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ボディガード・チルドレン  作者: 兎ワンコ
第四章・アマレット
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30.慶太VSバッケン

 ゴミ捨て場と化した裏庭を走っていると少し先で車のエンジン音が聞こえた。

 即座にそちらに向かうと走り去る二台のジープが見えた。先頭のジープの後部座席に瑠璃と美咲が見える、続く二台目のジープの助手席にはバッケンがこちらを睨んでいた。


「あそこだっ!」


 秦が叫ぶ。二人は走り去っていくジープに駆け出していく。

 周囲に何かないか、見回すと一台のバイクに目が留まった。偵察用のオフロードバイクだろう。運よく鍵は刺さったままだ。


「慶太、乗れっ!」


 秦が飛び乗ると同時にセルスタートを押してエンジンを始動させる。エンジンが回り始めた瞬間に慶太も飛び乗り、秦はギアを入れて一気にアクセルを回す。


 砂利を吹き飛ばし、バイクは一気に駆け抜ける。バランスが悪い中でも、秦はバランスをうまく取り、加速していく。

 やがてジープのテールランプが見え始める。

 

「見つけたっ!」


 どうやら向こうもこちらに気付いたらしく、後ろを走るジープの後部座席に乗った兵士がこちらにサブマシンガンを向ける。

 慶太は背中のショットガンを引き抜き、後部座席にいる兵士に狙いを定める。


 数発ほど撃ち込んだが、弾はジープの後部ライトを粉砕したが、兵士に当たらなかった。

 兵士がサブマシンガンを乱射する。秦が即座にハンドルを左右に切り、弾丸を回避する。


 慶太は何度か撃ち込むが、中々当たらない。慶太はショットガンを捨て、ガバメントを抜く。


「秦、近づけるかっ!?」


「あぁっ!」


 慶太の問いに秦はアクセルを捻る。バイクを加速させ、ジープに近づいて行く。

 兵士の弾丸が頬を霞めるが、慶太は動じずに兵士に狙いを定めて引金を引く。


 発射された弾丸は見事に敵の兵士を射貫く。


 撃たれた兵士は崩れ落ちると、今度は助手席に座っていたバッケンが倒れた兵士からサブマシンガンを取り、二人に向けて発砲する。けたたましい弾丸のせいで、秦はブレーキを掛けた。

 

(このままじゃあ埒が明かないっ!)


 意を決した慶太はガバメントを一度ホルスターにしまい、秦に叫ぶ。


「もう一度頼むっ!」


 秦がもう一度アクセルを捻り、またジープに近づける。

 バッケンはちょうどサブマシンガンのリロードを行っている。チャンスだ。

 慶太は秦の肩を叩き、耳元で叫ぶ。


「秦っ! 瑠璃姉さんを頼んだぞっ!」


 思わぬ言葉に秦は耳を疑った。“姉さん”?


 慶太は座席に足を掛け、ジープの後部座席に飛び乗った。


 後部座席に飛び乗った慶太は、即座に助手席のバッケンが持つサブマシンガンを足で払い退け、バッケンに銃口を向ける。不意打ちを受けたバッケンだが、即座に左手で銃口を払いのける。ガバメントが後部座席の下に落ちる。


「慶太っ!」


 秦は叫んだ。だが、慶太からは返事はない。少し逡巡したが、慶太の言われた通りにアクセルを捻る。


 今度はバッケンがハンドガンを引き抜き、慶太に向けようとする。即座にバッケンのハンドガンを持つ手にしがみつき、銃口を必死に逸らそうと抵抗した。

 バッケンと争っていると、運転席の男がハンドルを片手に腰にあるホルスターに手を伸ばすのが視界の隅で見えた。


 銃口を力任せに捻じ曲げ、運転席の男に向けさせるとバッケンの人差し指を押し込む。弾丸が発射され、運転手の男を射殺する。


 撃たれた運転手はハンドルを握ったまま傾いたせいで、ジープは大きく左に傾いた。


 シープはそのまま道路を外れ、道端の木にぶつかった。その衝撃で体勢の悪かった慶太の身体は後部座席から飛び、少しぬかるんだ地面に転がった。


 バッケンはなんとか車内に残っていたが、ぶつかった衝撃で拳銃をボンネットの向こうに落としてしまっていた。


 車外に放り出された慶太を見ると、すでに立ち直ってこちらに向かってゆっくりと歩き出してくる。


 改めて見ると、ただのガキではない。部下を散々殺してきたその目に宿るのはただの復讐心だけはなさそうだ。


(このガキ……っ!)


 その覚悟と行動には冷や汗が出そうだが、それももう終わりだ。


 バッケンは座席から立ち上がり、後部座席を通って地面に降り立つ。目にも止まらぬ速さで腰に差していたサバイバルナイフを抜くと同時に、空中で回転させて刃の先端を持って慶太に向けて投げ込む。その動作は僅か一秒にも満たない速さだった。


 サバイバルナイフが慶太の顔面に向かって回転しながら飛ぶ。


 だが慶太は避けもせず、左腕を上げてガードした。そして左腕に突き刺さったその瞬間に、自身も右腕を素早く前に突き出すように伸ばす。


 次の瞬間、バッケンの喉元に銀色のダガーナイフが生えていた。それは、美咲の尋問の際に使っていた、ダガーナイフ。すぐに刃の隙間から赤い血がボタボタと流れ始める。


 バッケンは恐る恐る首元に刺さったナイフを指でなぞる。よろめき、ナイフに触れていると更に鮮血が溢れ出てくる。


 しばらくは立っていたが、やがてゆっくりと膝を地面に付き、信じられないといわんばかりの顔で慶太を見遣る。


「は……やい…」


 思わず漏れた言葉がそれだった。バッケンは歯を食いしばり、なんとか立ち上がろうと踏ん張る。

 慶太は、左腕に刺さったサバイバルナイフを抜き捨て、溢れ出た血を右手で抑えながらバッケンを見下ろす。


「ナ、ナイフ投げは……俺の……十八番な…んだけどな……」


 口から血を溢れさせながらバッケンが皮肉な台詞を吐く。

 慶太は何も言わずにバッケンの横を通り過ぎ、ジープの座席下に落ちたガバメントを拾い上げ、ジープから降りた。


 必死に踏ん張ったバッケンだが、やがてこと切れて地面に前のめりに突っ伏した。

 慶太は秦とレイブンが去って行った道に目を向ける。


 急いで向かわなければ。慶太はバックパックの中にあった、包帯を取り出し、歩きながら左腕の止血を行う。

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