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ボディガード・チルドレン  作者: 兎ワンコ
第五章・グッドバイ・ベビーフェイス
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0.思い馳せるは青い空の向こう

 


 新しく買った机。新しく買ったベッド。

 自分だけの部屋を手に入れた。

 それは十代の頃からの夢だった。


 タイでの傷はだいぶ和らいだが、今は別の傷が胸の中で疼く。

 窓の外から見える桜陽島の青空。


 思考を巡らせ、過去に見てきた空を思い出す。

 どこの空も変わらない。変わるのは、大地と人間。

 自分も、その中の一部分なのだ。


 思えば、自分が生を受けて今年で三十歳になる。いや、今は三十歳になる予定だったといえばいいのだろう。

 あれから何が変わったのだろうか?

 見た目が変わっただけで、おそらくはあの時の子供のままなのかもしれない。

 あの日、ブルブルと震え、未来や自由、無力さに途方に暮れていたちっぽけな自分のままなのかも。


 過去の自分は置き去りに出来ない。

 だが、この手に持つコルト・ガバメント以外には『横山慶太』になる前のものは残ってない。

 アルバムは愚か、写真は一枚だって残ってない。

 ただ、唯一自分の過去を映している写真は見つけた。


 それはトリチェスタン戦争に従軍した記者が撮った一枚の写真。インターネットで検索した写真の中の一枚だ。

 その写真はトリチェスタン・首都バグラムで撮影されたもので、写真には墜落した米軍ヘリを囲う米兵たちが映されている。

 墜落したヘリの少し離れた所に、自分は映っていた。

 遠かったが、あれは間違いない。

 あの日、第75レンジャー大隊所属のマシュー・ジェイソン伍長としての自分。


 砂。硝煙。焦げたタイヤの匂い。死臭。汗。火薬。血の味。

 冷たい金属の感触。


 しばらく窓の向こうの空に思い馳せた慶太は、立ち上がって階下へと向かった。


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