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帰り道

「ハァ~、やっと終わったわ。」


 クラウディアが疲れた様子で息を吐きだした。


「イリス、初めての授業はどうだったかしら?」

「わからないところもあったけど、なかなかおもしろかったわ。特に魔法学の授業。」

「マイケル先生の? あの授業、おもしろいかしら?」

「ええ。わたしは今まで魔法を使ってこなかったから新しいことを学べてよかったわ。」


 前の方の席から金髪の女性が二人やってきた。クラウディアの友達のスーザン・ヤングとベアトリス・ジョンソンだ。


「そうだったのね。」クラウディアがイリスに相槌を打った。「ところでイリス、これからどうするの?ノートとか買いに行かないといけないでしょう?」


 そうだ、とイリスは思い出した。だがノートや教科書を買うのにもお金が要る。


「ああ、そういえばわたし一文無しなのよね。お金どうしようかしら…」

「ええっ!? あなた、ノートどころかお金も持っていなかったの? お昼を食べたときはお財布を忘れただけだと思っていたわよ!?」


 クラウディアは驚いたように言う。話を聞いていたスーザンとベアトリスも驚いた表情だ。 クラウディアを含めて、この三人は貴族の出身なのでお金の心配をすることはあまりない。そしてまさか、目の前にいる魔剣士学園の生徒が一文無しであることなど少しも想像しなかった。


「わたしがお金を貸しましょうか?」

「いえ、一緒にお昼を食べた仲ですし、わたしが貸しますわ。」


 スーザンとベアトリスがそれぞれイリスにお金を貸そうとイリスに言い寄る。


「いや、お金を貸してもらうのはちょっと悪いよ。校長先生に相談しに行ってくるよ。」

「なんで校長先生が出てくるのよ?」


 クラウディアが訳が分からない様子で尋ねる。


「この学園都市にいる私の知り合いが校長先生だけだからよ。」

「そう、だったのですね…」

「なんでもっと早く言ってくれなかったんですの!?」


 困った顔のスーザンと焦った顔のベアトリスが同時にイリスを見た。


「まあまあ…。とりあえずこれから校長先生にあってくるから、話はその後かな。」

「わかったわ。もし何か困ったことがあったら相談しなさいよね!」


 クラウディアが腕を組んで胸を張った。


「まあ、クラウディアは優しいのね。」

「そうね。わたしたちも協力しますからね、イリス」


 クラウディアは、スーザンとベアトリスから褒められると顔を赤くした。


「べ、別にイリスのことが心配で言ったんじゃないんだからね! ルームメイトとして当然のことでしょ! わたしはあくまでもルームメイトとして相談に乗るって言ったんだからね~~!」


 クラウディアの照れ隠しは廊下にまで響いていた。まだ教室にいた人たちや廊下を歩いていた人たちが少し驚いた。ただ、教室にいるクラスメイトはやはり生暖かい目でクラウディアを見守るのだった。



 イリスは、本部棟の前でクラウディアたちと別れると、校長室へ向かった。

 イリスが校長室の扉をたたく。


「すみません。イリスです。校長先生はいらっしゃいますか?」


 一瞬の沈黙があった後、ひとりでに扉が開いた。


「入りなさい。」


 奥からデボラ校長の声が聞こえた。


「よっ、イリス。」


 扉を開けたのはオーウェンだったようだ。


「イリスが何をしに来たのか当ててみようか?」

「わたしが何をしに来たと思うの?」

「今、イリスは一文無しだから、お金の相談をしに来たんだろ?」

「…正解よ。」

「オーウェン、無駄話はそれくらいにしなさい。」

「はい、すみません、校長。」


 オーウェンは上品に頭を下げた。オーウェンはそのまま校長室を出ていった。


「あの、お金はどうしたら良いですか?このままだと教科書やノートさえも買えない状態なので困っているんですが。」

「心配する必要はありません。」デボラ校長が机から袋を取り出した。「当分はこれを使いなさい。返す必要はありません。ベイリー家からの入学祝いと思ってください。」


 イリスはデボラ校長から封筒を受け取った。中身は硬貨が五十枚くらい入っているだろうか。この硬貨がすべて金硬貨で、部屋に帰った時にクラウディアにものすごく驚かれたのはまた別の話。


「ありがとうございます。それと寮とか授業料とかも必要ですよね?」

「それも心配いりません。寮費や授業料はオーウェンの家が払うことになりました。」

「そうだよ、だからもう心配はいらない。」


 いつの間にか校長室に戻ってきていたオーウェンは、木箱を抱えていた。


「教科書の心配もしなくて良い。ここに全部あるから。」


 オーウェンが木箱をポンポンと叩いた。


「は、はぁ…」


 イリスがあっけにとられていると、デボラ校長がイリスを見て口を開いた。


「今ここであなたに渡したのは、あくまで支給品のようなものです。これ以降のお金は自分で稼いでください。」

「っていうわけだから、バイト探しに行こうか!」

「えっ!?」


 オーウェンは木箱を片手に抱えると、イリスを扉へと促す。イリスは促されるがままに扉を開けて校長室を後にした。



 ここから先はとんとん拍子に進んだ。


 まず、イリスの寮の部屋に行って教科書やノートが入っている木箱を置いた。クラウディアはまだ帰ってきていないようだった。


 次にイリスが入学前にお世話になった宿屋に行った。そしてそこでオーウェンがイリスをバイトとして雇うことを宿屋の店主に頼んだ。店主は快く承諾してくれ、イリスはそこの食堂でウェイトレスとして働けることになった。




 授業やらバイトやらをしていると、すぐに最初の一週間が終わっていった。今までにない経験をこの一週間にして、イリスはとても充実感を感じた。

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