46/146
0.新たな季節の始まりに
3月も残るとこ五本の指にも満たぬ日数で終わろうといる頃。
一つの節目が終わろうとしている。
繰り返す季節の中で、新たに生まれた誇らしい心を胸にする者もいれば、不安に踊らされている者もいる。
春というのはどこかせわしいないもの。
桜が満開に咲き、そのピンクの花びらが舞うように、浮足立つ心。
誰かが待っているような気持ちを抱え、新たに始まる季節や生活にみな急ぐ。
そしてそれは、この日本の隅っこともいえる桜陽島の住民にも同じことが言えるだろう。
今日も全ての人間に春は訪れる。
青海学園に入学したばかりの少年少女たちは新たな生活に、希望と不安を混ぜながら学びやへと向かうだろう。
卒業し、新たな社会へと踏み出した新社会人もまた、これから始まる将来に対し、漠然とした理想と知識で立ち向かうだろう。
そういう気持ちは、誰にだって平等に訪れるのだ。
そして誰かが準備し、想定した災厄もまた、皆に平等に訪れるのだ。