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恋に恋せよ恋愛探偵!  作者: ツネ吉
第3章 姉にできることはまだあるかい
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第一ミッション 服装を褒めよう

「ーーで、結局行き先は地元の大型商業施設というなんの面白味もない場所に決まったわけですが」

「無難と言え無難と。良いじゃねえか○オン」


 この街で一番でかい施設だ。中には映画館からゲーセン、確かボウリング場やらのレジャー施設もある。レストラン街とフードコートもあるため、遊ぶところも飯を食うところにも困らない。中学生のデート先としては上等だろう。


「確かあそこにはとても大きな書店があったはずだ。弟も彼女さんも楽しめるだろう」

「むう。私も異論はありませんが、個人的にはもっとインパクトと言いますか。一生の記憶に残って、この初デートがあったからこそ結ばれたのだと後々思い返すことができるようなものにしたかったんですけど」

「夢見すぎだっつの」


 中学生の初デートに何を期待しているのやら。


「秋野、これで満足か?」

 

 結局俺たちが決めたのはデート先だけで、その後のプランは流れで。なんてなんとも投げやりなものだった。もっとも行き先が行き先だけに綿密なプランなど立てようがないのだが。


 あとはハンカチを持って行くことや、昼食にはラーメンなんかの汁が飛んで服が汚れる食べ物はNG。と言った簡単なアドバイスをしただけになる。


 こんなので満足してくれるのか不安だったのだが、秋野は笑ってOKを出してくれた。


「ああ。正直私1人だと難しく考えすぎて結局決めることができなかったと思う。ありがとう桐花さん。吉岡くん」

「じゃあ、部活入ってくれるんだな?」

「もちろん。ただ……」

「ただ?」


 急に言い淀む秋野に首を傾げる。


「図々しくて申し訳ないのだが、これとは別にもう一つお願いを聞いてもらえないだろうか?」


 本当に申し訳なさそうな顔をしてくる。


「今度の休日、私と一緒に弟のデートを見守ってほしいんだ」

「……へ?」

「つまり、バレないように弟のデートがうまくいっているか近くで見たい」

「それって、弟をストーキングするってことか?」


 おいそれはいくらなんでも、と言おうとしたが秋野が思いっきり頭を下げてきたため言い切れなかった。


「頼む! 弟のデートが気になって家でじっとしてられないんだ。かといって私1人だと暴走して弟に見つかる恐れがある。理想を言えばこの3人で弟のデートを陰から見守りつつ、私の暴走を2人に止めてもらい、弟が何かミスをしそうになったらバレないようさりげなくフォローしてほしいんだ!」

「理想が忙しすぎる!」


 どれだけのことを俺たちに望んでるんだこの姉は。


「秋野さん」

「き、桐花さん。やはりこんなお願いは無理だろうか?」


 すがるような目で桐花を見る秋野。桐花はそんな秋野に微笑みを返す。


「安心してください。私は秋野さんに言われるまでもなく、弟さんのデートをガッツリ至近距離から見る予定でしたから」

「ほ、本当か桐花さん。ありがとう!」

「秋野、そこは絶対お礼を言う場面じゃねえからな」


 姉として怒るべきだろうそこは。


「さあ皆さん。弟さんの未来のため秋野家の未来のためにも、この初デートを見事成功させて見せますよ!!」

「おう!!」


 と、こんな感じで俺の意思は置いてけぼりのまま、貴重な休日を中学生の初デートをストーキングして過ごすことが決定してしまった。



 そしてなんやかんやあって日曜日。


 途中何度もサボってやろうかと考えながらも、でもサボったらあいつ後からギャーギャーうるせえだろうな、と思うと結局行かざるを得なく。その事実にうんざりしながらバスに乗ってしばらく。俺は待ち合わせ場所にたどり着いた。


「あ、やっと来ましたね吉岡さん」


 桐花と秋野は既に到着して、自販機横のベンチに座りながらジュースを飲んでいた。


「悪い待たせたか?」

「いえ、私も秋野さんもさっき来たところです。まだ予定の時間前ですよ」


 そっか。なんて言いながら俺も自販機で炭酸を買う。今日は非常に天気が良く、6月の初旬にもかかわらず初夏のような陽気であった。グビリと炭酸を飲むと心地よい冷たさが喉を通っていく。


「ふう、沁みるなあ」

「いや、何呑気にジュース飲んでるんですか」

「ん? 何が?」

「仮にも女の子と待ち合わせてしてるんですよ? 服装を褒めるくらいのことはしてもいいじゃないですか」


 そう言って桐花は全身が良く見えるように両手を広げる。そういやこいつの私服を見るのは初めてだった。


 まあ似合ってるっちゃ似合ってる。


 だけどそのドヤ顔が気に入らなかったので褒めるのはやめた。


「あー、秋野。その服似合ってるな」


 秋野の服装はパーカーにジーンズとシンプルなもの。頭にはベースボールキャップをかぶっていて長い髪を隠している。手足が長いからか、そんなスポーティな服装がよく似合っていた。


 秋野は俺の褒め言葉に苦笑いで返した。


「ありがとう。一応変装用の格好だから普段はあまり着ない服なんだけどね」

「って、違いますよ! まず普通に考えて私からでしょう! ほら、よく見てください!」

「えー」


 めんどくせえ。褒めても調子に乗ってめんどくさそうだし、下手に貶したらもっとめんどくさそうだ。


 そう思いながら桐花の服をじっと見る。長袖のシャツにサスペンダー付きのショートパンツという装い。背中には大きめのリュックサックがある。


 活発な印象のある桐花によく似合ってるとは思う。ただ今日は気温が高いということを差し引いても脚を露出しすぎではないかとも思った。


 そんなことを考えていたのを見透かされたのか、桐花はからかうようにニヤリと笑った。


「おや。私の脚が気になりますか? いやー、我ながらなかなかの美脚だとは思いますが」


 ほれほれ、といった感じで脚を強調してくる。


 ふむ。まあ本人が自慢するだけあって綺麗な脚してるとは思う。普段からこんな服装で外を出歩いているのか、引き締まったその脚が適度に日焼けしているのも健康的でポイントが高い。


 ただーー


「ふん。膝小僧の絆創膏さえなけりゃな」

「なっ!!」


 なんだこいつ、小学生男子か。


「ち、違います! これは今日来る時に転んじゃったから仕方なく!」

「うるせー。どうせ今日のストーキングが楽しみすぎて文字通り浮足だったんだろ、この小学生が」

「い、いやそれは否定しませんが。ともかく違いますからね! 普段から膝を怪我してるような小学生じゃありませんからね! ねえ聞いてますか!? 吉岡さん!!」

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