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私、崩壊  作者: 清水幸
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4 僕は君を軽蔑します(その2)


 そのとき私は大学二年生だった。11月に同じ大学の松本李久りくに告白されてつきあい始めたばかりだった。李久は私以上に真面目そうな人だったから、体目的ではないだろうと思えて私は即座に交際をOKした。数回のデートを経て、手をつなぐようにもなれた。今年のクリスマスは生まれて初めて彼氏と過ごせるんだなと私は浮かれていた。

 12月に入った頃、やはり同じ大学の学生で入学以来の親友の佐々木羽海が彼氏と別れたと泣いていた。

 「なんで別れたの?」

 「浮気がバレて」

 「ひどい! 浮気するような男なら別れて正解だよ」

 「違う。浮気がバレたのは私」

 目が点になった。

 「もう二度と浮気なんてしない。心を入れ替えるから彼氏とよりを戻す手助けをしてくれないかな」

 どうしようかなと思ったけど、内向的な私には羽海のほかに友達らしい人がいなかったから、断って疎遠になるのが嫌で協力してあげることにした。友達といっても、講義のノートを見せてあげたり、講義を欠席してるのに出席簿の羽海の欄にマルを書いてあげたり、私のギブばかりの関係だったけど。でも私に彼氏ができたことを話したとき、羽海は自分のことのように喜んでくれて、それは私も本当にうれしかった。

 私と羽海と羽海の彼氏の三人で会うに当たって、あらかじめ羽海と作戦を立てた。一度の浮気くらい許すべきだと私が主張し、いや許されないことしたんだよと羽海はしおらしく反省した姿勢を見せる。つまり私が悪者になり、羽海をよく見せる作戦。

 クリスマスイブのちょうど一週間前だったと思う。お昼頃、大学近くのカフェで羽海の彼氏と待ち合わせた。彼と会ったのはそのとき一回だけ。真面目そうな男だったような気がするが、名前もどんな顔だったかも覚えていない。

 私を見ていきなり聞かれた。

 「君は?」

 「彼氏さん、こんにちは。羽海の友達の藤川小百合といいます」

 「僕はもう羽海の彼氏じゃない。元カレでしかないから誤解しないでね」

 元カレさんは最初から戦闘モードだった。

 「本当は顔も見たくなかったんだ」

 と突き放す彼に、私は力説した。

 「一度や二度の浮気を許せないなんて心が狭いですよ」

 「淋しさに負けて浮気してしまったけど、羽海が愛してるのはあなただけです」

 「トラブルがあっても、羽海といて楽しかったときを思い出してそれを乗り越えていってほしい」

 元カレさんは無言のまま私をにらみつけるだけだった。

 「あの。言いたいことがあれば言ってください」

 それに対して返答があったが、答えたのは元カレさんではなかった。

 「ごめん。僕も心が狭いみたいで浮気を擁護する君の発言を許せそうもないよ」

 私の背中側のボックス席に座っていた男が立ち上がるなりそう言った。顔を見て呆然となった。その人は松本李久だった。

 「李久君、これはその……違うの!」

 「小百合さんは恋人がいても多少の浮気は許されるべきだという考えなんだね。僕は君の考え方を否定しないよ。ただ同じ考えの人と交際した方がいい。僕ではなくてね」

 李久は言うだけ言って私の弁解も聞かずすたすたと店外に出ていった。しばらくして李久からLINEが届いた。


 〈僕は君を軽蔑します。さようなら〉


 そのメッセージを最後に李久は私をブロックし、電話も着拒した。クリスマス目前、私の初恋は一ヶ月も経たずにあっけなく終わりを告げた。

 私は決して浮気を容認するような考えを持っていない。あくまで羽海をかばうために便宜上そう主張しただけだ。李久と別れたくなかった。でも今思えば友達のためとはいえ浮気を擁護するような屑は捨てられて当然だ。そんな屑は恋愛なんてしてはいけなかったのだ。屑は屑らしく誰にも愛されず淋しい人生を生きていけばいいんだ。李久に捨てられた私は、そのとき私自身も捨てたんだと思う。


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