オカ研のアレ
晴嵐学園1年、オカルト研究部部長三浦琴。
オカルト研究部は彼女の入部と共に他の先輩が引退した挙句、入部した1年生が彼女一人だったため1年生ながら部長職を任されているそうだ。
そんなオカ研は部員一人の弱小部であるにも関わらず、三浦琴のある特技のおかげでこの学園の注目を集めている。
その特技とは占い。
それも俗に言う恋占いであり、その特技目当てにオカ研には恋に悩む大勢の生徒たちが連日相談に訪れているそうだ。
無断恋愛が禁止されているこの学園で評判になるほどの恋占いなんて、一体どれだけすごいことなのか想像できるだろうか?
どのような恋愛相談がオカ研で行われているのか知る由もないが、占いなんてどこかアンダーグラウンドな香りがするものを用いられた恋愛相談に対して全くネガティブな評判がないあたり、相当的確なアドバイスをしているのだろう。
そのような経歴もあって、オカ研の三浦と言えばこの学園の恋愛マイスターとしてその名を馳せている。
「つまり私の敵です!!」
「お前敵多いな」
人生楽しそう。
マスメディア部から依頼を受けて2日目。桐花が部室で吠えていた。
「許せません! 何が恋愛マイスターですか! その称号は本来私のもののはずなのにっ!!」
「例え三浦が称号を辞退しててもお前のものにはならねえよ」
自身の恋愛経験がないこいつはどちらかと言えば恋愛下手だ。マイスターを名乗れるだけのアドバイスができるとは思えない。
「というか、三浦のやってることはお前のやりたかったことなんだろ? 気が合いそうだし、仲良くすりゃあいいじゃねえか」
「かぁー、ぺっ! ぺぺぺぺっ、ぺぇぇっ!!」
「……本当この女は。ガラも行儀も悪い」
仮にも男の前でこんなことするか?
「吉岡さんありえませんよ。いいですか、私は占いなんて全く信じていないんです」
「まあ、知ってるけど」
ここ数日の心霊相談で新たに知った事実だ。
この桐花という女は占いに限らず、オカルトの類を全くと言っていいほど信じちゃいない。変なところで現実主義なのだ。
「というか、占いに関しては嫌いなぐらいですね。馬鹿馬鹿しいじゃないですか運命とか。恋ってその人たちが積み上げてきたもので成就させるべきじゃないですか。運命なんて、まるで最初から結果が決まってるみたいで嫌なんです。それは努力を否定する言葉でしょう?」
「へえ……」
意外な見解だった。
やはりこいつは恋愛に関しては真摯だ。真剣に考えた上で占いというものを嫌っているらしい。
だがーー
「でもよ、占いの結果で一喜一憂している恋人たちを見るのは?」
「超好きです!!」
「……めんどくせえ生き方してるよな、お前って」
その生き方に俺を巻き込んでくるあたりタチが悪い。
「そもそも恋愛相談を独り占めしているような人と仲良くなんて無理です」
「独り占めって、めちゃくちゃ言いやがるな」
今日はこんな恋愛相談を受けました、一緒に解決しましょう。なんてなるわけがない。
「他の人達も、なんで占いなんて胡散臭いものに手を出しますかね? 恋愛相談に関してならこの私がいると言うのに!!」
「そりゃあ、お前と占いだったらお前のほうが胡散臭いからだろ」
机の下で向こう脛を蹴り飛ばされた。
「あー気分が悪いです。あの無表情な顔を思い出しただけでムカムカしてきました」
「とうとう顔にまで文句をつけ始めたぞ」
「いいですか吉岡さん。ああいう表情が乏しい人は自分のやましい部分が表に出ることを恐れて無表情を貫いてるんですからね」
「ひっでえ偏見だ」
坊主憎けりゃ袈裟まで憎いをここまで体現するとは。
「しかも何が腹立つって、恋愛相談独り占めするくせに心霊相談は相談部に丸投げして来るところですよ!」
そう。
