表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボディガード・チルドレン  作者: 兎ワンコ
第一章・ボディガード・チルドレン
19/146

18.意外な反撃

 コンテナに押し込められた瑠璃はただじっと、両膝を抱えて(うずくま)っていた。外からは激しい銃声が響き、時折銃弾がコンテナに当たる甲高い音に頭を縮こませた。


 どうして?

 そんな言葉ばかりが頭の中で駆け回る。少し前までの何もない日常が愛おしく思う。


 今まで嫌な事といえば学校のテストだったり、友人や家族との些細なすれ違いだった。今ではそれすらも愛おしく思う。


 扉を閉める瞬間の秦の顔を思い出す。大勢の悪人に囲まれながらも、彼はどこか笑っていた。無理して作った笑いだろう。彼の笑顔も、これから見れなくなるのだろうか?


 彼は私の為に死ぬのだろうか? そんなのは嫌だ。けれど、今の自分にこの銃弾の雨の中で、どうこうする術は持ち合わせていない。


 色んな思考が頭の中でメリーゴーランドのように駆け回る。だが、身体は強張って動く事が出来ない。思わず震える手のひらを見つめる。


「何もしないまま、じっとするのって……こんなに怖いんだ……」


 ぼそりと呟く。自分に向けた皮肉。今はただ二人の無事と、この銃声が止む事だけを祈った。


 ― ― ― ―


 ブラストと呼ばれた男は、かつては傭兵であった。


 南アフリカや中東で政府や大手民間組織からの依頼で戦闘を経験し、ある程度の戦闘の流れは熟知しているつもりだ。


 今回の襲撃作戦も熟知しているつもりであった。ターゲットの情報。それを護衛する子供のボディガードたち。もちろん子供とは言え、訓練を積んだのであれば、兵士やゲリラと一緒だ。見くびる事もなく、人員は配慮した。


 だが実際はどうだ? 集めた人員がチンピラやゴロツキはどうしようもないが、軍隊崩れの人間までもが翻弄されてしまっている。


 これがボディガード・チルドレンという組織が作った兵隊なのだろうか?


 

 数分前の事だ。


「ガキどもがまた別の武器を取り出したぞっ!」


 一番先頭で応戦していたファランが叫ぶ。その少し後ろで隠れていたカーリーが発砲しようと身を乗り出したその時だった。


「ぐぅっ」


 ジンと呼ばれていた青年が物陰から発砲し、カーリーの腹部が撃ち抜かれ、その場で蹲る。


「カーリーっ!」


 すぐ近くで応戦していたドゥオンが倒れたカーリーを引き摺りこもうと僅かに物陰から身を乗り出した時、また発砲があった。ドゥオンは伸ばした右腕と右肩を撃ち抜かれ、悲痛な声を上げて地面に転がる。


(さっきまでと動きが違うっ!)


 ブラストが冷静に思考する。その間にもリボルバーを手にしたジンは次々と仲間を撃ち抜いていく。そこでジンが致命傷を与えない事に気付いた。


(そういうことかっ!)


 すると今度は目つきの悪い背の低いケータというガキも新たな銃を取り出して応戦した。こちらはジンというガキより更に幼い。


 積まれた乗客の鞄の後ろに隠れていたコールの頭が、鞄もろとも吹き飛ぶのが見えた。次にその隣で応戦していたカッファも頭を撃ち抜かれた。撃ち抜いたのは目つきの悪い、それもジュニアハイスクールに通っているような子供だ。


(いや、警戒すべきはあのガキだっ!)


 頭の悪そうと評価していたジンという青年は相手を戦闘不能にする射撃をする。その一方で、ケータと呼ばれる目つきの悪い少年は的確に急所を狙ってくる。


 訓練されているとは聞いていたが、ここまで冷静に人の命を奪う事に長けているのには恐怖を感じる。


(人間の心がないのかっ!?)


 更にケータは、先頭で応戦するファランを射殺する。その動作はあまりにも早く、狙いを定めるのと引金を引くのがほぼ同時であった。


「ファランがやられたぞっ!」


「クソが! ジョシュも腹をやられてるっ!」


 戦線は次第に崩れ始め、用意していた11人の兵隊はすでに5名にまで減らされていた。


「お前ら、落ち着けっ!」


 ブラストが一喝する。全員が応戦をピタリと止める。


「あのおちゃらけたガキのはリボルバーだ。装弾数はそう多くはない。リロードにはラグが出る。そこを狙って撃ち込めっ!」


「で、ですが、あのちっこいガキが……」


「あいつは俺がヤる。お前らはリボルバーのをやれっ!」


 うろたえる仲間に喝を入れる。ここまでやられたら面目丸つぶれだ。これ以上無様な戦いは出来ないと判断したブラストは指揮を執る。


「散開しろっ! 奴らを引き剥がせっ!」


 指揮するブラストを含め、6人の男が二組に散開する。


 一方で秦と慶太も彼らの動きに気付き、敢えて離れるように移動した。

 それは互いに訓練で積んだ動きと、互いの実力を認めているからの行動である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