6 ワンチャンください(その5)
トイレから出ると流星が待ち構えていて驚いた。
「どうしたの?」
「主幹の気分が悪くなったのはおれのせいかと思って……」
「それは違うよ。絶対に君のせいじゃないからそれは気にしないで」
「それならよかったです」
でも流星は全然よかったという顔をしていない。
「おれ、本気ですから」
「なんのこと?」
「おれの主幹への想いです」
「でも私には……」
「今の彼氏さんとのつきあいは長いんですか?」
「そんな長くないけど……」
というか出会ってまだ一日だ。
「結婚も考えてるんですか」
「子どもができたら結婚することになってる」
「おれは主幹が彼氏さんとの子どもを妊娠して結婚されることを祈ります」
「ありがとう」
「でももし妊娠できなくて彼氏さんと別れることになったら、おれにもワンチャンください」
「それは約束できないな」
「待ちますよ。何年でも。おれはちょっと前まで一生誰ともつきあわないと決めていた身でした。何年か待つくらいどうということはありません。ちなみに彼氏さんとはあと何年妊活するつもりなんですか?」
「あと三年……」
「おれが主幹とつきあえてもつきあえなくても関係なく――」
流星は酔っ払っていて顔は真っ赤だったが、その眼差しはどこまでも真剣だった。
「おれは主幹の幸せを願っています」
そこまで言うと、流星は踵を返して緒方主査と山口主任の待つ和室へと戻っていった。




