第4章プロローグ 相談部顧問(候補)
お久しぶりです。
長い間更新をせず、大変申し訳ありませんでした。
本日より第4章をスタートさせていただきます。
第4章終了まで毎日更新させていただきますので、お付き合いください。
生徒の自主性を尊重する方針の強い我らが晴嵐学園は、その自由すぎる校風ゆえか問題児が多いことで有名だ。
その1人が俺、吉岡アツシである。
180cmを超える長身とソコソコのガタイの良さ、そしてどうやっても誤魔化しきれない目つきの悪さのせいで学園一の不良と呼ばれ恐れられている。
あとどうやら俺の自慢の金髪 (諸事情で今はほぼ坊主頭だ)も恐れられる要因となっているようだ。友人曰く、安っぽく染め上げられた金髪がチンピラ臭に拍車をかけているらしいが、俺は最高にかっちょいいと思っている。
そんな俺だが、不良扱いされていることを良しとしているわけではない。変に恐れられているせいで友人が少ないことに悩む品行方正な青少年であると自負しているぐらいだ。
しかし晴嵐学園に入学しておおよそ2ヶ月、悪目立ちする俺に関する悪い噂が学園に広まっている。
根も歯もない出鱈目だ。そんな噂のせいで不良扱いされるなんていい迷惑だと思う。
曰く、
・入学初日にクラスメイトをカツアゲした。
・放課後は毎日他校の不良と喧嘩に明け暮れている。
・中学時代には文化祭で暴れ回って文化祭そのものを潰した。
・公衆の面前で上級生の胸ぐらを掴んで恫喝した。
・柔道部の窓ガラスを叩き割った挙句、その罪を部員になすりつけた。
・入学1ヶ月で反省文を提出した。
…………まあ一部事実が含まれているが、誤差みたいなもんだろう。
そんな問題児扱いを受けている俺だが、実は学園一の問題児としてみなされているのは俺ではない。
俺なんて足元にも及ばない問題児、職員会議で毎回名前の上がる女、学園一の変人
それが桐花咲である。
『生徒の無許可の男女交際を禁ずる』なんて校則のあるこの学園に在籍しながら恋愛至上主義を掲げる桐花は、恋愛に関するちょっとした噂話を耳にすれば、あっちにふらふら、こっちにふらふら。
挙句のはてに恋愛探偵なんて名乗りを挙げて、学園中の揉め事を解決して回っている。
そんな桐花だが、ここ最近は『相談部』なる部活を作り上げようと尽力している。
『ホントは恋愛相談部って名前にしようとしたんですけど、この学園で恋愛って名前がついてるとみんな腰が引けちゃうんですよね。だから窓口を広く、どんなお悩みでも相談を受け付けますよ、という意味を込めて相談部と名付けました。まあ高校生が抱えているお悩みの99%は恋愛絡みなので私としては一切問題ないですね。相談部が出来上がれば恋の悩みを抱えた青少年たちから依頼が舞い込んで、私たちでそれを解決すれば依頼人はハッピー、私もハッピー。さらにそこから評判が上がって依頼人が殺到すれば山ほどの恋愛話がーー』
要するに、生徒の悩みを解決するという名目で自らの欲求を満たそうとしているのだ。
そんな桐花の目論みだが、達成まであと少しというところまで来ている。
部活動結成に必要な条件は部員4人に顧問1人。このうち部員4人という条件にはさらに細かい規則があり苦労したのだが、彼女たちが抱える悩みを解決する代わりに幽霊部員になるという交換条件のもと、なんとか俺と桐花を含めた部員4人を集めることに成功した。
そんな部員集めにかかった時間はおおよそ2週間。その間地味に高校初の中間テストなんてイベントがあったりもしたのだが、俺と桐花は部員集めるために依頼をこなす日々を送っていた。
そして気がつけば6月。
衣替えで涼しい夏服で登校できるようになったこの季節に、ようやく部活成立の目処が立ち始めた。
後は顧問を見つけるだけ。
桐花は以前顧問に当てがあると言っていた。
その言葉に嘘はなかったようで、桐花は俺たちが現在根城にしていて相談部の部室になる予定となっているボランティア部の部室に、1人の教師を呼び出していた。
その人物はなんと、俺のクラスの担任教師の清水早苗女史だった。
ピンと伸びた背筋に、キリッと着こなしたスーツ。
長く美しい髪は綺麗にまとめ上げられている。
「……桐花さん」
部室の中心に置かれた長机を挟み、俺たちの対面に座る若き美貌の女教師は、憂に満ちた表情でゆっくりと口を開いた。
「……私、どうしたら結婚できるかしら?」
「結婚相談所に行ってください」
本日中にもう一話更新します。




