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私、崩壊  作者: 清水幸
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1 3人と47人と0人(その4)


 椿姫と18号の待ち合わせ時間は夜の六時。定時に退勤して待ち合わせ場所に急いだ。

 椿姫ももう36歳。ただのデートなら邪魔したりしない。でも18号(名前も知らない。姉は知ってるのだろうが)は既婚者。ほっとくわけにはいかない。

 私と18号との出会いが最悪だったことだけは確かだ。ちょうど十年前、桜子が結婚して家を離れる直前の頃だったと思う、姉は椿姫が出会い系で知り合った11号とラブホテルに行く約束をしたことをキャッチした。当時から桜子は妹のスマホの設定を勝手にいじって監視していた。もちろん椿姫はそのことに気づいてない。桜子には人の心を読む異能があると本気で信じている。

 ただそのときはホテルに入る前に椿姫を捕捉することができず、私たちは椿姫が男とホテルから出てくるのを外で待ち構えることしかできなかった。スマホから何度連絡しても無視された。

 数時間後、椿姫は男と歩いてホテルから出てきたが、私も姉も目が点になった。連れていた男は二人だった。目当ての11号ともう一人いた男。それが18号だった。桜子が男たちを怒鳴りつけた。

 「大切な妹をおもちゃにしやがって!」

 「お姉さんですか。誤解しないで下さい。僕らは椿姫さんの嫌がることなんて何一つしてませんから。そうだよね?」

 ニヤニヤ笑いながらそう聞いた男こそ18号だった。

 「うん。二人とも本当に優しかった」

 椿姫本人がそう言う以上、私たちにはそれ以上どうしようもなかった。

 そんなことが十年前にあった。また椿姫が18号と会うと聞いて、嫌な予感しかしない。18号は椿姫を〈思い出の場所に行こう〉と言って誘ったらしい。椿姫と18号の思い出の場所? 椿姫が二人の男と行為したあのラブホのこと?

 嫌悪感しか湧いてこない。私が恋愛に臆病になった直接の原因は二十歳のときの無様な失恋だけど、桜子の離婚騒動や椿姫の無軌道な性生活も小さからぬ要因となったに違いない。今さら二人を責める気はないけれどね。


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