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天露の神  作者: ライトさん
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会議二

確かこれってローファンタジーのつもりで書き始めた…そのはずなんだよね?

でも今回は何だかハードSF?

雨子様達も疲れたかも知れませんが、作者も疲れました。

「さてと、じゃれるのはこれ位にして、ニー、話の続き聞かせてくれんかな?」


一拍の間深呼吸すると和香様は真剣にニーに問うた。


「はい、国内への干渉をロックされるまでに取得していたデータをまとめますと、間接的な推論ではありますがいくつかのことが分かるかと思います」


「うむ、それで?」


「まず一つ。かの存在は明らかに人間とコンタクトをとっています。そしてそれはおそらく政府内の高い位置に居る者だと思われます」


そう聞いた雨子様は顔を顰めた。


「あの国の政府内で十分な影響力を持ったものとなると、もう頂上に居るかのものでしか無いであろうな」


「ほんまやね、今はそれ以外のもんは皆言いなりやもんね」


「そうしてもう一つ、こちらの方が更に問題かと思います」


「何じゃ、早うゆうてみよ」


「はい…、私が思いまするに、既に指導権が人から、かのものに移っているのでは無いかと」


「何じゃと?ではかの国のトップは既に傀儡と化して居ると言うことなのか?」


「はい、仰る通りだと思います」


そう言われた雨子様は大きくため息をついた。


「ふぅ、そう言われたなら確かに合点がいくの。道理でここ何年かのかの国の指導者は、以前にも増して民のことを顧みないようになって居るの。付喪神になった物の支配を既に受けて居ると考え居れば理の当然なのかも知れぬの」


雨子様のその言葉を聞いていた和香様もまた顔色を暗くした。


「これはほんまに想像以上に厄介やね、今の状態やったらもう何でもありとゆうてもええ状態やんか?」


「うむ、かの国の持てる資源全てを自由に使えると考えればその影響力は恐るべき物になるの」


「それで雨子ちゃん、今の防衛体制はどないなってるん?」


「ここを中心に半径五十キロくらいを検知圏として、絶対迎撃態勢はとって居るには居るが、飽和攻撃などを受ければ守り切れぬの。況んやその外ともなれば手の打ちようも無い」


