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第8話 カルルに真実を教えてもらった

「カルル?」

「久しぶりだな。確かセレネだったか」

「そうとも言う」


 焚火を囲いながら、久しぶりのカルルと出会えたことを私は喜ぶ。

 カルルは見た目だけはあまり変わったいなかった。

 そんなカルルはまるで説教する母親のように怖い表情を作って。


「それで、こんな夜中に子供一人で一体何をしていたんだ?」

「山神様を探して」

「山神様? ああ、あのモンスターのことか」

「知っているの?」

「知っているも何も。初めてセレネと会った時、襲ってきたモンスターのことだろう?」


 カルルは何をいまさらと言わんばかりに。

 知っているなら、好都合だ。

 そう思った私はカルルに聞いてみる。


「カルルは、あの村で何を調査しているの? 何を知っているの? あれは本当に山神様なの?」


 私の質問ラッシュにカルルは悩みながら。


「そうだな。前回よりかはある程度村についての見解はついたが。残念ながらセレネには教えれない」

「どうして?」

「村の子供だからだ」


 村の子供だから。真実は教えれない。

 どうしてなのだろう。どうして教えれないのだろう。


「じゃあ、私。村の子供止める」


 私の言葉にカルルは驚いた表情をする。


「止めてどうするんだ?」

「何も決めてない。ただ私はあの村を出ていくつもりだったから」


 それはお母さんに対して、ものすごく申し訳ないのだけれども。親不孝者なんて呼ばれるかもしれない。

 でもそれでも私には出て行かないといけない。

 世界を救うぐらいのことをしないといけないのだから。

 そんな私の身勝手な行動にカルルが聞く。


「そんなこと許されるのか?」

「許される、許されないじゃない。私には使命があるから」

「使命?」


 カルルは不思議そうにしながらも、そうかと呟いて。

 きっとこれはカルルにとっても好都合だったのだろう。


「じゃあ、セレネ。魔導士団に入らないか?」


 そんな誘いをしてきた。


「魔導士団?」

「ああ、セレネほどの才能溢れる子は魔導士団に欲しい人材だ。いやなら良いが、村のことは教えない」

「脅迫?」

「かもな。それで、どうする。魔導士団に入るか。否か」


 そんな二者択一になるとは思っておらず、私は悩む。

 悩む。悩み続けて、よしと決める。


「良いよ。でも、私子供だけども入れるの? 二十歳からじゃなかった?」

「基本はそうだ。だが、二十歳未満で魔法の使用ができる人間が存在した場合、言い方は悪いが収容と監視するのも目的として魔法学園は建てられている」

「収容って」


 刑務所か何かなのだろうか。


「むしろ国はセレネを魔法学園に入学させようとするさ」


 カルルの言葉に私は大きく頷く。


「分かった。じゃあ、教えて。知っていること。何でも良いから」

「良いだろう」


 これは知るべきことではなかったのかもしれない。

 村の大人たちがどうして子供にそれを教えようとしなかったのか。

 その理由なのだから。


「始めにだが、あの村が山神様と奉っているモンスターは、ただのモンスターであった神でも何でもない。そもそも神はこの世界に一人しかいない。その神が何でこんなところにいる」

「それは私も思っていたけども。天使について詳しく知る村の村長さえも山神様と奉るから。少し考えれば神じゃないことは分かると思う」

「確かにそうだ。知っているはずさ。あの村の大人たちは皆。あれが神様でもなんでもないことを」

「…………?」

「あれは、この辺り一体の主だ。その主に襲われないように、村はあれを神をして奉り、お供え物をして、救われようとしているに過ぎない」

「でも、そうだ。私は山神様に選ばれたとかどうとかで、次の山神様になれみたいなことを言われたのだけども、それはどういうことなの?」

「それはあのモンスターの生態になるのだが」


 カルルは話すべきか悩み、そして決断してくれる。


「あのモンスターは、元は寄生虫だからだ」


 寄生虫?

 寄生する虫のこと?

 あれが?


