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恋に恋せよ恋愛探偵!  作者: ツネ吉
第3章 姉にできることはまだあるかい
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姉ゆえに

本日2話目となります。

「初デート?」


 一瞬秋野の言った言葉の意味が飲み込めず聞き返す。そんな鈍い俺とは反対に桐花の反応は劇的なものだった。


「は、初デート⁉︎ 秋野さんがですか!? お相手は一体誰ですか!!」


 いつの間にか取り出したのやらメモ帳を片手に秋野に詰め寄っている。


「お、落ち着いて。デートをするのは私ではなく、私の弟だ」


 興奮する桐花を諌めながら苦笑いを返す。


「そうだな、一から説明させてもらおう。私には中学生の弟がいるんだが、最近彼女ができたらしくてな」

「お相手は!?」

「桐花落ち着け」


 この女、目の前に大好物をぶら下げられて目が血走っている。


「同じ中学のとなりのクラスの女子だ」

「なるほど、王道のパターンですね!」

「王道なのか?」


 ありきたりではあるが、王道とまで言い切る桐花の感性がわからない。


「ところがね、付き合ったきっかけがなかなか変わっていてね」

「ほうほう」

「弟が趣味でやっているSNSきっかけらしい」

「Oh……イマドキ」


 なぜかカタコトになる桐花。頬が紅潮しているのを見る限り歓喜によるものだろう。


「もうちょっと、もうちょっと詳しくお願いします!」

「……欲しがりめ」

「なんでもSNS上で親しくなったフォロワーが偶然にもその彼女だったらしくてね、学校で向こうから直接声をかけられたそうだ」

「ん? なんでその彼女は自分がフォローしている相手が弟くんだと気づいたんだ?」


 SNSでフォローしている人物がたまたまとなりのクラスの男子だった。なんて偶然はあるにはあるだろうが、その事実に気づけるかどうかは別の問題のはずだ。


 そのことを疑問に思っての質問だったのだが、秋野はなんでもないように答えた。


「弟はSNSを実名でやってる上、出身中学から家族構成まで公表してるんだ」

「……あのな、弟くんにもっとこう、ネットリテラシーをだな」


 大丈夫なのか? いくらなんでも無防備すぎる。


「そのお陰という言い方もなんだが、弟とその彼女が付き合うきっかけができたわけだ。元々趣味繋がりでお互いをフォローしていた関係だから話が合うらしくてね、付き合うまで時間は掛からなかったんだと」

「なるほど、SNSという広い世界の中で偶然にも身近な存在と繋がっていたと。運命はどこにでも転がっている、大事なのはその偶然を掴み取るチャンスを逃さないかということですね」


 桐花がなんだかよくわからないことを言っている。


「それで今度の休日に初デートに行くことが決まったらしいのだが、弟にそのプランが思いつかないと泣きつかれてな」

「……弟が姉ちゃんにデートのプランを考えてくれって頼んだのか?」


 マジかよどんだけ仲良いんだこの姉弟。俺にも姉貴がいるが、デートのプランを頼もうなんて絶対に思わない。むしろ彼女ができたらそのことを徹底的にバレないようにする。


「全くしょうがない奴だ。昔から何かあれば姉さん姉さんと甘えて来てな」


 そう言いながらも秋野の顔は綻んでいる。


 ああ、この人ブラコンなんだ。多分桐花も同じ感想を抱いたのだろう、何か言いたげだがぐっと飲み込んだ顔でこちらにアイコンタクトをしてきた。


「だが問題があってな。私は恋愛経験がなくデートなんてしたこともない。デートのプランを考えてくれと言われてもさっぱりだ」

「それを俺たちに考えてくれと?」


 よりにもよって人の恋愛ネタ大好きの桐花(学園一の変人)に?


「本来であれば友人に頼むのがセオリーなんだろうが、どちらかといえば私は友人から相談を受けるタイプでね」

「なるほど、それが仇となってこちらから相談がしにくいということですね?」

「その通りだ」


 秋野はそう言って困ったような笑顔を見せる。


「だから頼む。私の代わりに初デートのプランを考えてくれ。このデートには弟の……いや、秋野家の未来がかかっているんだ!」

「秋野家の、未来?」


 急に話が飛んだ気がする。なんでここで家の話が出てくるんだ?


「だってそうだろう? 弟の彼女ということは将来的に私の義妹になるということだろう?」

「……気が早くねえか?」

「私と弟、どちらが秋野家を継ぐかわまだわからないが、どちらが後継者となっても一緒に秋野家を盛り立てていくと誓い合っている。当然、弟の伴侶となる彼女も一緒にだ」

「気が早い」

「ゆくゆくは、私の甥か姪もーー」

「気が早すぎる!!」


 どこまで見据えた将来設計なんだこれは?


「中学生の恋愛にどこまで求めてるんだあんたは!? まだ初々しい初デートの段階だろうが!」

「いやしかしだな、あちらから男女交際を持ち込んだということは、秋野家に嫁入りする覚悟があるということだろう?」

「なわけねえだろ! ぜってえそこまで考えてねえよ! なんだその明治時代みたいな貞操観念は!!」


 中学生の段階から結婚を見据えた交際を考えている人間なんて、現代ではまずいないだろうに。


 秋野のぶっ飛んだ恋愛観に頭を悩ませていると、しばらくの間無言だった桐花がゆっくりと口を開いた。


「……中学生のカップルが順調に交際を重ねていき、将来的に結婚する確率がどれくらいかご存知ですか?」

「は?」


 急に何言ってんだこの女?


「とある調査会社によると5%もないそうです。つまり95%以上のカップルは結ばれることなくバッドエンドを迎えるということです。それはとても悲しいことだと思いませんか?」

「桐花?」

「そんな悲しい結末私は絶対に許しません! 秋野さん安心してください、私が弟さんをハッピーエンドである結納まで導いて差し上げます!!」


 だめだ。桐花に火がついた。


「初デートを成功させる秘策は、この恋愛探偵、桐花咲にお任せあれです!!」

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