13 ミサンガをつけた二人(その2)
田所主事を通して私は香織と会う約束をした。香織さんと会うことになったと光夜に伝えると、すでに姉の田所主事から聞いて知っていた。特に心配はしていないようだった。
会う日は私の誕生日からちょうど一週間後の土曜日になった。時間は正午。場所は市役所裏の広場。市役所の裏側は市街地への入口であり、待ち合わせにはもってこいのスペースではある。目印に二人とも腕にミサンガを結ぶことにした。梅雨時だから降り出しそうな空模様ではあるが、天気は今のところなんとか持ちこたえていた。
ただでさえ怒ってるであろう相手との待ち合わせに遅れるわけにはいかない。私がその場所に着いたのは11時15分。早すぎたが遅れるよりはいいだろう。
そういえば、ミサンガは願いを叶えるために身につけるアイテム。私は今日が無事に終わることを願った。できれば香織と友達になりたいが、さすがにそれは虫がよすぎるか。
ベンチはあったが座って待つのは失礼かと思い、立って待っていた。すると前から両腕にそれぞれ十本以上、派手なミサンガをじゃらじゃら巻いた若い女が近づいてきた。表情は笑ってはいないが、怒ってもいない。無表情に近い。来た! と私は身構えた。
「飯島香織さんですか?」
と話しかけると彼女はうなずいた。ボーダーのカットソーにベージュのロングスカート。しゃれているが落ち着いた感じもするコーディネート。話に聞いていた元婚約者のイメージ通りだと思った。
私の方は白いブラウスに黒いタイトスカート。もとから地味な服しか持ってないけど、その中でもこれ以上は無理というほどのビジネスライクなコーデにした。それはもちろん今日は香織の引き立て役になるくらいの気持ちでここに来たからだ。
「はじめまして、藤川小百合です」
「あなたが……」
香織はまるで神か悪魔でも見たかのように目を見張っている。
「失礼ですけど、お年が38歳というのは本当ですか?」
「今月で39歳になりました」
「はあ……」
「私の年がどうかしましたか?」
「光夜は私とつきあってるとき平気で浮気してました。でもあなたは光夜よりずいぶん年上なのに、彼はあなたとつきあい始めてからはほかの女に見向きもしないようです。正直負けたなって思いました。あなたの何がよくて、私の何がいけなかったのか、光夜をあきらめるにしても、それを知らないままでは私は先に進めない気がしました。そんな自分勝手な理由で年上のあなたをお呼び立てしてしまいました。すいませんでした」
「謝らなくていいです。それであなたの気がすむなら、私はいくらでもつきあいますから」
とりあえずランチでも食べながら話すことにした。どこのお店にするかは香織に任せた。私たちは市役所裏の広場を離れた。時間は11時30分。まだ待ち合わせ時刻の30分前だった。




