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ボディガード・チルドレン  作者: 兎ワンコ
第一章・ボディガード・チルドレン
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12.襲撃

「やっぱりついて来たぞ!」


 背後を一瞥した秦ががなる。その言葉に瑠璃も釣られて肩越しに背後に目をやる。慌てて追いかけて来た三人の男たちの手には隠し持っていたであろうハンドガンが握られている。


「クソ、ロサンゼルス空港でドンパチやるつもりかよっ!?」


 秦が悪態を吐く。


「馬鹿、実戦だぞ。やるしかない」


 冷ややかに叫ぶと同時にジャケットの胸の中からハンドガンを引き抜く慶太。支給された.380ボディガードだ。


「俺の方が年上だぞ、命令すんな、慶太っ!」


 同じく.380ボディガードを引き抜き、振り返り様に構える。


 追いかけて来た男たちも秦たちが銃を抜いたことに気付き、足を止めてハンドガンを構える。慶太は即座に瑠璃を近くの柱に押し込むように共に身を隠し、秦もその場で伏せたその瞬間だ。


 パン! パン!


「きゃあっ!?」


 男たちが発砲し、乾いた破裂音が響く。敵の初弾をギリギリで回避した秦が即座に撃ち返す。敵も近くの柱に飛び込む。


「クソっ!」


 秦が立ち上がり、慶太と瑠璃とは反対側の柱に移動するため、慶太が最小限に身を出して援護する。男たちの背後からは一般人の悲鳴とどよめく声が聞こえる。


 秦が移動しながら連続で発砲し、近くの柱に飛び込む。その間に慶太が瑠璃を連れて通路の奥へと進む。秦が弾丸を撃ち尽くすと、すかさず「援護っ!」と叫ぶ。


 慶太は走るのを止め、また柱に瑠璃を押し込みながら銃を構える。銃声が止むと、出てこようとする男達に向けて発砲する。


 その間に秦は走り、二人に追い付くと素早くマグチェンジを行う。新しい弾倉を半身をひねるように落とし、新しい弾倉を差し込むと後退していたスライドを、親指を軽く捻ってスライドストップを解除する。僅か一秒もない動作だ。


「なんなのっ!?」


 耳を塞ぎながら瑠璃が叫ぶ。


「君のファンの出国サービスだろ? 手厚い見送りだなっ!」


 秦が冗談を飛ばしながら応戦する。それと同時に秦と慶太は掛けていたサングラスを首を振って顔面から飛ばし、迫る敵に狙いを定める。


「馬鹿な事言ってないで出口を探せっ! こんな狭い通路じゃあ分が悪いっ!」


 弾切れを起こした慶太がマグチェンジをしながら怒鳴る。


 応戦するのを止め、周囲を見回す秦。通路を挟んだ反対側に『関係者のみ』という掲示がされた扉を見つけ、素早くドアのシリンダーに数発撃ち込んでドアを蹴破る。


「慶太、こっちだっ!」


 応戦していた慶太は、瑠璃を背中で隠すように守りながら、通路反対側の秦の方に飛び込んだ。


「秦、訓練を忘れるなよ!」


「任せろって!」


 秦は.380ボディガードを構えながら通路を進んでいく。その背中を瑠璃が追い、瑠璃の後方を慶太が足止めした後、急いで進む。


 少しして、先程の通路からはハンドガンの発射音に混じってライフルの音が聞こえた。


「増援か!?」


 秦がのたまう。


「米兵だ。騒ぎにすぐに駆け付けたんだろ」と慶太がさらりと返す。


「彼らと合流するか?」


「いや、マニュアル通りにこの場を撤収する。飛行機の事は忘れろっ! 秦、志摩さんに連絡を」


「分かった! ……って命令すんな!」


 瑠璃を間に挟み、三人は従業員用の狭い通路をがむしゃらに走り抜ける。



 ― ― ― ― ― ― ―



 一方で空港のロビーを見下ろす連絡橋の上で見張りをしていた作業服の男、ブラストが携帯電話で連絡を入れる。


「≪ガウス≫聞こえるか? 水際作戦は失敗した。やはり噂通りの『ボディガード・チルドレン』だ。中々やるぞ」


 階下で銃声に戦き、慌てて逃げだす人々の波を逆らうようにガードマンや米兵が通路に向かって駆けていく。ブラストの位置から通路の様子は見えないが、その銃声の様子からして、一筋縄でいってないことがわかる。

 電話口で≪ガウス≫と呼ばれる男からボイスチェンジャーで声質を変えたザラザラした声が返ってくる。


『現在の状況を教えろ』


 相変わらず奥の通路から何発もの銃声が響いている。駆け付けた米兵たちが銃を構えながら慎重に通路に入っていくのが見える。


「派手にドンパチやっている。所詮はチンピラやギャング上がりだ。後の事も考えないで追い込んでいる」


『ブラスト、お前は撤収しろ。予定通りだ』


「了解した、切るぞ」


 ブラストは通話終了ボタンを押し、ケータイ電話をズボンの尻ポケットに滑り込ませると、足早に連絡橋から立ち去る。連絡橋の階段をそそくさと降り、何食わぬ顔で逃げ惑う人々を追うように足を速めた。




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