3 与えられた夜(その1)
彼の名前はセックスする直前にやっと聞いた。
「村瀬光夜。光る夜と書いて光夜」
「かっこいい名前ね」
「名前を考えたのは父親らしいから、彼女が褒めてたって今度伝えますよ」
「光夜君って呼んでいい?」
「いいですよ。僕はあなたを小百合さんって呼びますね」
「小百合って呼んで!」
「無理ですよ」
38年間守ってきた(実際は誰も手を出してこなかっただけだけど)私の処女は、薄汚いラブホテルの狭くてけばけばしい部屋の中であっけなく散らされた。
「本当に初めてだったんですね」
処女を相手するのは面倒だと思う男もいるそうだが、光夜は喜んでくれた。今まで未経験だったことが恥ずかしくて仕方なかったけど、光夜の喜ぶ顔を見て未経験でよかったと初めて思えた。
でも感傷に浸っている暇はなかった。光夜は私を妊娠させようと愛してると言いながら何度も何度も私の中で果てた。午前二時を過ぎた頃、先に音を上げたのは私の方だった。
「光夜君、ごめん。これ以上は今日の仕事に差し支えそうだから、もう寝かせて!」
「小百合さんは社会人の鑑ですね。あなたの恋人になれて本当によかった」
「私こそ……」
人生経験では圧倒できるはずなのに、恋愛スキルの差はいかんともしがたく、ピロートークでは私は防戦一方に追い込まれた。光夜はニートにしては人間関係スキルが高い、というか女の褒め方がこの上なく上手。
「君に抱かれて私はようやく二十歳のときのトラウマを乗り越えられたような気がする」
そう答えるのがやっとだった。酒に酔い光夜に酔い生まれて初めての行為に酔った。酔い疲れて私は深い眠りに落ちた――




