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「山茶花梅雨」「ストライキ」「痣」「頭巾」
山茶花梅雨
降り続ける山茶花梅雨の滴
めくるめく無我の宜しさ
身体を球に変えて窓辺
炙りだしの冷えた肌
切片が切片を産み
前衛的感情とて
オイルと化す
わたくしの
球形を唯
雨粒へ
晒す
了
。
ストライキ
ハンガァストライキ
おなかとせなかの
膜ひっくり返す
骨皮筋右衛門
描線として
紙として
神化し
消ゆ
了
。
痣
聖少女の脣から松籟
わたくしは間切り
柔肌の青痣とて
身を融かして
その儘ただ
此処には
還らず
無傷
了
。
頭巾
赤頭巾あおずきん黒頭巾
ひりたてた肉体に被せ
鏡面とした師走へと
防寒する臓器に唯
明鏡の機を逃す
わたくしは又
一年延ばし
有り難く
時の霜
受く
了
。