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「氷解」「眇」
氷解
氷解しゆく写真の結晶
すりへった貌また眸
ひきだしのそこに
仮想帝制水琴窟
分子と化す指
まつろわぬ
無頭の人
頭の光
失い
猶
得た
光の頭
頭部だけ
きりとった
スライドの蝶
青く沈む夢寐に
独り戦後千年祝う
氷漬けの無風地帯に
無血革命の記念写真を
了。
眇
ひらかれた地表に靴を乗せて九つ
数えたら口笛テンカウントの蝕
十秒前の声は十秒後わたくし
の耳にも無いその純粋感覚
錆びたイチョウを灼く冬
うるむ毛穴に冷凍血液
虹と稲妻それから梢
行為者として誰何
する閃光の集解
葉脈のさなか
襤褸の時間
頁とざし
すがめ
闢く
了
。