「む~~、思たんやけどこうなったら守りのままは圧倒的に不利やね。守らなあかん物が多すぎるねんな」


「かと言って和香よ、そなたの力を持ってしても、かの国の外周を固めるのは無理であろう?」


和香様は頭を掻き掻き苦笑した。


「あかんあかん、そんなん全然無理やで、力不足もええとこや」


「じゃろうな」


そこまで言うと二柱は黙りこくってしまった。


「一気にこちらから攻め込んではいけないのですか?」


痺れを切らしたニーがそう聞く。


「そうじゃニー、そなたが居ったの。ニーがもしかの国に対して攻撃を仕掛けるとしたらどのようなことが出来るのじゃ?」


「国って雨子ちゃん、直接国攻めるのはあかんて」


「無論それは分かって居る、だから仮にじゃ。どう言う手段を持って居るかだけでも聞いておかねば策を練るにも練れん」


「それでニー、どないなん?」


そう問われたニーは一頻りの時間考えた後口を開いた。


「現状ではアメリカ、イギリス、フランスの三カ国の持っている核は全て発射可能です」


「げぇ~~えげつなぁ」


和香様が顔を真っ青にしている。


「まったくじゃ、この者を敵に回さなくて済んで幸いじゃったぞ」


「まあそうなんよね、でもそれに近いものがあると思わへん?」


「そうじゃの、数こそ違え、与える被害は劣らぬほど酷い物となるであろうからの」


「いずれにしてもこっちは、人の間にそんな被害を出す訳にはいかへんねんから、もうお手上げやで?」


 そこまで来て僕はそっと手を上げた。


「何じゃ祐二、何か案が有るのであれば言って見るが良いぞ」


雨子様から名指して発言の許可を貰ってしまった。


「あの、この相手というのは付喪神と言うことでもう間違い無いのですよね?」


「うむ、九分九厘どころかまず間違い無く付喪神じゃ」


 その横では和香様も力強く頷いている。ニーは興味津々と言った感じで僕のことを見ている。


「それでその付喪神は既に人間に悪を成す存在になっていることもまた間違い無いのですよね?」


「祐二君、それはもう間違いの無いことだと思うよ」


ニーが僕の問いに対して真っ先に口を開いた。かの国の分析を直接行っている身としては当然のことだろう。


「現にかの国は国民のことをどんどん無視しつつあるし、世界を自らの望む形に変えるべく、既に動き始めていると言っても良いかもしれない」


「なるほど…」


僕はニーの言葉を聞いて自分の考えを口にする決心をした。


「要はその付喪神を破壊出来れば良いのですよね?」


「それはそうなんやけど、相手はお城の中に、しかも地下三階に居るんやで?しかも北京ゆうたら、あの国の中枢や、おいそれとは簡単には近づけんやろ?」


「かと言って核とやら言う物を撃つとなると、一体どれだけの人の命が犠牲になるのやらの」


そう言うと雨子様は頭を嫌々と振った。


「我にはとてもじゃないがそのようなことは決心出来んことじゃ」


「ほんまやね、核やそれに類いする爆弾とかは威力が大きすぎるは。しかし人間はようこないな兵器を考えつくなあ。半分呆れつつ、半分感心するわ」


「確かに今皆さんが言われた兵器は、この特定の相手を破壊するだけの為に使うには、威力が大きすぎます。でもだからと言って僕たち人類にはそれを代替するような兵器というものがありません」


「そうやなあ、でもだからと言ってうちらかて雷やそれに類いする気象兵器見たいなもんは力として使えるけど、でもそれって人間に被害があるばっかりでなあ」


「そこで何ですが、人間の発想と神様の力を重ね合わせると、どうかなって思うのですよね」


僕のその説明に雨子様と和香様の二柱が身を乗り出した。


「祐二よ、そなた一体我らに何をさせようとして居る?」


「えっとですね、かつて人間の手で研究された兵器の概念に神の杖って言うのがあるんですよ」


「神の杖じゃと?これまた意味深な名前付けじゃの?それで如何様な物なのじゃ?」


「これは宇宙空間から比重が高くとても固い棒状物体を、地球上の一地点に落とすという手法で対象物を破壊するという物なんですが」


「なんや呆れたことゆうてるね祐二君は、まるでそれって隕石や無いの?」


「ええ。仰る通り隕石と原理的には同じです。けれどもそう言う材質と形状にすることによって、より限定的な地点への破壊効果を及ぼすはずでした」


「はずじゃと?どういうことなのじゃ?」


「現実には効果的なほどの重量と大きさのあるものを人間の手で宇宙空間に上げるのは難しいと言うことが一つ。もう一つは、いかに耐熱性に優れた素材を使用するにしても、大気の断熱圧縮による熱で棒そのものが融解蒸発してしまう、と言うことなんです」


「なんやそれやったら使えへんやん?」


「ええ、人の力では無理です…」


雨子様は僕の顔を見ながら呆れ果てながら言う。


「そこで我らの力を使うと申すか?」


「はい…」


「まったくやれやれじゃの」


そう言うと雨子様はニーの方を向いた。


「残念ながら我らには素材まで整えるのはちと荷が重い。ニーが最適と思える素材は何で、それを必要な量用意出来るかえ?適切な形状への加工はこちらでやるから心配せぬでも良い」


ニーは暫くの間思いを巡らせた後口を開いた。


「オーストラリアのとある企業の倉庫に必要量のタングステンがあるようだ。気が進まないが必要とあらば拝借してくることは可能かと思う」


「ふむ、どれくらいの物を考えて居るのじゃ?」


「落下時の速度をどのように設定するかにも寄るのだが、直径で二十㎝、長さで十メートルの物を想定している。この物で重量は約六百キログラムになる」


「なるほどの、落下速度についてはこちらで適当に加速させるから問題は無いの」


「断熱圧縮による熱はどうされるのですか?」


「それについては物体の表面に傾斜位相空間を配置することで前部で吸熱、後部で廃熱させて影響をなくするの」


「宇宙に上げるのはどうなさるのですか?」


「連続性の位相空間を設けて、その間で物体の受け渡しを行い、高所まで持ち上げる」


いやはや神様、何でもありですね…。


「そんなことが出来るくらいなら直接その物体をレールガンみたいに対象にぶつけてはどうなんです?」


「なあ、祐二君、レールガンってなにやのん?」


「電磁気力を使って砲弾を加速して相手にぶつける大砲のような物なんです」


「ん~~、それは可能やと思うねんけど、そしたらその弾誰が撃ったんて言うことにならへん?」


「あ…確かに」


「それやと下手すると戦争にもなり兼ねへんから、やっぱり可能な限り空から落として、それが隕石とかに見えるようにせなあかんね」


「仰る通りですね」


するとそこまで黙って話を聞いていたニーが口を開いた。


「和香様や雨子様は簡単に仰っておられるようですが、大気圏への突入角度や速度、途中の空気密度の変化等を考えると、目的の一地点にピンポイントで落とすのは、残念ながら私の計算能力でも手に余りますが?」


