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ボディガード・チルドレン  作者: 兎ワンコ
第四章・アマレット
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28.目指すは別館

 ドアを抜けると大きな廊下が続いている。二人は左右に点在するドアに注意をしながら、奥へと進む。


 廊下を進み、突き当りにぶつかって右に曲がると、兵士の休憩所か詰め所のような部屋が見えた。腰を低くし、腰窓からそっと中を覗き込む。


 中はロッカーが壁際に並び、その前で七、八人の兵士が何かを話している。どうやらまだこちらに気付いていないようだ。


 二人は窓を挟むように背をくっつける。


「準備は出来てるか、秦っ!!」


 手榴弾のピンを抜く慶太。


「もう出来てる!いけ、慶太!」


 同様に手榴弾のピンを抜く秦。互いに合図もなく、同時に窓ガラスを破るように投げる。


「手榴弾っ!」


 敵が叫ぶと同時に室内で破裂音が二連続で響き、小さな悲鳴が上がる。手榴弾を放り込んだ窓枠に残ったガラス片に赤い血が飛び散る。


 すぐに近くのドアに走り、先頭にいた慶太が蹴破って飛び込む。


 中には四人の敵が居た。そのうちの一人は手榴弾が投げ込まれた窓にライフルを向けており、残りの三人はまだ手榴弾の脅威から防御態勢を解除できないまま固まっていた。

 慶太はすぐにライフルを向けている敵をショットガンで射殺する。


 慶太がポンプを引いている間に背後から秦が飛び込み、残りの三人にUMP45をぶちまける。腹部や腕、足を撃ち抜き、致命傷は与えずに再起不能にした。


「クリアっ!」


「同じくクリアッ!」


 室内を見回す。慶太が散弾でミンチにした敵の他に、数名の敵が息絶えている。手榴弾の爆発に巻き込まれたのだろう。一瞥していると慶太がいう。


「感傷に浸る暇はないぞ、秦」


 慶太はショットガンのチューブマガジンにショットシェルを装填している。秦はさらりと首を横に振った。


「生憎、今日の俺は忙しいんでな!」


 互いに周囲を警戒しながら休憩所のドアを抜け、廊下に出る。タイル貼りで、木目の壁には絵画やら剣やらが飾られている。相変わらず鳴り続ける警報が耳に響く。


「二人はもっと奥だ。警戒しろ」


 おうよ、と秦が返事しながら周囲を見回しながら進む。


 奥に進んでいくと中庭に突き当たった。別館へ続く渡り廊下を兼ねたものだろう。


 広く、インドネシア系建築の丸みを帯びた柱が何本も経っており、真ん中にはもう何年も使ってない噴水がある。奥から敵が数人も走り込んで来ており、すぐにこちらの存在に気付いて物陰や柱の後ろに隠れていく。二人も応戦しながら近くの柱に隠れる。


「侵入されているぞっ!」


「たかが二人だぞ、何故ここまで許したっ!?」


 慶太がショットガンを撃ち込みながら、隠れた敵の数を確認する。


「敵は確認出来るだけで六人だっ!」


「無駄な殺しはしたくねぇ!だけど、今は加減が効かねえぞっ!」


 秦が不用心に飛び込んできた敵たちに向けてUMP45をぶっ放す。

 撃ち込まれた兵士たちはすぐに後退し、身を隠す。


 その時、慶太が対角上のバルコニーにバイポット(三脚)付きのLMG(ライトマシンガン)を構えた敵を発見した。


「秦、バルコニーにマシンガンっ!」


 気を付けろ、と叫ぶ前にLMGが火を噴く。けたたましい音と共に慶太の隠れていた柱が弾丸で削られていく。


「ぐぅっ!?」


 身を狭ませたお陰で弾丸の直撃は免れたが、弾けた柱の破片が左肩の肉を削った。

 秦もすぐに柱の陰に隠れ、慶太の心配をする。


「慶太っ!」


「大丈夫だ、かすり傷だっ!」


 強がる慶太だが、左肩の出血は決して良い状態ではない。


「お前のショットガンじゃ分が悪いっ!俺が援護するっ!」


 秦が柱から飛び出し、LMGに向けて応戦する。だがサブマシンガンではなかなか命中せず、射撃手の周囲に弾をばらまくだけであった。すぐにLMGの反撃が秦を襲う。慌てて別の柱に飛び込む。


 一方で自分から注意が逸れた慶太は移動を開始し、物陰に隠れていた兵士たちの死角に飛び込み、ショットガンで葬っていく。LMGを正面にし、二人は左右に別れた。


 LMGの射手は秦を狙い撃つ事に集中した。ショットガンを持つ者よりも、サブマシンガンの方が脅威と認識したのだ。その誤った認識を慶太は見逃さない。


(ショットガンは分が悪いだって?)


 慶太はポンプを引き、チェンバー内を解放させると別の弾を押し込んでポンプを戻す。あの武器屋の店主に勧められた自家製16mmグレネードだ。


「秦、堪えてろっ!」


 隠れている柱が弾丸で削られていく秦に叫び、射手に狙いを付けて引金を引く。

 ボン、と鈍い音と共に榴弾はLMGを固定している石の手すりに直撃し、手すりもろとも射手を吹き飛ばした。

 

「慶太、側面っ!」


 秦の叫びにすぐに左側に目をやる。ライフルを構えた兵士が今にも引金を引こうとしている。


 しまった、射手に集中しすぎていた。

 だが、敵はライフルを撃つ前に秦の弾丸で撃ち抜かれ、地面に横たわった。


「く、すまないっ!」


「お互い様だっ!」


 慶太は手に持っていたショットガンを肩に掛け、倒した兵士が握っていたM16アサルトライフルを拾い上げ、マガジンを抜いて残弾を確認する。コンバットベストを探り、予備のマガジンを取り出していると今度は背後から敵の気配が感じた。


「もたもたしていられねーな、急ぐぞっ!」


「了解だ、秦っ!」

 

 二人は周囲を警戒しながら中庭を通り過ぎ、別館の入り口の前に辿り着いた。


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