4/246
「美貌」「瘡蓋」
美貌
果の月に冷えゆくのは美貌の瘡蓋
引き剥がさざるをえない目蓋も
また瘡蓋とわらう美貌はまだ
ひりひり眩む冷凍血の鼓動
金盥いっぱい渦潮を幻視
血抜きの場に誦経ただ
すべて不凍の指赤く
うしなう透明散華
落魚はなやかに
まなうらに毒
霊薬の不在
剥がれる
現実の
繭殻
了
。
瘡蓋
まほうじん欲する白昼
まぶたに刻む方解石
ましらの皮下の月
まやかしも具さ
まくりあげる
動脈と静脈
魔女の箒
血は白
淡い
灰
仄か
赤い水
瘡蓋の奥
逆回しした
自由落下の先
花の瘡蓋が咲く
砂どけいのまぶた
月に透かす手のひら
血管は不凍のまんだら
了。