ぎが終わった後は、雨子様と和香様の単調な作業がひたすら続いた。
真っ先に飽きたのはユウで、七瀬の所に行って頭を撫でられながら眠っている。
そうこうする内に七瀬もうつらうつらし始めたので、隣の部屋に行って寝ることを勧めた。気が付かなかったのだけれども、小者達の手でいつの間にか布団が敷かれていたのだ。
多分数から言うと僕が寝ることを意識して敷かれていたのだと思う。しかし現状広い方で作業が為されていることを考えると、そちらで寝て貰うしか選択のしようが無いだろう。
静かに夜が更けていく。本当に単調な作業なので見ているととても眠くなる。
それでも雨子様達だけに頑張らせるのはどうしても申し訳無いような気がして、何とか気合いを入れて起きていたのだが、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
夢の中で体を揺すぶられるのを感じて目を開けるとそれは雨子様だった。
「祐二よ、このようなところで寝て居ったら風邪を引くぞえ」
少し心配そうな表情をしながら静かにそう言う雨子様。
「作業の方はどうなったのですか?」
僕は気に掛かっていたことを聞いた。
「うむ、もう後少しと言ったところかの。今は和香がしゃかりきになって頑張って居る」
体を起こしてみると幾つもの部品が宙に浮き、その間を丸で稲妻のように光りの筋が走り、消えを繰り返している。その入れ替わる速度が余りに速いので丸でフラッシュライトが点滅しているようにすら見える。
「何だか凄いことになっていますね?」
「全くじゃの、我が教えて居った途中まではゆうるりとした速度だったのじゃが、習熟した頃よりはあの通り、鬼神もかくやと言うような速さぞ」
全くその鬼気迫る姿は、雨子様が鬼神云々を口にする気持ちも分かろうというものだった。
「もう間もなく仕上がろうぞ」
光りの点滅する速度がどんどん速くなり、既に明滅として認められなくなった頃、唐突にそれは終わりを告げた。
全ての部品が一端宙に浮いたかと思うと、一点に集中して寄り集まり、スイカ大の光りの玉となった。そしてそれが収縮し始め、やがてには人の拳大になる。
「む、完成じゃの。後はあれを形代の中に納め、それにニーを憑依させて接続を終えれば終了じゃ」
そう言うと雨子様は手近にあった黒豹のぬいぐるみを和香様の元へと持っていった。
見ると普段ひょうひょうとした感じのある和香様の顔がげっそりとしている。
「なあ雨子ちゃん、自分ようこんなことやっとったなあ?」
その言葉に苦笑する雨子様。
「何を馬鹿なことを言っておる。我が使こうたのはただの一つの部品ぞ。そなたのように百を超える物を使ったのでは無いわ」
すると和香様は顔の前で手を振ってそれを否定しながら言った。
「ちゃうちゃう、何ゆうてるねん雨子ちゃん。自分ほとんど精が無い状態でも同じことやってるやん?うちそんなこと出来へんし、もうびっくりしてまうわ。うちなんかもう神力使いすぎてどないかなるかと思うたわ」
「そうなのかえ?」
「そうなんやで?昔から雨子ちゃん、力の使い方上手とは思うとってんけど、ここまでとは思わへんかったわ」
そう言いながら和香様は光りの玉に手を翳す、すると玉は手の動きに従ってゆっくりと動き始め、雨子様から手渡された黒豹のぬいぐるみの中へと沈み込んでいく。
「ようやっと完成じゃの、後はニーを連れてくるだけじゃが…」
雨子様はそう言いつつ別室で寝ている七瀬のことを見た。
「むう、折角途中までは完成を夢見て楽しみにしておったのじゃ、ここに来て仲間外れは可愛そうであろう」
雨子様がそう言うと、それが誰のことなのかと問う迄も無く和香様も頷いていた。
「そうやね、折角ここで一緒に時を過ごしたんやしね、七瀬ちゃんにも完成の瞬間は見せて上げな可愛そうやね」
「と言うことで一端ここで置いて、我らも寝ることにするかの?」
「それもそうやね、うちも普段はそないに眠りを必要とは思わへんねんけれども、今日ばっかりはもう早う寝たいわ」
そんな二柱の会話を聞いていた僕はどうかというと、完成したという言葉の一言を聞いた時点で緊張の糸が切れ、既に半睡状態だ。
自然目が閉じ崩れ落ちそうになっているところを雨子様に誘導され、何とか布団の中へと潜り込む。
「まだまだ頑是無い童じゃの」
夢の中でそんなことを言われたような気がする。そして僕は意識を消失させた。
書いている本人も祐二と同じように意識が消失しました




