エピローグⅡ(その5)
和泉の口撃は止まらない。
「三者面談のとき、お父さんは光夜先生がかつての教え子と結婚していたことも、光夜先生が自分と同い年なことも知っていた。ということはお父さんと光夜先生はもとから知り合いだったのかもって考えて光夜先生に聞いてみたら、大学で同じ部活だったって答えてくれたけど、それ以上は教えてくれなかった。次に私は光夜先生の奥さんの詩さんに接触した。詩さんはお父さんのことをほとんど知らなかったけど、なんとその代わりにお母さんのことはよく知っていた。小学生になるまでしょっちゅうお母さんに預けられていて、赤ちゃんのときはおむつも替えてもらってたって聞いてびっくりした。お父さん同士もお母さん同士も知り合いなら家族ぐるみで仲良くなるしかないでしょ! って意気込んだけど、詩さんはなぜか乗り気じゃなかった。そこで私は光夜先生と詩さんの一人息子で十歳の海里君に接近して仲良くなった。家族ぐるみで仲良くなるという私の提案に海里君も大賛成してくれた。私たちはそのための作戦を練って――」
「くだらない」
ボソッとそう吐き捨てたのは流星だった。そう言いたくなる気持ちも分かるが、その一言で和泉の怒りのスイッチが入ってしまった。
「私は自分のためじゃなくてお父さんと光夜先生が仲良くできるように頑張ってるのに、その言い方はないんじゃない? お父さん謝ってよ!」
流星は無視して無言でハンドルを握りつづけている。自分に酔ってる和泉もまったく引かない。
「お父さん、ふだん私たちに誰とでも仲良くしなさいとか言ってるくせに、自分ができてないのはどういうわけなの? 親なら子どもの模範にならないといけないんじゃないの? 昔、光夜先生と何があったのか知らないけど、大人でしょ? 過去のわだかまりを乗り越えるかっこいいところを私たちに見せてよ」
ちょうど目的地の神社の鳥居の横を通りすぎたところだった。流星はチラッとそちらを見て、
「過去じゃない」
とつぶやいて和泉を失望させた。私も少し失望したが、もちろん口には出さなかった。