「あのモンスターは人間に寄生する。寄生後、体を自身にあった形に変える。ただそれだけのモンスターだ。長い年月で虫とは呼べない大きさになっているが、立派な虫だ」

「…………ええ」


 何それ。

 山神様は寄生虫だった。

 つまり山神様に選ばれるということは、山神様にひいては寄生虫に寄生されるということ?

 中々ショッキングな絵面じゃない。


「もちろん、人以上のモンスターであるのも確か。そこらの人間が束になっても勝てないだろうし、長生きするものだからある程度の知能も持つ。最も知能に関しては人間や天使、悪魔、オーガやエルフなどとは並ばないがな」


 カルルが続ける。

 モンスターは二つの意味があった。

 知能はあるけども、あくまで醜い生物という意味でのモンスターということなのだろう。


「なるほど、分かった。ありがとう」

「どういたしまして」

「それで、カルルが調べている違和感はこれのことなの?」


 私は聞いた。


「いや、違う。これはすでに調べがついていること。俺が調査していたのはもっと別のことだ」

「別?」

「これは憶測にすぎないが、あの村の子供が数年に一度いなくなっている」

「それは山神様に選ばれたからではなく?」

「あのモンスターに選ばれた子供が出て来るのは、数十年に一度だ。だから違う。では何故数年に一度子供がいなくなるかだが」

「それは?」

「子供をあのモンスター、いや山神様か。山神様にお供えしているからだと俺は考えている」

「…………え?」


 何だろう。

 カルルの言葉でものすごく嫌なことを思いついてしまった。

 仮にも真実なら、お母さんや村長たち、他の大人たちを信用したいけども、信用できないし擁護できない内容だ。

 そして、そんな村がよそ者を受け入れるのだろうか。

 大人は無理だ。例え教えなくても、大人ならばある程度考えてその違和感に気づくはずだ。そしてこれは村の大人たちにとって広まってほしくない事実のはず。

 村を延命させるために、子を生贄にしているのは、まともな国の法ではアウトだ。村長には死刑が言い渡されるだろう。

 では子供は?

 子供の内は真実を伝えない。そしてその違和感に気づかないだろうから、受け入れるかもしれない。

 でもその生贄が村の子供でなくても良いのであれば。


「もしかしたら、私は山神様へのお供え物として受け入れられたのかも」

「どうしてそう思った?」

「私はもともと村の子供じゃないから」


 その伝えていなかった事実にカルルが驚く、と思ったら何一つ驚いていなかった。


「それは知っていたさ」

「知っていたの?」

「ああ」

「そっか。調べていたら、急に子供が一人増えたとか知るものね」

「いや、違う。俺はこの村の調査を始める前からセレネのことを知っていた」

「え? どうして? どういうこと?」


 私ってそんなに有名人だったの?

 いや、そんなはずはない。

 ならどうしてカルルは知っているの?


「ねえ、カルル」

「どうした?」

「私の頭がショートしそうなのだけれども」


 頭の回転が追い付かない。

 今日だけでいろんなことを考えたし、知ってしまった。もう私の頭は働くことを止めようとしている。


「まあ、これについては今度教えよう。というよりも今、聞かないでほしい」

「分かった」

「じゃあ、そろそろ別れることにしよう。魔法学校についてはこちらにも準備が必要だから。それまでセレネは村で生活してほしい。しばらくすれば、向かいに使者が来る。分かったか? 最後に、夜だから家に帰って早く寝ろ。子供は寝る時間だ」

「はーい」


 そう言って、別れそうになって、ふと戦争のことを思い出す。


「そう言えば、カルルは戦争に行かなかったの?」

「ん? ああ、戦争か。あれはもう終わった」

「戦争はもう終わったの? 早くない? というか、ならどうして村の大人たちは帰ってこないの?」

「帰ってこないさ。死んだ人間は帰ってこないだろう? つまり」

「人間側が戦争に負けたということ?」

「そうだ」


 カルルはそうはっきりと言った。

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