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恋人のいる幼馴染みの彼女に好きと言っても、もう遅い。彼女はあいつのモノだから

作者: 来留美

 彼女は毎日のように俺の家へ来る。

 俺の部屋で。

 俺のベッドで。

 ゴロゴロしながらたまに寝る。

 そんな彼女を俺は毎日のように隣で見ていた。

 それなのに最近、彼女はそれをしなくなった。

 何故なのか俺が気付いた時にはもう、彼女は俺の隣から遠く離れていた。


 そんな彼女は俺の大好きな幼馴染み。


 今日も窓から外を見ると彼女の家の前で男が立っている。

 俺はそいつを知っている。

 そいつは俺と彼女の幼馴染み。

 そう俺達、三人は幼馴染みなんだ。

 そして彼女とあいつは付き合っている。

 俺はあいつに彼女を取られたんだ。


 彼女が家から出てきてあいつと手を繋ぎながら学校へと歩いている。

 俺はそんな二人には会いたくないからいつも学校は遅刻する。

 俺の大好きな彼女はあいつのモノになったのに俺は諦めきれずにいた。


「ねえ、最近どうして遅刻ばかりするの?」


 学校に遅刻して行った俺に彼女が話しかけてきた。


「君には関係ないから」

「関係あるよ。幼馴染みでしょう?」

「朝、寒くて起きられないだけだよ」

「あなたって朝、起きられない人じゃなかったよね?」

「最近、寝るのが遅いから」

「またゲームばかりしてるの?」

「そうだよ」

「勉強をしなさいよ」

「君もあいつとばかりいないで勉強したら?」

「えっ、彼とばかり一緒にいないわよ」


 彼女は顔を赤くしてうつむいた。

 照れている彼女は可愛いのに、その照れている理由があいつだということがムカつく。

 彼女はどんどん俺の隣から離れていく。



「また今日も遅刻よ」


 いつものように俺は学校へ遅刻して行った。

 そんな俺に彼女が話しかけてきた。


「俺の遅刻はなおらないから、もう心配しないでくれよ」

「ダメよ。そんなに遅刻してたらあなたの印象が悪くなるじゃない。あなたはとってもいい人なのに」

「俺の何を知ってんの?」

「あなたとはずっと一緒にいるのよ。あなたの良いところはたくさん知ってるわよ」

「そのたくさんを教えてよ」

「いいよ。あなたは誰よりも優しくて、誰よりも思いやりがあって、誰よりも気配りができて、誰よりも人の気持ちに敏感で、誰よりも人の嫌がることはしないよ。まだまだあるけど聞く?」

「もういいよ」


 俺は赤くなっているであろう顔を彼女に見られないようにうつむいた。


「ねえ、何があったの? 最近あなたは変よ」

「何もないから。君が心配することはないよ」

「そう? 何か悩みがあるなら言ってよ。あなたは友達なんだからね」

「分かった。何かあったら言うよ」


 俺は彼女の友達なんだ。

 あいつは恋人なのに。

 同じ幼馴染みなのにどうして友達と恋人になったんだ?

 俺の何がいけなかったんだ?

 あいつは何が良かったんだ?

 俺とあいつの違いは何なんだ?