ここ数日俺たち相談部に心霊相談を持ち込んだ依頼人たちは、口を揃えてオカルト研の三浦に紹介されてきた、と言ってきたのだ。
「意味がわかりません。心霊相談なら本来はオカ研の領域でしょう? それをうちに回すなんて何考えてるんですか?」
「まあ、あれじゃね? 単純にめんどくさくてちょうど良さそうなところを紹介したんじゃねえの?」
「私たちを便利屋扱いするなんて何考えてるんですか!!」
元々便利屋みたいなものだろうに。
「あの人のせいで私は……私はですね……」
怒りのせいか、桐花の肩がワナワナと震えている。
「面白い謎解きをたっぷりと堪能してしまったではないですか!!」
「じゃあ良いじゃねえか」
何が不満なんだよ。
三浦憎しの感情が先走りすぎて言動が意味不明になっている。
「あのなあ、お前がどれだけ気に食わなかろうが、俺たちの依頼主であるマスメディア部が三浦の同行を認めたんだぞ?」
調査に同行させて。
そう言った三浦をマスメディア部、特に神楽坂先輩が喜んで受け入れた。
オカルト研だけあってその手の知識は豊富だろうし、何より百目鬼先輩と同じくこのオカルトブームの裏には仕組んだ誰かがいると考えている。
神楽坂先輩の野望であるブームを作り上げた黒幕を探すのにこれ以上ない助っ人だろう。
「わかってます。わかってますけど、正直変です。だって私たちが怪談を調査し始めたその日にたまたま同じように調査を行なっていた三浦さんとかち合うなんて、そんな偶然があると思いますか?」
「そりゃあ同じ怪談を調査してたんなら、そういう偶然もあるかもしれないだろ? なんだ、三浦に裏でもあると思ってるのか?」
「ええ。私は怪しいと思ってますよ」
そう言って桐花は立ち上がる。
「集合時間、まだ余裕ありますよね?」
今日の調査を始める前に、一旦この相談部に全員集まることとなっている。
「ああ。まだ30分ほどある」
スマホで時間を確認しながらそう告げると、桐花は部室から出て行こうと扉を開けた。
「どこ行くんだ?」
「被服室です。昨日の怪談について、ちょっと気になることがありまして」
「俺も行くか?」
「いえ、少し話を聞いて来るだけなので」
そうか。なら俺は少し留守番だな。
そのまま桐花を見送ろうとしたが、立ち去る直前に桐花はこんなことを言ってきた。
「そうだ、アレが来ても神聖な部室に入れないでくださいよ」
「アレって……そんなわけにはいかねえだろ」
「来たら塩撒いてください」
「オカルト否定派のくせにその微妙な宗教っぽさはなんだよ」
あまりの物言いに呆れているうちに桐花は部室から出ていった。
それから2、3分経った頃。
コンコンと小さなノック。
「はいはい、開いてますよ」
扉を開ければ昨日見た日本人形のような女子生徒。
三浦だ。
「早いな。まだ時間あるぞ」
「今日は暇」
そんな短い返答が返ってくる。
桐花は入れるな、なんて言ってきたが、当然俺がそんな冷たい対応を取るわけがなく、三浦を部室に招き入れる。
物珍しいのかキョロキョロと室内を見渡す。
「部長さんは?」
「部長さん? ああ桐花か。被服室に用だと、すぐ帰ってくるだろう」
「そう」
そう呟くと、なぜか三浦はじっと俺の顔を見つめてきた。
「……女難の相が出てる」
「へ?」
「あなた、女性関係で苦労しそうな顔をしている」
「いやいや、俺の女性関係なんて。普段相手してるのは桐花くらいしかーー」
と、そこで言葉を切り今までのことを思い出す。
「苦労……してます……!」
心当たりしかない。
すげえ、さすがオカ研の三浦。一発でそのことを見抜くとは。
「どうする? 今暇だし、見てあげても良いけど」
「お願いします!」
俺は一も二もなく三浦の言葉に飛びついた。
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