「そうやね、うちらが落とそうと考えて居るのは相手から数㎝とずれないことを前提としとるし、その直前まで位相空間の操作をせなあかんからね。これが人的被害なんかどうでもええって言うならこないに苦労せえへんのやろうけど、そうはいかへんからね」


「うむ、見かけは隕石を装わねばならぬしの」


「でもそんな風に言うからには雨子様達にはそれが出来るのだよね?」


「うむ、1番厄介なことはいかにその物質を適正に手に入れ、こちらまで移送するかということじゃの。勿論我らでも可能は可能じゃが、手間が大きすぎるの」


「それについてはお任せ下さい」


ニーがそう胸を張って言う。


「ねえニー、それって足がつかないの?」


気になって僕が聞くとニーはにっと笑ってみせる。待てよ?この顔ってどこかで見たことがあると思ったら、不思議の国のアリスのチェシャ猫だった。


「あらゆる金融機関のあらゆる操作の内から端数となっている数字を集めてきてまとめ、原資を作ります」


「うへえ、それって本当に可能なの?」


「通常であれば無理です。しかし全てのAIの管理権を持つ私にとっては…」


なるほどニーの笑いはここにあるのか、僕は納得してしまった。


「じゃがニーよ、悪用は厳禁ぞ?」


雨子様がここぞとばかりに釘を刺す。それが余りに素早かったので僕は苦笑してしまった。


「ところでタングステンの搬入はいかがしましょう?おそらく一ヶ月ほどはかかるかと思いますが?」


「それやったらうちの神社の敷地に運び込んでくれる?ただ一回に持ってこられたら目立ってしゃあないから、数回に分けてくれたら嬉しいねんけどな」


「分かりました、そのように計らいます」


「そしたら雨子ちゃん、物作るのと、それを空に上げるのまではうちの方でやっとくは。その代わり落とす時の手立ては任せるで?うちはそう言うのちまちま調整するの苦手やから」


「うむ、それは我の方で引き受けるとする。人的被害を可能であればゼロにまで持っていきたいものじゃからの」


 そこまで話が進むと、僕たちは皆で顔を見合わせた。どうやらこれでなら何とかあの付喪神の存在を打倒出来るのでは無いか?ほぼ確信出来るようなところまでこれたように思った。


「ならばこれで今日はお開きかの?」


「そうやね、今日は一端社の方に帰ることにするは。ニー、今日はうちと一緒に来、少し詰めときたいこともあるから」


「和香様帰るのは良いとして足の確保は大丈夫なんですか?」


僕がそう言うと和香様は嬉しそうに僕に抱きついてきた。


「や~~ん、嬉しいなあ、うち祐二君のそういうとこ好きやなあ」


 だが和香様が僕にひっついていられたのは束の間で、あっと言う間に雨子様に追い払われた。


「しっしっ、まったく和香は油断ならぬの」


「うわっ?何なんそれ?まるで犬でも追い払うみたいに!なあ祐二君ちょっと酷いと思わへん?」


「これ、またひっつこうとする」


更に追い払おうとすると和香様はひらりと身をかわす。


「そないに嫉妬せんでもとらへんゆうてるのに…」


「だっ誰がしっ嫉妬など…」


と雨子様は言いかけるのだが、僕の顔を見ると急に赤くなったり青くなったり口をぱくぱくさせる。


「おっと、もう怒られる前に帰るは」


そう言いながら部屋を出る和香様達を追って僕も階下へと降りた。


「あら和香様どちらへ行かれるの?」


母さんが目敏く見つけてそう問うと和香様は頭を掻き掻き返答する。


「いやあ、いつもいつも急に来てごめんしてや、本当はまた葉子んとこで泊まっていきたいんやけど、今日は忙しいてそうはいかんのよ。バタバタしてごめんな、そしたらおやすみ~」


 僕と母さんと雨子様の三人で玄関口に出て見送ろうとすると、目の前で和香様が巨大な鶏に身を変じ、足でニーを掴んでさっと飛び立っていった。


「あらまあ…」


とあっけにとられる僕と母さん。


「鶏って飛べるのね?」


って、母さん突っ込むのはそこ?でも確かにそうかも知れないな、しかも今は夜、ちゃんと見えて飛べるのかしらん?


 そんな僕と母さんの様子がよほどおかしかったのか、雨子様が背後で身をよじって笑っている。

確かに思うんだよね、最近の雨子様は本当によく笑う。最初の頃のことを思うとちょっと不思議なくらい、でも僕としてはとても嬉しいことのように思った。




作中の神の杖、良くその能力を大仰に言われがちですが、やってることに対してその効果はそれほど大きくないようです

それはそうとptを上げて頂くにはなんとブックマークも居るのか~~~皆様よしなに

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