◇◇


 俺がいつものように彼女の家の前を見ると、あいつが待っていた。

 しかし、あいつは一人で学校へ行ってしまった。

 俺は不思議に思い彼女に電話をかけていた。



「もしもし」


 彼女の声で俺は彼女の異変に気付いた。


「おはよう。もしかして風邪でもひいてる?」

「おはよう。そうだよ。熱が下がらなくて」

「薬はある?」

「ないの」

「俺の家にあるから持って行くよ」

「本当? ありがとう」


 そして俺は薬を持って彼女の家へ向かった。


「ありがとう。助かるよ。昔からあなたの風邪薬を飲むとすぐなおるんだよね」

「薬は何でも同じだろう?」

「違うの。私が高校受験の前の日に熱が出たことあったでしょう?」

「そう言えば、そんなことがあったような」

「あの日、朝は彼の薬を飲んでも熱が下がらなくて、昼にあなたの薬を飲んだら熱が下がったのよ」

「そうだったんだ」

「その話を彼にしたら病は気持ちの問題だからねって言われたの」

「どういう意味?」

「私も彼が何を言いたかったのか分からなくて聞いたんだけど彼は治ったんだからもう、いいじゃんって言って分からないままなの」

「あいつも意味なんて考えないで言ったのかもしれないよ」

「そうね」

「さあ薬も飲んだし、熱を下げる為に少し寝なよ」

「うん。あなたは学校に行ってよ。今日は遅刻しないでよ」

「今日は遅刻しないよ。君が早く寝てくれればね」

「えっ、遅刻を私のせいにするの?」

「しないから早く寝なよ」


 俺は彼女にそう言って頭を撫でた。

 彼女は文句を言いながら薬を飲んで眠くなったのか目を閉じた。


「おやすみ」


 俺が言った言葉は彼女の耳には届いていないようだ。

 俺は眠った彼女の寝顔を見ながら頬に手を当てた。

 熱のせいで体温が高い彼女の頬は赤く色付いていた。

 彼女は一時間ほどすると目を覚ました。


「どうしてまだいるの?」

「君が心配だから」

「あなたは私に心配しなくていいなんて言ったのにあなたは私を心配するのね」

「辛そうにする君を心配するのは当たり前だよ」

「私だって辛そうにしているあなたを心配するのは当たり前よ」

「俺って辛そうにしてた?」

「うん。辛そうにしているあなたを見たのは初めてよ」

「俺って今まで幸せそうに見えてたってこと?」

「ん~、どうなんだろう? でもあなたは私の隣でいつも笑ってたよ」

「俺が笑ってた?」

「うん。私が国語の教科書を忘れたって言ったらあなたは笑って私に教科書を貸してくれたでしょう?」

「その笑顔は君が教科書を忘れて落ち込んでいたのが可愛いくて笑ってしまったんだよ」

「可愛い?」

「そう。子供みたいでね」

「子供扱いしてたの?」

「そうだよ」

「私は高校生なのに」


 彼女は頬を膨らまして怒っている。


「あなたの他の笑顔の意味を全部教えてよ」

「他?」

「私があなたが分からなかった数学を教えた時の笑顔は?」

「それは君が一生懸命俺に教えている姿が可愛いかったからだよ」

「それも子供扱いなんでしょう?」

「そうだよ。子供が知ってることをお母さんに教えてる感じかなあ?」

「教えてあげてるのに」

「教えてくれたのはちゃんと感謝してるよ。君に愛着が湧いてるんだと思うよ」

「そうなの?」

「そうだよ」


 俺は彼女の頭を撫でた。


「その笑顔は?」

「えっ」

「その、私を撫でる時の笑顔の意味は何?」

「可愛いくて、愛しくて」

「ねえ、あなたは気付いてる?」

「何を?」

「あなたはさっきから私に愛をくれてるのに気付いてる?」

「愛?」

「可愛い、愛しい、愛着の言葉は漢字にすると全てに愛が入ってるのよ」

「えっ」

「私はあなたの愛が嬉しいよ」

「俺と君の愛は意味が違うよ」

「愛に違いなんてあるの?」

「俺は君の友達なんだろう?」

「あの時はそう思ってたよ」

「今は?」

「それを答える前にあなたに話さないといけないことがあるの」

「何?」

「私と彼はもう恋人じゃないよ」

「えっ」


 いつ別れたんだ?

 いつも一緒に学校に行ってたよな?


「彼と付き合ってすぐに言われたの」

「何て言われたんだ?」

「私はいつもあなたの話ばかりをしてるって」

「えっ」

「幼馴染みなんだから会話の中に出てきて当たり前よって言ったら彼は言ったの。当たり前に会話の中に出てくるほど君はあいつが好きなんだよって」

「えっ」

「そしてもう一つ言われたの。自分で好きだって気付かないほど君はあいつが隣にいて当たり前の日常を過ごしてきてたんだよって」

「そんなことをあいつが?」

「うん。あなたはどう思う?」

「どう思うって?」

「私達は隣にいて当たり前過ぎて気付けなかったのかなあ?」

「俺は君とは違うよ」

「えっ」


 彼女は傷ついたような表情をしている。

 そんな彼女の表情を変える言葉を今から俺は言うんだ。


「俺は君が生まれた時から好きだよ」

「生まれた時って、あなたはまだ十一ヶ月の赤ちゃんよ」


 彼女は笑いながら言っている。


「俺はあいつよりも先に君を好きになったんだよ」

「どうしてあなたは彼と比べるの?」

「あいつも君と幼馴染みで俺と同じ立場なのにあいつは君に選ばれたのが悔しくて」

「私の幼馴染み達は同じことを言うのね」

「えっ」

「彼も言ってたよ。どんなに君を好きでも俺はあいつには勝てないんだよ。それならあいつよりも先に君に好きだって言おうと思ったんだって」

「俺もあいつには勝てないって思ってたよ」

「似た者同士の幼馴染みの二人だね」

「ところで熱は下がった?」

「うん。やっぱりあなたの薬は早く治るみたい」

「病は気持ちの問題って意味が分かったかもしれない」

「何?」

「君は俺が好きだからあいつの薬よりも俺の薬が効くんだと思い込んだんだよ」

「そんなことある訳ないじゃない」

「そうだよな」

「でもあなたが傍にいてくれたから早く治ったのよ」


 彼女はそう言って布団で顔を覆った。


◇◇◇

 

 彼女は毎日のように俺の家へ来る。

 俺の部屋で。

 俺のベッドで。

 ゴロゴロしながらたまに寝る。

 そんな彼女を俺は毎日のように隣で見ている。


 これからもずっと恋人として隣で。

読んで頂きありがとうございます。

ブクマや評価などありがとうございます。

明日の作品の予告です。

明日の作品はクリスマスが終わり年越しの準備をする二人の物語です。

いつかは結婚をしたいと思う彼ですがその覚悟ができずに年を越そうとしています。

気になった方は明日の朝、六時頃に読みに来て下さい。

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― 新着の感想 ―
[一言] ヒロインが糞女にしか見えん
[良い点] 素直になるのが良いですね [気になる点] 手遅れでも頑張った、もう一人の幼馴染はどうなるのか気になります [一言] 誰かを選ぶのって、難しいですね
感想一覧
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