婚約破棄されたえんぴつ聖女~聖筆の存在理由を後々知ってももう遅い~
第四回なろうラジオ大賞参加作品第二弾!
「ジア・メルト! 俺はお前との婚約を破棄する!」
王太子ことマラン・ルーズ様が宣言する。
卒業パーティーの最中に。そのそばに、婚約者であった私ではなく、私と同じく聖女認定された少女達の一人にして、平民である私とは違い公爵令嬢であるマーガレット・ルフラ様を侍らせて。
「一番優秀な聖女を王族は妻に娶るこの風習に従いお前と婚約したがもう限界だ! お前は多くの聖女の要望を聞かず頑なに、昔ながらの伝統に拘り、木と黒鉛で作られた聖筆で結界を張ってたそうだな。使う度に聖筆を刃物で削らねばならない聖女の苦悩を考えた事があるか!? ケガした聖女もいるのだぞ!?」
全ては王妃様が風邪で寝込み。
国王様が用を足しに便所へ向かった後に起きた事だ。
ちなみに我が国における聖女とは、聖霊力を込めた聖なる筆――俗に言う鉛筆の特殊なモノを使い描く法円を以て結界を張り、魔物を国内に入れないようにできる存在の事。他国では、聖唱で結界を張るらしいが、これが我が国のやり方。地脈の関係でこうしなきゃ結界が張れないそうな。
「ルフラ家には、そんな問題を解決する力がある。ルフラ家で開発された新たな聖筆その名も『シャーペン』を以てすれば手をケガする心配はない! そして彼女は聖女の中でも優秀! より王族、そして人々の願いを聞き入れる聖女に相応しいのは彼女だ! 故に俺はマーガレットと婚約をし直す!」
パーティー出席者のほとんど――聖女の八割とルフラ派の貴族のみなさんが拍手する。一方で、私を始めとする平民聖女や、ルフラ派ではない貴族の方々は呆然としていた。
何言っても無駄だと判断し、私は簡単に挨拶してから辞去した。
まぁそれ以前に聖筆の力の詳細は、モノに流れる力の動きを把握できないような……最近増えてきた聖霊力が低い聖女や常人には分からないから、説明しようにもできないが。
ちなみに結界とは。
神木の聖霊力と黒鉛の持つ聖霊力、そして使用者の聖霊力の調和により生み出す特殊な聖霊力を込めた法円が生み出すモノ。
神木を用いない聖筆で対魔物用結界など張れるものか。
「お父さん、ごめんなさい」
しかし、父には謝っておく。
なにせ父は聖筆を作る業者だし。
「いや、謝る必要はない。ウチの聖筆も、ルフラ家の根回しなのか国内で売れなくなった。こうなったら、聖筆を理解してくれる別の国家に逃げるしかない。結界が弱まるその前にな」
そして私達が国外脱出した後……国は魔物により滅亡したらしい。
ちなみに聖筆による結界。
聖女の血が染みた聖筆で描くとさらに強化されます。
王虚の閃光みたいな?(ぇ
魔法陣は誤りで、正確には魔法円というらしいですね。