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恋に恋せよ恋愛探偵!  作者: ツネ吉
第3章 姉にできることはまだあるかい
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第3章プロローグ 部員候補その2

大変長らくお待たせしました。

第3章開幕です。


今日中にもう一話追加した後、第3章完結まで2日に一度のペースで更新していきます。

 桐花咲(きりはなさき)という女について俺が知っていることは少ない。


 まあそれも当然というべきか。あいつと出会ってまだ1ヶ月と経っていないのだから。


 見た目だけなら小柄で可愛らしい少女だ。やや茶色がかったショートカットの髪に赤縁のメガネがよく似合っている。


 元々妙な噂話が出回っている女だった。喋る相手のいない教室でボーッとしてると嫌でもあいつの噂が聞こえてきた。


 曰く、


・3度の飯よりも恋愛話が好きである。


・普段からその恋愛話を集めるためにメモ帳片手に学園中を彷徨いている。


・恋愛話を集めるためなら手段を選ばない。


・恋人たちの聖地である学園の屋上がお気に入りでよくそこに出没している。


・学園一の変人である。


 まあ出るわ出るわ奇妙な噂が。


 それを聴きながら俺はくだらないと思っていた。


 俺自身そう言った噂話に振り回されて来た側の人間だ。時に悪意も混じった面白半分の噂話などあてにならないことは、この俺が誰よりも知っていた。


 だからこそ、どういう偶然なのか桐花と関わる機会が増えた俺はそういった前評判を極力忘れるように努め、俺自身の目で桐花という女を見極めようと思っていた。


 その結果、この1ヶ月であいつについてわかったのがこれだ。


・3度の飯よりも恋愛話と謎解きが好きである。


・普段から恋愛話と面白そうな謎を集めるためにメモ帳片手に学園中を彷徨い、首を突っ込んでいる。


・目的のためなら手段を選ばず、人を巻き込み振り回すことを一切躊躇しない。


・恋人たちの聖地である学園の屋上を出禁になった。


・俺の人生で出会った人間の中でぶっちぎりの変人である。


 …………噂話はほぼ真実である上、前評判よりも印象が悪くなってないか?


 何はともあれ、こんな女に借りを作ってしまったのが運の尽き。俺は桐花の部活作りに付き合わされる羽目になった。


 こいつが作ろうとしている部活は人の悩みを聞いてそれを解決する部活らしい。それを聞くだけなら立派な活動内容だが、その実態はおそらくこいつの好物である恋愛ネタを向こうから持ってこさせるための恐るべきものだ。


 部活設立のために必要な部員は4人。現状だと桐花と俺、そして前回悩みを解決することと引き換えに部活に入るという悪魔の契約を交わした樹このはと言う女子生徒で合わせて3人。


 あと1人。


 そしてーー


「初めまして。1年の秋野楓(あきのかえで)だ」


 その最後の1人となるかもしれない女子が俺たちの目の前にいる。




 すっかりお馴染みとなり、そして桐花が最終的には合法的に自分達のものとすると豪語しているボランティア部の部室。そこで最後の部員候補である秋野楓という女子と俺たちは対峙していた。


 スラリとした体躯の女子だった。そこまで背は高くないはずなのに姿勢の良さのお陰で俺らよりも年上に見える。


 長く艶やかな髪を頭の高い位置で結んでおり、それがちょんまげっぽく見えるせいかなんとなく武士を思わせる女子生徒だ。


「それで桐花さん。私にお願いがあるって言っていたけど、一体何かな?」

「……桐花ちょっと」


 爽やかな笑みを浮かべる秋野に聞こえないよう、桐花に耳打ちする。


「お前、秋野になんの事情も説明しなかったのか?」

「はい」

「……よくここまで来てくれたな」


 学園でもトップクラスに胡散臭いこいつによくそこまで無防備になれるもんだ。学園でもトップクラスに評判の悪い俺を前にしてあの笑顔なのも驚きだ。


「私だってちょっと驚きましたよ。お願いがあるから相談させてくださいと言ったら、二つ返事で了承してくれましたもん」

「……とんでもねえお人好しだな」


 そんな人の良い秋野を騙しているようで心が痛む。もちろんお願いがあるのは事実だし嘘はついていないのだが、これから行うのは悪魔との契約だからな。


「あー、2人ともどうしたのかな?」

「なんでもありませんよ」


 怪訝そうに声をかける秋野に向かい合い、桐花はコホンと咳払いをする。


「秋野さんにお願いしたいことというのは他でもありません。私たちが作る部活に入っていただけませんか?」

「部活?」

「はい。秋野さん部活に入ってませんよね? そこで名前だけでも貸していただけるとありがたいのですが」

「なるほど、あのルールだね?」


 部活設立時のルールに、設立時の部員は他の部活に在籍していてはいけなく、設立以降半年間他の部活で活動することはできないというものがある。なんでも部活動の乱立を防ぐためのルールらしいのだが、この面倒なルールのせいで俺たちは部員集めに苦心することとなっている。


「確かに私は家業のせいで部活動に入っていないし、今後も入る予定はない」

「家業?」

「ああ。秋野家は代々道場を運営していてね、私はその手伝いをしているんだ」


 道場か。合気道とか薙刀とかそっち系かな?


「良い人材でしょう? こんなに都合のいい人そんなにいませんよ?」

「確かにその通りだけどよ、本人目の前にいるからな?」


 いい笑顔でサムズアップをする桐花が妙に憎らしい。


「部活か。まあ名前を貸すのはやぶさかではない。しかし何をする部活なのだ?」


 当然の疑問だ。


 その質問に対して桐花は胸を張って答える。


「人々の悩みを聞き、それを解決する崇高な部活です!」


 嘘つけよ、お前の欲望を解消が目的の崇高とは程遠い部活じゃねえか。という言葉をグッと飲み込んだ。


「なるほど。人々の悩みを解決する。か」


 秋野はそう言うと口元に手を当てて何やら考え込んだ。


 そして顔を上げて俺たちにこう提案してきた。


「ならば交換条件というわけではないが、君達が作る部活に入る代わりに、私の悩みを解決してもらえないだろうか?」

「悩み?」


 秋野はこくりと頷く。



「私の代わりに、初デートのプランを考えて欲しい」

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