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私、崩壊  作者: 清水幸
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6 ワンチャンください(その3)


 母子係は係長の私を含めて五名の職員がいるが、若い女性職員一人が小さな子を見なければいけないという理由で歓迎会は欠席。今日の歓迎会は歓迎される主役の流星を含めて四名というメンツ。

 幹事が予約した居酒屋は初めて入る店だったが、なかなか雰囲気のよさそうな店だった。仕事が押したので宴会のスタートが一時間遅くなった。お店に迷惑かけたが、あらかじめ遅くなることを伝えてあったこともあって、お店の人から文句は言われなかった。

 「母子係の業務の円滑な遂行と係のみなさんのご健勝を祈念して、乾杯!」

 居酒屋のこぢんまりとした和室で、私の乾杯の音頭で宴会が始まった。

 なぜか朝から流星の機嫌がいい。両隣に座る二人から次々にお酒を注がれてるのもあるけど、初めから飛ばしてがんがん飲みまくっている。今夜の宴会の主役ではあるけど、機嫌がいいのはそれだけではなさそう。

 「三井君、今日は機嫌よさそうだけど、なんかあったの?」

 と聞いたのは今回の宴会の幹事で、執務室で私の隣に座る緒方拓也主査。私の部下だけど年は私より二つ上の40歳。奥さんと小学生の子ども二人との四人暮らし。担当業務はこども医療費助成など。

 「朝、藤川主幹が実は独身だったって知って、もしかしたらワンチャンあるかなと思って」

 ありません。というか私のプライベートを飲み会の場で言いふらさないで!

 「独身? 弁護士のご主人とは別れたんですか?」

 弁護士なんて知り合いにもいないのにどこからそんな話が出るのだろう?

 「緒方さん、失礼ですよ」

 そうたしなめたのは山口美奈子主任。29歳。彼氏も県職員で来年結婚予定。担当業務は児童扶養手当(児童手当ではない。母子家庭向けの現金給付)など。

 「主幹のご主人は16歳年上のIT企業のやり手社長ですよ。離婚なさったって本当ですか?」

 残念ながらIT企業の社長にも知り合いはいない。夫が16歳年上? 彼氏が16歳年下なんだがこの調子ではそう言ったところで信じてもらえそうにないな。

 「つまり主幹はバツ2ということですか? いいんです、おれ。主幹ならバツ2でもバツ3でも気にしませんから」

 流星はそう言うけど、私が君では嫌だと思ってるのは無視ですか? そうですか?

 「主幹は仕事の役職だけじゃなくて、つきあう男もどんどんランクアップさせてるわけか。だとすると次の相手が三井君になると大幅なランクダウンだから、三井君にワンチャンはなさそうだね」

 緒方主査が極めて失礼なことを言い出したが、失礼という点を除いてはその見解におおむね同意する。

 でもさすがに気の毒だから上司として少しは励ましてあげることにした。

 「あのう、お三方、先に言っておきますけど、私は一度も結婚したことありませんから。今恋人はいるけど、正直これから先どうなるか分からない。でもね、三井君、冗談でも16歳年上の女に気があるとか言わない方がいいよ。若くて元気な君なら本当は彼女くらいいるんじゃないの? 君の彼女さんが今君が言ったことを聞いたらどれだけ悲しむか」

 今恋人はいる――

 この部分は強調して言った。38年間言いたくて言いたくてたまらなかったセリフだから。

 でもお相手はどんな人と聞かれても困るな。16歳年下。ブラック企業勤務の無休薄給の社畜。親友の彼女と浮気して婚約者を裏切った鬼畜。第三者に自慢できる要素が何もない。

 一見、16歳年下というのは自慢になりそうな気もするが、男女逆転のパパ活だと思われるのがオチだ。実際預金通帳を見せてなびかせたわけだから、その見解はあながち間違っていない。

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